全日本空輸(ANA)と日本航空(JAL)が、「従業員が安心して働ける環境を守ることが全てのお客さまに安心で快適なサービスを提供する基盤である」として、「カスタマーハラスメントに対する方針」を共同で策定し、6月28日に発表した。
「カスタマーハラスメント行為は、対応する従業員だけでなく、周囲のお客さまにご不快な思いを抱かせ、本来提供すべきサービスが十分に提供できなくなるなど、ご迷惑につながる」ことから、企業としての考えを明確にするため、方針の策定、発表に至ったという。
両社はカスタマーハラスメントの定義を、「顧客または第三者(取引先など含む)からの優越的な立場を利用した『航空法、その他関連する法規に反する行為』、及び『これらにつながりかねない行為』、または『義務のないことや社会通念上相当な範囲を超える対応を要求する行為』により、従業員の就業環境が害されること」として以下の9つに分類した。
暴言、大声、侮辱、差別発言、誹謗中傷など
・大声、言葉遣いが荒い話し方、「バカ野郎」などの発言
・「〇〇(特定の性別を指して)のくせに」「男性の上司を出せ」などの性差別的な発言
・容姿を揶揄する発言、能力を否定する侮辱的な発言
脅威を感じさせる言動
・「殴ってやる」「殺すぞ」「SNS で拡散させる」などの脅迫的な発言
・反社会的な勢力などをほのめかす発言
・規定やルールを超えた多額の補償金やアップグレードなどの特別対応の要求
・「家まで謝りに来
過剰な要求
い」「土下座しろ」などの実現不可能な要求
・係員の態度が気に入らないなど、理不尽な理由での慰謝料などの金銭の要求
暴行
・社員を殴るなどの暴力行為
・身体を押す、肩を掴む、手をはたく、ものを投げる、飲み物をかける、傘を振り回すなど、社員が危険を感じる行為
業務に支障を及ぼす行為(長時間拘束、複数回のクレームなど)
・居座り、長時間の電話など、正当な理由がない社員の長時間拘束
・話のすり替え、揚げ足取りや執拗な攻め立てによる社員の長時間拘束
・(複数の場所での)同じクレームの繰り返しによる著しい業務妨害、不合理な問い合わせの複数回繰り返し
・常習的な同じクレームの繰り返し
業務スペースへの立ち入り
・事務所やオフィスへの押し入り・居座り
社員を欺く行為 ※明らかに事実と異なる言動をするなど
・不正に発券された搭乗券の利用、年齢や氏名を詐称した搭乗、空席確保のための重複予約行為
・お手伝いが必要な内容の虚偽申告、社員への対応の強要
・受託手荷物の破損に関する虚偽申告(元からあった傷を今回の搭乗によるものと主張するなど、明らかに事実と異なる発言)
会社・社員の信用を棄損させる行為(SNS 投稿など)
・事実に反する会社や社員への誹謗中傷の SNS への投稿
・予約センター・機内・空港などでの対応状況の録音・録画データの SNS への投稿
・事実ではないことや、事実を誇張した虚偽を含んだ内容の流布・インターネット上での掲載
セクシャルハラスメント(盗撮、わいせつ行為・発言、つきまといなど)
・性的な言動、つきまといにより身体的または精神的に苦痛と感じる行為
・盗撮
以上の9つを挙げたうえで、「 悪質な言動および犯罪行為に対しては、しかるべき機関に相談のうえ、厳正に対処します」としている。
さらに、社員に対する心のケアやカスタマーハラスメントに正しく対応する教育などを行うなど、航空業界としてカスタマーハラスメントへの対応力向上を目指すという。