子どもを性的に消費する社会が、「加害者の認知の歪み」を支える。小児性犯罪を防ぐには【専門家インタビュー】

フランス映画『コンセント/同意』でも描かれた、子どもを懐柔する「性的グルーミング」のプロセス、そして小児性犯罪の加害者に特有の「認知の歪み」とは。加害者臨床の専門家に聞いた。
『コンセント/同意』
『コンセント/同意』
© 2023 MOANA FILMS – WINDY PRODUCTION - PANACHE PRODUCTIONS - LA COMPAGNIE CINEMATOGRAPHIQUE - FRANCE 2 CINEMA - LES FILMS DU MONSIEUR

著名作家による性虐待を告発したフランスのベストセラー「同意(Le Consentement)」。本作品を原作とした映画『コンセント/同意』が8月2日、日本で公開された。

加害者の男は、仏文学界における地位を利用して未成年の少女に近づき、巧みな接触で「恋愛関係にある」と思い込ませ、性加害を繰り返す。

映画では、実際に起きた事件を基に、子どもを物理的・精神的に周囲から引き離し、加害行為を継続するといった「性的グルーミング」(※)の手口が描かれている。

「加害者たちは、被害児童本人だけでなくその子を取り巻く環境に対しても極めて巧妙にグルーミングをします。だからこそ、被害者は声を奪われてしまう」

性犯罪者の再犯防止プログラムに長年携わる精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳さんは、子どもへの性加害が表面化しにくい要因の一つをそう指摘する。

映画でも描写された性的グルーミングのプロセス、加害者に特有の「認知の歪み」、そして子どもへの性加害を繰り返させないために必要な社会の仕組みについて、斉藤さんに聞いた。

(※)性的行為を目的に子どもを手なずけることを「性的グルーミング」と呼ぶ。ターゲットを絞り込んで接近手段を確保し、被害者を孤立させ、被害者からの信頼を得てその関係性をコントロール・隠蔽する行為と言われる

【映画『コンセント/同意』のヴァネッサ・フィロ監督のインタビューはこちら⬇︎】
「子どもたちの被害は芸術に捧げられた」著名作家と性的関係に。14歳の少女が問う「同意」

▽目次

・性的グルーミングの5つのプロセス

・純愛幻想という「認知の歪み」

・子どもを性の対象とするコンテンツが日本社会に溢れている

・加害をやめ続けるために必要なこと

・性被害を子どもに打ち明けられたら

(この記事には、映画の具体的な内容が含まれます)

『コンセント/同意』
『コンセント/同意』
© 2023 MOANA FILMS – WINDY PRODUCTION - PANACHE PRODUCTIONS - LA COMPAGNIE CINEMATOGRAPHIQUE - FRANCE 2 CINEMA - LES FILMS DU MONSIEUR

性的グルーミングの5つのプロセス

━映画では、著名作家のガブリエルが性的な意図を持って未成年者との距離を縮めていき、暴行や脅迫といった手段を用いることなく性的関係を維持する様子が描かれています

性的グルーミングとは一体何であり、どのようなプロセスを踏むのかを学べる映画だと思いました。

加害者のガブリエルは有名な作家で、読書に強い関心を抱く少女ヴァネッサにとっては憧れの、絶対的な力を持った存在です。また、子ども本人だけでなく、子どもを取り巻く環境に対しても粘り強く、かつ巧妙にグルーミングをしていきます。

子どもを取り巻く周囲の大人たちの信頼や承認を取り付け、被害を受ける子どもが声を上げられないようにしていく。多くの小児性犯罪者たちに共通する性的グルーミングの手口です。

どんな権力者も、一人だけで長期間、性加害行為を続けることは難しいです。周りの環境ごとグルーミングする構図は、故ジャニー喜多川氏による性加害問題にもみることができます。

━性的グルーミングは、どのようなプロセスで行われるのでしょうか

米フェアリー・ディキンソン大学の研究によると、性的グルーミングの典型モデルは次の5段階を経るとされています。

①被害者の選択

②子どもにアクセスし、分離を進める(子どもの周辺のアセスメント)

