防衛省がイスラエル製の攻撃用ドローンの購入を検討している問題で、市民団体が7月3、4日、同省と輸入代理店に対し、購入の検討をやめるよう求める3万54筆の署名を提出した。
署名を呼びかけているのは、多数の幹部自衛官を輩出する防衛大学校(防大)の卒業生たちでつくる「ジェノサイドに抗する防衛大学校卒業生の会」。
パレスチナ自治区ガザ地区の保健省の発表によると、2023年10月以降、イスラエル軍の攻撃によりガザ地区で3万7000人以上が殺害されている。
署名ページでは、「多くのパレスチナ人が虐殺されている今、日本政府がよりによってイスラエルの軍需企業と契約し、税金を投じて攻撃型ドローンを購入することは、イスラエルによる虐殺を容認するとのメッセージを国際社会に発することです」と批判。
防衛省と輸入代理店4社に対し、イスラエル製ドローンの導入検討を中止するよう求めている。
同会によると、4社のうち署名を受け取ったのは川崎重工業と日本エヤークラフトサプライ。海外物産と住商エアロシステムは、今後郵送で受け取ると答えたという。
神戸新聞によると、川崎重工業は6月の株主総会で、ドローンの輸入は巨大地震の対応のためだと説明した。同社はハフポスト日本版の取材にも、「輸入の目的は、災害時に無人機を活用できる仕組みを検討することであり、ガザ侵攻が始まる前から計画していた」とコメントしている。
一方防衛省は、市民団体「武器取引反対ネットワーク」(NAJAT)との6月の交渉で、攻撃用ドローンの用途について、「空中から目標を捜索・識別して迅速に目標に対処することを想定」した防衛目的であると説明しており、自然災害時の活用は想定されていない。
「ジェノサイドに抗する防衛大学校卒業生の会」を立ち上げた会社員の平山貴盛さんは、7月4日夕、東京・新宿区の防衛省前で開かれた抗議集会で、「防衛省と川崎重工で言っていることが全然違う。どっちが嘘をついているのか」と指摘。その上で、使用の目的に関わらず、「そもそも今回批判されているのは、イスラエルの軍事企業からドローンを買おうとしていること」だと強調した。
防衛省前の抗議集会で、参加者たちは「Free Free Palestine」「防衛省は何してる?」「虐殺やめろ」などとコールした。
候補機7機➡︎9機に
防衛省は、「無人アセット防衛能力」の強化を目的とした候補機の実証事業にかかる費用として、2023年度予算に「小型攻撃用UAV(無人航空機、ドローン)」30億円、「多用途/攻撃用UAV」69億円をそれぞれ計上している。
市民団体「大軍拡と基地強化にNO!アクション2023」による2月の防衛省との交渉で、同省が2023年度中に実証試験の契約を結んだ攻撃用ドローン7機のうち、イスラエル製が5機を占めることが判明した。
この5機の製造元は「イスラエル・エアロスペース・インダストリーズ」、「Uvision」、「エルビット・システムズ」の3社で、イスラエルの軍需産業の代表格が名を連ねる。
その後、NAJATが主催した6月21日の防衛省交渉で、同省はスペインとオーストラリアの企業と新たに小型攻撃用ドローンの実証試験の契約を結んだことを明らかにした。これにより、候補機9機のうち5機がイスラエル製となった。
「ジェノサイドに抗する防衛大学校卒業生の会」は、今後もオンラインの署名ページで賛同者の募集を続けるという。
【取材・執筆=國﨑万智(@machiruda0702)】