米アップルの女性従業員2人が6月13日、同様の労働条件下で実質的に同じ業務にあたる男性よりも年収が1万ドル(約160万円)低く抑えられているなどとして同社を提訴した。男性の同僚が職場のプリンターに置き忘れた「源泉徴収票」を見つけたことで、賃金の差がわかったという。
ウォール・ストリートジャーナルやCNNなど大手メディアも取り上げている。
原告の1人であるジャスティーナ・ジョンさんは2013年6月からアップルで勤務している。これまでにセールス・スペシャリストやモバイル・テクニシャンなど様々な業務を担い、現在はマーケティング部門でトレーニングインストラクターをしている。
ジョンさんの入社当時、アップルには就職希望者に前職での給料を聞く採用方針があったといい、ジョンさんは前職と同額の基本給を提示されたという。
訴状では、アップルは2017年秋以前、就職希望者から聞き出した前職での給料情報をアップル入社時の給与を決める材料として使っていたと指摘している。これにより、実質的に同じ業務にあたっているにもかかわらず、男性に比べて女性の給料が低くなる結果につながっているとしている。さらに、アップルはこの賃金格差について知っていたにもかかわらず、不平等を是正する措置を何も講じなかったとし、実質的に同じ業務にあたる男女に同等の賃金を払わなかったことにアップルの故意があったと主張している。
アップルが本社を置くカリフォルニア州では2018年1月、雇用側が求職者に前職の給料について質問することが違法になった。求職者の給料履歴の情報をもとに採用の可否を判断したり、給料を決めたりすることも違法だ。
訴状ではアップルがそれ以降、就職希望者に希望年収を聞くようになっているとしている。希望年収を聞かれた求職者は前職の年収を少し上回る額を提示するという研究に触れ、希望年収は前職での給与額に密接に関連していると訴えている。
原告はアップルのこの採用姿勢について、過去の賃金格差を固定化してしまうことになると指摘している。
CNNによると、男性同僚が職場のプリンターに忘れた「源泉徴収票」を見つけたのはジョンさんだった。同僚と実質的に同じ仕事をしていたジョンさんは自分の年収が1万ドルほども低いことを知り、「最悪な気分になった」と取材に答えている。
男性優位と言われるシリコンバレーのIT業界
シリコンバレーのIT企業は、男性が多いとして問題視されてきた。
地元紙マーキュリー・ニュースによると、2022年にはグーグルが女性従業員を差別したとする訴訟で女性従業員1万5500人に計1億1800万ドル(約186億円)を支払うことで和解している。
この訴訟では、原告はグーグルが女性従業員を男性よりも低い給料水準にはめ込んだと主張。女性従業員に低賃金の仕事を与え、昇進は遅く、頻度も少なかったとし、同じような仕事に対する女性従業員の給料が男性よりも低いと訴えていた。