③信頼を発展させていく

④性的コンテンツや身体的接触に鈍麻させる

⑤虐待後の維持行動

まず、加害者はターゲットを探します。自尊心が低い、孤立している、貧困家庭、母子家庭で父親のような存在を求めているなど、「懐柔しやすい」と考える子どもを選びます。

②では物理的・心理的に子どもを周囲から引き離します。例として、習い事の個人指導をする、子どもを対象としたスポーツイベントやボランティア団体で指導者的な立場になる、などが挙げられます。

心理面でも、「君を理解しているのは自分(加害者)だけ」「家族の人や友達は誰も君のことを分かってくれないね」などと吹き込み、周囲と距離を取らせ孤立させていきます。

続く③では、子どもを褒める、子どもが好きな遊びをする、手に入りにくいゲームカードなどの報酬を与えるといった方法で急接近します。子どもは自身に関心を寄せられたり、悩みに共感してもらったりすることで、加害者に信頼感を抱いていきます。

その次の段階④で、ようやく性的なニュアンスを少しずつ出していきます。マッサージやくすぐりといった一見すると性的には思えないような接触から始まり、児童ポルノや裸を見せるなどの行為で性的な刺激に慣れさせていきます。

近年よくある手口としては、アダルトコンテンツをスマホで見せる方法です。画像や映像を見せて「じゃあ一緒にやってみようか」と提案し、性加害をします。

最後の⑤で、虐待後の維持行動として加害者は加害行為を継続できるように口止めをします。「君を愛している、君は特別だ」といった優しい言葉をささやく以外にも、「二人だけの秘密がバレたら、家族は悲しむよ」などと暗に脅す場合もあります。

「子どもと性行為をする」という目標に向かって、多くの小児性犯罪者たちは計画的にこのプロセスを遂行しています。

映画では、加害者がヴァネッサと知り合ってからかなり早い段階で性的な接触をしているように描かれていました。通常は性的な意図を隠して関係を作り、時間をかけて信頼を深めていくので、その点は加害者臨床の現場で出会うリアルの加害者とは少し違うと感じました。

純愛幻想という「認知の歪み」

斉藤章佳さん
斉藤章佳さん
Machi Kunizaki

━10代のヴァネッサは、父親との関係が希薄な上、母親との不和も抱えていました。「大人に見守られる」ことを渇望していたときに、ガブリエルと出会います

先ほど①で説明した通り、加害者がグルーミングを実行するときには、対象者である子どもの家族関係や親の仕事、経済状況といった背景を事前に調べます。これを、「子どもを取り巻く環境のリテラシーレベルのアセスメント」といいます。

経済的に困窮する家庭や、親との関係が希薄で孤独感を抱えている子どもの方がグルーミングしやすく、性的接触を続けやすいからです。

被害に遭うケースで圧倒的に多いのは孤立状態にある子どもたちですが、一方で家庭や学校生活で特に問題を抱えているわけではない子どももターゲットになります。女児だけでなく男児が被害に遭うことも決して珍しくありません。どんな子どもも無関係ではなく、性的グルーミングの被害に遭う可能性があります。

━ガブリエルは、ヴァネッサに対して2人の関係は特別であり、「互いに愛し合っている」と繰り返し伝えていました

まさに加害者の「認知の歪み」の一つである「純愛幻想」です。「認知の歪み」とは、「嗜癖行動を継続するための、本人にとって都合の良い認知の枠組み」のこと。つまり、自分を正当化するための都合の良い言い訳です。

ガブリエルはまるで文学作品だとでも言うように、2人の関係を「純愛」だと美化していました。「自分とこの子は純愛で結ばれていて、これは誰にも理解できない。愛し合っているから性行為は当然だ」という認知の歪みは、加害行為を繰り返し「成功」するたびに強化されます。

当然ながら、子どもの判断能力や経験値は大人と同等ではなく、未熟です。そして住んでいる世界も狭いです。

「支配━被支配」という圧倒的な力関係の差があるにも関わらず、加害者は「恋愛関係だ」と主張して加害行為を正当化します。そこでは性的同意や性交同意年齢の概念が決定的に抜け落ちているのです。

