「離婚はダメ」「家族が1番」...従わなくてもいい。社会の5つの期待や固定観念

「離婚しないで結婚を貫いた方がいい」「自分よりも他の人のニーズを優先して」... 。あなたはどう思う?
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「離婚しないで結婚生活を貫きなよ」

「自分よりも他の人のニーズを優先して」...

もしあなたがこうした言葉を聞いたことがある(あるいは言ったことがある)のなら、社会の信念や期待に直面したことがあるだろう。

「社会通念や期待は、社会の秩序を保つために存在する」と結婚・家族セラピストのアパルナ・サガラム氏は語る。

「不幸な結婚生活を送っているのに離婚しない」など、ある社会的期待を正しいと思う人もいれば、思わない人もいる。自分が共感できない社会の信念に従うと、それがあなたの幸せの邪魔をし、悪影響を及ぼすこともある。

セラピストたちは、そうした社会通念は多いという。その中でも、よくある5つの社会的な信念を以下に紹介する。

「幸せがゴールであるべき」

「幸せ」は漠然としているものの、多くの人にとって共通の目標だ。しかし専門家は、「幸せ」は目的であるべきではないという。

「人々は常に幸せになろうとしていますが、それは達成可能な目標ではないと思います。幸せは他の感情と同様、感じては消えるもの。だから幸せが目標であるべきではないのです」とサガラム氏は語る。

目標としての幸せは、社会が私たちに押し付ける信念であり、恋愛や子ども、高収入の仕事など、特定のものが「幸せ」をくれるとさえ教えてくれる。しかしそうとは限らない。

「私たちはある目標を達成すると、次の目標に達すれば幸せになれると考えます。でも実際は、ゴールは動き続けているのです」とサラガムは続ける。

それは、幸せを追い求める終わりなきサイクルになり、いくら稼いでも、もっと稼ぎたいと思うことになってしまうだろう。

離婚は間違っている

宗教の教えからであれ、家族の圧力からであれ、一般的に離婚は「悪い」ことと思われている(実際はそんなことはない)。

「結婚生活では、デートを増やしたり掃除の分担を見直したり、改善可能なこともありますが、核心的な価値観や性格は変えられません」と結婚・家族セラピストのナタリー・ムーア氏は話す。

子どもを持つことや家族構成について、相手が異なる信念を持っているなら、結婚生活を続けることに固執することは自分のためにならない。

「時にはそのことを正直に話し、関係を見つめ直して『頑張ったけど、もう上手く行かないね』と前に進むことも重要です」とムーア氏はアドバイスする。

虐待がある場合など、人によっては、結婚を続けるよりも離婚した方が安全なケースもあるという。

「社会が結婚生活を貫くことの価値観をどれだけ押し付けようと、結婚生活を続けることが現実的でないこともあるのです」

「家族がすべて」

「家族がすべて」と本当に思っている人もいるが、家族に傷つけられたり虐待されたりした経験がある人もいるだろう。

オープンな会話を大事にする仲睦まじい家庭で育ったなら、この信念を持つのは容易かもしれない。

「しかし、治療していない深刻な精神疾患や虐待、裏切りや疎遠などの問題を多く抱える家庭の出身であれば、『家族がすべて』という信念を貫くのは困難でしょう」とムーア氏は話す。

LGBTQIA+など、一部のグループの人々にとっては、ありのままの自分でいることで家族から疎遠になることもある。

LGBTQIA+コミュニティの多くの人々にとっては、血縁関係からの支援が叶わないとき、血の繋がりに関わらず、お互いを支え合い愛することを選んだ人たちで成り立つ「Chosen Family」からのサポートシステムが重要だ。

「家族がすべて」と言うことは、こうしたコミュニティの人々を傷つけ、ストレスや恥を感じさせることになりうる。また、家族と境界線を築こうとしているのに受け入れてもらえていない人も同様だとムーア氏は説明する。

心理学者のラワンダ・ヒル氏は、「もしあなたの家族が有害だったり、癒せないトラウマから行動したりしている場合は、『家族がすべて』といった信念は健全なものとは言えません」と語る。

