パスポートが「有効」なだけじゃ出国できないことも。知られざる「残存有効期間」の落とし穴

まだパスポートが有効だから海外旅行の準備はOK!って思ってませんか?気をつけたいのは、その「残存有効期間」なんです。
まだパスポートが有効だから海外旅行の準備はOK!って思ってませんか?
Satoshi-K via Getty Images
まだパスポートが有効だから海外旅行の準備はOK!って思ってませんか?

数年前の7月、イタリアで行われる友人の結婚式に招待された。

私のパスポートの有効期限は5月までだったので、その前に更新したばかりだった。

出発の日が近づき、同じくアメリカから一緒に結婚式に参列する予定の他の友人にその話をすると、彼女はこう言った。

「私のパスポートは9月まで有効期限が残ってるから行く準備はバッチリ!」

友人は勘違いをしていた。

イタリアはシェンゲン協定加盟国であるため、旅行者はシェンゲン領域からの出発予定日から3カ月以上の残存有効期間のあるパスポートを所持していなければならないのだ。

幸い、友人はパスポートを早急に更新することができ、結婚式に間に合った。しかし、この友人の事例は、海外旅行に関してありがちな誤解を浮き彫りにした。

パスポートが今「有効」なだけでは不十分なこともある

「多くの人は、国境を超えた海外旅行をするためには有効なパスポートがあれば良いと考えていますが、それだけでは不十分なケースがあるということに気づいていません」

そう話すのは、フライト通知サービス「Going」の広報担当者、ケイティ・ナストロ氏だ。

実際、多くの国では、パスポートの残存有効期間が旅行予定日を過ぎても残っていることが求められる。最も一般的な長さは、帰国日から3カ月後と6カ月後だ。

「特にアジアや中東などの国では、旅行予定日後に6カ月の残存期間が必要な場合が多いです。つまり、もしあなたが7月にベトナムに旅行する場合は、少なくとも翌年の1月までパスポートの有効期限が必要ということです」とナストロ氏は説明する。

「空港に到着しても、航空会社によってはこの残存期間がないとフライトに搭乗すらさせてくれません」

国によって必要なパスポートの残存期間は異なるため、海外旅行に行く際は、予約する前にこれらのルールを理解しておく必要がある。

パスポートとビザのコンシェルジュサービスを経営するデヴィッド・アルワディッシュ氏は、「パスポートの残存期間が3カ月必要な国もあれば、6カ月、あるいはそれ以上必要な国もあります。ビザが必要な国もあり、複数年のビザが発行される場合は、1年以上必要な場合もあります」と説明する。

詳しい条件は、その国の移民政策や2国間協定、安全保障上のリスクの考慮など、さまざまな要因によって異なる。

「そのため、旅行者は渡航予定の国の入国条件を十分に確認することが非常に重要です」とアルワディッシュ氏は強調する。

アルワディッシュ氏もナストロ氏も、パスポートの残存期間に関するルールが十分に周知されていないと感じているという。

アルワディッシュ氏は、「普段あまり旅行しない人や、有効期限に直面することがなかった人など、3カ月〜6カ月の残存期間が必要な場合があることを知らない人はよくいます」と話す。

「すべての国で一貫して施行されているわけではないため、旅行者が誤解することが多いのです。入国管理における政策は複雑な上、度々変更されるので、常に最新の情報を知っておくことは難しいのです。そして、パスポートの残存期限についてはあまり周知されていないため、旅行者の認知度が低いのです」

残存期間が必要な理由

「パスポートの残存期間が必要な理由は、旅行者が滞在期間中に有効なパスポートを所持していること、また予期せぬ遅延や延長が発生した場合の予備期間中も有効であることを保証するためです」とアルワディッシュ氏。

例えば、フランスで2週間の滞在を予定していたのに、到着数日後、やっぱり2カ月滞在したいと思うかもしれない。あるいは、自分ではどうしようもない出来事が起こるかもしれない。

「残存期間は主に、万が一の時に備えるためです」とナストロ氏は話す。

「重い病気にかかったり事故に遭ったりして、その国に予定より長く滞在することになったとしましょう。こうした予定外の期間にパスポートの有効期限が切れてしまうと、出国する際にたくさんの問題を引き起こす可能性があります」

外国人旅行客のパスポート残存期間は、こうした万が一の場合の際に余裕を持たせるためのもの。予定が変更する可能性に備えておくためなのだ。

「各国は、効率的な出入国手続きを促進し、安全対策を強化し、緊急事態管理を向上させるために、外国人旅行客のパスポート残存期間を設定しているのです」とアルワディッシュ氏は説明。

「また、これらの条件により、ビザ政策における公平性と互恵性を促進し、国家間のバランスの取れた関係を育むことができます」

具体的な残存期間は国によって異なり、すべての渡航先でこのような条件があるわけではない。例えば、メキシコ政府は、旅行者のパスポートが旅行期間中有効であることだけを求めており、それ以上の残存期間は必要としていない。

渡航前に十分チェックしよう

「パスポートの有効期限は10年(日本の成人は5年と10年から選択できる)あるので、多くの人にとっては問題ないでしょう。しかし有効期限が切れる年になったと気づいた時には、必要な残存期間ギリギリになっている、ということもあります。早めに更新手続きをした方が良いでしょう」とナストロ氏は話し、余裕を持ってに更新することを勧めた。(日本のパスポートは有効期限まで1年未満になってから更新可能)

パスポートやその他の重要な旅行書類に関しては、事前の計画が重要だ。

「すべての外国人旅行者に一律のルールを適用している国もあれば、旅行者の国籍や特定のビザ協定によって異なる条件を定めている国もあります。そのため、目的地の入国条件を確認し、国籍による違いを理解することが非常に重要です」とアルワディッシュ氏は説明する。

アルワディッシュ氏は、自国にある渡航予定の国の大使館や領事館のウェブサイトを確認することを推奨する。ほとんどの場合、外国人旅行者の入国要件に関する詳細な情報を提供している。また、外務省のウェブサイトや、渡航先の入国管理局からの渡航勧告を参考にすることもできる。

こうした情報を入手したら、パスポートの残存期限と旅行予定日を比較しよう。

「その国が求める残存期間を確認したら、帰国日からその期間を計算します。出発日からではなく、帰国日から3カ月か6カ月、というのが一般的です」

また、利用する航空会社のルールも確認することが大切だという。特に帰国予定日から4、5カ月しか残存期限がない場合は注意が必要だ。

「帰国予定日から6カ月の残存期間がない場合、その航空会社には是非にかかわらず、あなたの搭乗を拒否する権限があるのです」とアルワディッシュ氏は警告する。

「空港到着前に航空会社に電話し、この件に関して情報を伝えておくべきです」

パスポートに十分な空白ページがあり、破損していないことを確認しよう。結婚や離婚、その他の理由で最近名前を変えた場合は、パスポートにもその旨が反映されていなければならない。渡航先でビザや電子渡航認証が必要かの確認も忘れずに。

もし問題が発生した場合、書類を早急に入手する方法はあるが、事前に細かく準備をしておくことで、余計なストレスや手間を避けることができる。

そうしたら、リラックスして海外でのバケーションを楽しめるだろう。

ハフポストUS版の記事を翻訳・編集・加筆しました。