ヴァネッサをはじめ、性的な経験がない子どもたちに対しては、加害者の歪んだ性的価値観を埋め込みやすくもあります。小児性犯罪者たちは「目の前の子どもの生殺与奪の権を自分が握っている」とよく言いますが、ガブリエルもこの感覚に近かったのだと推測します。

「君は特別」という言葉も、加害者の常套句です。こうした「特別感の演出」によって、最初の加害をした後も次につなげられる状況を作っていきます。

加害者たちの表現で言うと、「子どもの承認欲求を転がす」。大人から特別視され、認められたと感じさせて、加害行為を維持するのです。

━ヴァネッサも当初ガブリエルの言葉を信じ、2人の関係に猛反対した母親に対して強い口調で反発します

被害児童が加害者をかばうケースを、私も数多く見てきました。親は警察に被害届を出そうとするけれど、子どもは「あの人は悪い人ではない」と言って止める。「尊敬している」と言うことさえあります。

なぜそんなことが起こるのでしょうか。

グルーミングは朝の「おはよう」から始まり、夜の「おやすみ」の声かけまで、非常に粘り強く子どもに寄り添います。

加害者はとにかく子どもに対して優しい。グルーミングの本質は「優しさ」です。これは加害者の「戦略」と言ってもいいと思います。だから孤立している子どもがその「優しさ」に触れると、初めて自分の話を否定せずに聞いてもらったという体験になる。

被害児童がよく言うのは、加害者は「ひだまりのような存在」だということ。毎日時間をかけてオンライン上などでメッセージのやり取りをする。親身に相談に乗り、自分のことを世界で一番理解してくれている特別な人だと感じさせる。そうした信頼関係を巧みに利用し、加害者は子どもと会うたびに少しずつ体の境界線を侵していきます。

グルーミングによって、「これは恋愛なんだ」「自分自身も同意したことだ」と、被害者も思い込まされてしまいます。

子どもを性の対象とするコンテンツが日本社会に溢れている

斉藤章佳さんの著書
斉藤章佳さんの著書
HuffPost Japan

━著書『子どもへの性加害-性的グルーミングとは何か』(幻冬舎新書)で、「幼い子どもを性的に消費することをいわば当たり前とする風潮が日本にはある」と指摘しています

児童ポルノが小児性愛障害(※)の直接的な病因かと言うと、そうではありません。児童ポルノを愛好して自慰行為を繰り返すだけでは、小児性愛障害にはなりません。もっと他にも複合的な要因があります。

ただ、加害者臨床に長く関わってきた経験上確実に言えるのは、小児性愛障害の診断を満たしている人で、過去に子どもへの性加害歴がある場合、児童ポルノは次の性加害のトリガー(引き金)になるということです。

日本社会には、子どもを性の対象として消費するコンテンツが溢れています。幼い子どもを性的に消費することを当たり前とする社会で、加害者たちは「子どもは性的な存在である」というメッセージを受け取ります。そうした社会の価値観が、小児性犯罪者たちの認知の歪みを支えていると私は考えています。

痴漢も盗撮も小児性犯罪も、それぞれの加害者特有の認知の歪みがあります。

これらに共通するのは「No means Yes」、つまり「嫌よ嫌よも好きのうち」の考え方です。2023年の刑法改正で不同意性交等罪が創設され、「同意のない性行為は犯罪」との認識が少しずつ広まり始めているものの、「No means Yes」は日本社会に根付いてきた価値観であり、加害者の認知の歪みと地続きだと思います。

小児性愛障害・・・通常13歳以下の子どもに対し、少なくとも6カ月にわたり性行為に関する空想、性的衝動、行動が反復する特徴を持つ精神疾患。「ペドフィリア(Pedophilic Disorder)」とも呼ばれる

━ガブリエルは、ヴァネッサだけでなく複数の少女たちに対する性虐待についても告発されています。ガブリエルも小児性愛障害の当事者だと考えられますか

映画の情報だけで断定することは難しいですが、一般的には、子どもへの性加害を繰り返しており、本人がその性的嗜好にとらわれ何らかの社会的損失や経済的損失などの苦痛を感じている場合、小児性愛障害と診断されることが多いです。小児性愛障害にも、行為依存という「性的嗜癖行動=アディクション(依存症)」としての側面があります。