こういった場合、家族と境界線を築いた方が持続可能であり、特定の家族メンバーと完全に関係を断つのも良い考えかもしれない、と述べる。

「他の人を優先することが重要」

「これは、自分がお人よしや完璧主義者だと自認している人にとっては特に有害な信念です。彼らはすでに自分より他人を優先したいという強い衝動や必要性を感じているからです」とムーア氏は説明する。

この不公平な社会通念は、自己犠牲的な行動を助長し、メンタルヘルスや全体的な行動に悪影響を及ぼしかねないと言う。

考えてみてほしい。自分にお金がないのに家族にお金を貸すことは、自分に必要なものや心の平穏を否定していることになる。

「社会として他人のニーズを優先することを英雄視し、それを基盤に考える傾向があり、美談として語られがちです」とムーア氏。

「誰かが他の人のニーズを優先すると、その人は称賛や他の何かの形で、多くの対価を得る傾向があります。だから、この行動を変えるのはとても難しいのです」

もちろん、新生児の世話のために自分の睡眠を犠牲にするなど、子どもを優先しなくてはならない場合もあるが、それが常に「普通」であってはならない。

「子どもの酸素マスクをつける前に自分につけなさい」という比喩の通りです。子どもを優先しようとまず子どもにマスクを付けようとするかもしれませんが、実際は子どもを優先していません。もしあなたが酸素不足で気を失ったら、子どもは助けられないのですから」とムーア氏は説明する。

「ある年齢までに子どもをもつべき」

幼い頃から、私たちは「子どもを持たなければならない」という考えを浴びせられてきた。

「昔から子どもは人形で遊び、おままごとをする。早い時期から社会に適応させられています。家族の一員として生まれ、生殖能力がある。だから、子どもを産むことが当たり前のように期待されるのです」とヒル氏は語る。

文化や育った環境にもよるが、25歳や30歳、もしくは35歳か40歳か...いつ頃子どもを持つべきかの期待が寄せられるだろう。

「『私はこの年齢までにこうすべき...そうでなければ何かがおかしい、普通から外れてる...』というように、社会からのプレッシャーや信念を自分の中に溜め込むと、羞恥心や罪悪感、混乱につながるとヒル氏は述べる。

また、子どもが欲しくない人は、社会の「子どもを持つべき」という期待に囚われていると感じるかもしれない。

自分に合わない社会信念に従うのではなく、自分はどうしたいかを考えよう

ヒル氏は「ある社会の信念が自分に合わないと感じることが、恥ずべきことだと考え人がいるかもしれませんが、ただ語られないだけで、同じように感じている人は多いのです」と強調する。

自分が共感できない信念に従って人生を送る必要はない。今自分が持っている信念と、実際に貫きたい信念が何かを理解することが重要だとムーア氏は語る。

自分の信念を知るためには、子ども時代に親などから教わった、人生で大切なことについてのメッセージを振り返ってみることをムーア氏は提案する。

「大人になって振り返り、その中で自分が実際に共感するのはどれかを選択してみることです」

そこから、今の自分の気持ちを反映する信念に舵をとることができる。

信念は、自分がどのように生きたいかによっても生まれるとサガラム氏は語る。

「日々を振り返り、どのように決断しているか、どのように人と接しているか、何に喜びを感じるか、何に怒りを感じるか、といったことを分析することで、信念が築かれ始めるでしょう」

自分に合う社会的信念を支持しつつ、合わない信念は拒絶してもいい。

孤立感を和らげるために、セラピストや自分のコミュニティにサポートを求めることが重要だとヒル氏は述べる。「自分の居場所となる他の人とのコミュニティを見つける必要があります。『自分と同じように感じている人たちは誰だろう?』と探すのだから、それはちょっとした冒険になるでしょう」

どの社会的信念があなたに合うかは別として、自分の精神を奮い立たせるような選択をして人生を歩むことが最も重要だ。

サガラム氏は最後にこう語った。

「『こうするべきだ』との信念に囚われ、80代になって人生を振り返った時、こうすればよかった、ああしなければよかったと後悔したくはないですよね。だって、社会の期待に従っても、誰もあなたを表彰してくれる訳じゃないんですから」

ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。