外国人への職務質問を推奨する愛知県警察の内部文書が見つかった問題で、警察庁は6月13日の参議院法務委員会で、当該資料について「確認することができない」と答弁した。警察庁は6日の参議院内閣委員会で、愛知県警が作成していたことを事実上認める答弁をしており、説明を修正した格好だ。
どんな文書なのか
問題となっているのは、愛知県警の地域総務課が作成したとされる2009年4月付の文書『執務資料 若手警察官のための現場対応必携』。人種差別的な職務質問(いわゆるレイシャル・プロファイリング)の違法性を問う訴訟の原告側が、証拠として東京地裁に提出している。
訴状によると、資料には次のような記載があったという。
「心構え ☆旅券を見せないだけで逮捕できる! ◎外国人は入管法、薬物事犯、銃刀法等 何でもあり!! ◎応援求め、追及、所持品検査を徹底しよう!!!」
「一見して外国人と判明し、日本語を話さない者は、旅券不携帯、不法在留・不法残留、薬物所持・使用、けん銃・刀剣・ナイフ携帯等 必ず何らかの不法行為があるとの固い信念を持ち、徹底的した追及、所持品検査を行う」(原文ママ)
この資料をハフポスト日本版が2024年1月31日付で愛知県警に情報開示請求したところ、「廃棄済み」として開示されなかった。
6日の参議院内閣委員会で、共産党の井上哲士議員は、この執務資料がいつまで使用されていたかを質問した。
警察庁の檜垣重臣・生活安全局長は、「ご指摘の資料について愛知県警察に確認したところ、法律の改正があった場合や社会情勢の変化等、見直しが必要な都度更新している資料であり、更新日は確認できないという報告を受けています」と説明した。
つまり、更新日は不明であるものの、この内部文書を愛知県警が作成していたこと自体に関しては事実上、認めていた。
「今更ごまかそうと」
13日の法務委でも同じ資料が取り上げられた。
共産党の仁比聡平議員が上記の資料を読み上げ、「こうした記述が現にあるのですが、事実ですね?」と確認したところ、警察庁長官官房の和田薫・審議官は「ご提示の資料については、確認することができない旨、愛知県警察から報告を受けております」として、6日の説明を修正した。
これに対し、仁比議員は「今更ごまかそうとしているのは、どこまでやましいことをしてきたか、そのことの自白に他ならないと私は思います」と批判。「警察庁は改めてこの資料の存在と記載の内容を調べて、当委員会に報告してください」と求めた。
松村祥史・国家公安委員長は6日の内閣委員会で、「都道府県警察の執務資料の一つひとつについて、確認する必要はないものと考えております」と発言し、調査はしないとの姿勢を示している。
日本のレイシャル・プロファイリングを巡り、過去には外国公館からも注意喚起が出ている。
在日アメリカ大使館は2021年12月、「レイシャル・プロファイリングが疑われる事案で、外国人が日本の警察から職務質問を受けたという報告があった」として、日本で暮らすアメリカ国民にSNS上で警告を出した。
国連の人種差別撤廃委員会の一般的勧告(2020年)は、「レイシャル・プロファイリングとの効果的な闘いには、人種差別を禁止する包括的立法が欠かせない」と指摘。禁止法の策定や実施を各国に求めている。
外国ルーツの人を対象にした東京弁護士会の調査やハフポスト日本版のアンケートにも、レイシャル・プロファイリングの被害を訴える声が多数寄せられた。
【アンケート】
ハフポスト日本版では、人種差別的な職務質問(レイシャル・プロファイリング)に関して、警察官や元警察官を対象にアンケートを行っています。体験・ご意見をお寄せください。回答はこちらから。