だからといって、精神疾患だから仕方ないとか、許されるということには当然なりません。

子どもが視界に入ることがトリガーとなり、衝動に抗えずに性的接触をしてしまうという衝動制御障害の側面があることも事実です。ですが、加害者は交番の前では絶対に加害行為には及びません。被害者や場所、状況・タイミング(時間帯)を選んでおり、その行為は選択的かつ計画的であることから、行為責任という視点も重要です。

被害に遭った子どもはその後も長きにわたって苦しみ続けます。小児性愛障害という精神疾患と、本人が選択的に行っている行為責任を分けて考えなければいけません。加害者臨床には、加害に至った「原因」と、それによって担うべき「責任」を分けて、それぞれの面からアプローチをするという原則があります。

加害をやめ続けるために必要なこと

━加害者臨床では、具体的にどのように本人と関わるのでしょうか

当人の逮捕後、起訴までは最も報道量が多いですが、判決が出たら一気に報道されなくなります。でも加害者は刑務所に行って、何年かしたら出てくるわけです。

刑事手続きの入り口段階での支援、受刑中の支援、出所後の出口支援というシームレスな関わりが重要で、そこに加害者臨床の専門家が伴走を続ける必要があります。刑務所で治療経験があったとしても、出所後につながりが切れると、治療の再導入率は格段に落ちます。

刑期を終え、これからやり直そうと思っても、実名報道がネット上に残っているためまずデジタルタトゥーの問題から就労の壁にぶつかります。私は、結局治療から離れて孤立化し、社会から排除され自暴自棄になった結果、再犯する加害者をたくさん見てきました。だから社会に戻った後も関わり続けるキーパーソンが必要なのです。

出所前に面会し、受刑中に出所後の環境調整をして、出所してからも治療や就労につないでいく。再犯を防ぎ、二度と被害者を出さないためには、加害者たちの「生きる」ことに伴走する視点を持っていないといけません。

━斉藤さんは2018年、小児性犯罪の加害者に特化した治療グループを立ち上げています

小児性犯罪の加害者が、一人で加害行為をやめ続けることは極めて困難です。ハイリスクな状況や引き金を適切に回避するためのスキルを身につける場と、同じ問題を抱えながら一緒に治療する仲間とつながることができる機会が必要です。

小児性愛障害の人たちだけの治療コミュニティは、日本では私が所属する榎本クリニック(東京・池袋)しかなく、全国から相談の問い合わせがあります。

特にハイリスクの人を対象にした治療プログラムは週6日、9:00~19:00までデイナイトケアという仕組みを利用して行います。地方の場合は通えないので、引っ越して通院する方もいますが、それが叶わず断念した人も多いです。

出所後に帰住予定地で治療を受けられる受け皿が、圧倒的に足りていないのが現状です。

小児性犯罪の加害者が、出所後に仕事に就けず家も借りられず、居場所がなくなって追い詰められれば、生きる場所は刑務所しかなくなります。一時的に社会から排除できても、再犯を繰り返してまた被害者が出てしまう。

同じような問題を抱え、再犯したくないという思いを共有できる人たちとつながり、さらに加害行為をやめ続けながら生きる力を身につけることができる。被害を生まないためには、そういう場所が社会に必要です。

小児性愛障害がある人は世の中に一定数います。

カナダやイギリスでは、性犯罪で受刑した人が、出所後の保護観察期間中に再犯防止プログラムの受講を義務付けられています。強制力のある治療制度で、「受けない」選択肢はありません。

小児性犯罪者が治療の途中でドロップアウトせず、加害行為をやめ続けるスキルを身につけるための専門治療のあり方について、海外の先駆的な取り組みを参考に、社会で議論が深まることを願っています。それが子どもを性被害から守ることにつながるからです。

━再犯防止プログラムでは、再発のリスクが高まった時に「周囲に助けを求める」対処法も学ぶと著書で記されています

周りに助けを求めることは、依存症からの回復にとって非常に重要です。小児性犯罪者の多くは男性で、困った時に周囲に助けを求める「援助希求能力」が低い傾向があります。

小さい頃から「男なら泣くんじゃない」「歯を食いしばれ」などと言われて育ってきた男性は多いですよね。大人に「痛み」を訴えた時に、その感情を大切に扱われず、我慢するように言われ「なかったこと」にされる。そういった日本社会にある「有害な男らしさ」の教育や呪いに、援助希求能力の低さの元凶があるのではと私は考えています。

自分の「痛み」を大切にされたという経験があって初めて、人は他人の痛みを共感的に理解できるようになります。ですが「痛みを痛みとして感じないように」と繰り返し刷り込まれると、我慢・抑圧することに慣れてしまう。

その結果、困難なことが起きても助けを求められず、追い込まれたときに最後には自暴自棄になって「他害か自傷」を選択しがちです。そうならないように、治療を通じ、もっと早い段階で人に相談して一緒に解決法を考えられるよう、SOSを出すスキルを身につけていくのです。

性被害を子どもに打ち明けられたら

『コンセント/同意』
『コンセント/同意』
© 2023 MOANA FILMS – WINDY PRODUCTION - PANACHE PRODUCTIONS - LA COMPAGNIE CINEMATOGRAPHIQUE - FRANCE 2 CINEMA - LES FILMS DU MONSIEUR

━子どもから性被害を打ち明けられた時、親など周りはどうするべきですか

まず大前提として、絶対に否定せずに子どもの話をしっかりと聞くことです。本人の言葉を聞いた後、「よく話してくれたね」「話してくれてありがとう」と全面的に受け止める。

その上で、あなたに責任はないとはっきりと説明してください。「自分があんなところを歩いていたせいだ」「あんな服を着ていたからだ」「私が悪い」などと、自分を責めている子どももいるので、悪いのは加害者だと伝えてほしいです。また、必要があればワンストップ支援センターを介して適切な治療につなげてください。

被害に遭ったと言ってくれるのはまだ良いです、言えないことがほとんどなので。そもそも幼い子どもは性暴力だと認識できません。

日頃から、「プライベートゾーン」という言葉を使いながら具体的にどの部分を触られたら性暴力なのかを話したり、「誰かから不快なことや痛いこと、つらいこと、少しでもおかしいと感じることをされたと思ったら話してほしい。絶対に怒らないし、あなたの受けた加害行為は絶対に許されない犯罪だ」と繰り返し伝えてもらいたいです。これは、性的自己決定権に関する教育にもつながっていきます。

親が24時間見ていることはできませんので、1回目の被害を100%防ぐことは現実的には難しいです。ですが、早い段階で本人が「あれは性暴力だ」と認識して大人に相談することができれば、適切なケアにつながる可能性が高まります。

そのためにも、子どもをターゲットにした性的グルーミングという行為が社会で起きていると話題にしたり、テレビなどを見ているときに親が性被害者を責める発言を絶対にしないなど、日常における子どもとの会話を大事にしてほしいです。

子どもを加害者にも被害者にも傍観者にもしないために、性の多様性やジェンダー平等、性的同意といった、人権を基盤に性に関して幅広く学ぶ「包括的な性教育」を家庭でも幼少期から取り入れる試みが広がってほしいなと思います。

▽斉藤章佳氏・プロフィール:さいとう・あきよし、精神保健福祉士、社会福祉士。国内最大規模といわれる依存症回復施設の「榎本クリニック」でソーシャルワーカーとして長年勤務し、アルコール、ギャンブル、薬物、性犯罪など様々な依存症問題に携わる。2006年、性犯罪を繰り返す当事者の再犯防止プログラムを日本で初めて民間のクリニックで開始。これまでに治療に関わった性犯罪者は3000人を超える。2018年には小児性犯罪の加害者に特化した治療グループを立ち上げた。著書に『男が痴漢になる理由』(イースト・プレス)、『「小児性愛」という病 それは、愛ではない』(ブックマン社)、『男尊女卑依存症社会』(亜紀書房)、『子どもへの性加害 性的グルーミングとは何か』(幻冬舎新書)など多数。

【取材・執筆=國﨑万智(@machiruda0702)】

注目記事