ナチュラルコスメブランドのLUSH(ラッシュ)は6月5日、同社のボトル容器を、プラスチックによる海洋汚染を未然に防ぐ取り組みで回収された素材から製造されたボトルに切り替えることを発表した。
化粧品業界で世界初の取り組みとして導入するのは、認定リサイクルプロジェクト「Prevented Ocean Plastic」だ。
海洋を汚染するプラスチックのうち、約80%が新興国の沿岸地域から排出されているという。そこで「Prevented Ocean Plastic」では、東南アジア、中南米、ガラパゴス諸島やカリブ海沿岸など、プラスチックごみ問題に直面する新興国沿岸でプラスチックボトルのごみを回収し、高品質な再生素材として循環させる。
さらに、海岸沿いでのプラスチックボトル収集から再生素材への加工、再び商品に生まれ変わり店の棚に並ぶまで、透明性の高いトレーサビリティを確立しているという。同時に、地域住民の安定的な雇用も創出している。
LUSHの新しいボトルに使用するプラスチックは、インドネシアの海岸線や主要な水路50km以内で回収されたもの。
インドネシアは近年人口や観光客の増加が続く一方、国の廃棄物管理やリサイクルのインフラが不十分で、プラスチックごみ問題に直面しているという。
LUSHはこれまでも100%リサイクルPETを利用してきたが、取り組みをさらに進化させた形だ。
今回の取り組みについて、「海洋プラスチック汚染問題に警鐘を鳴らしながら資源循環を促す画期的なイノベーションに参画することへの意義を感じ、この度再生PET樹脂の原料をマテリアルリサイクルして、ラッシュのクリアボトルを作ることになりました」と説明している。
イギリスでは既に導入を始めており、日本では2024年9月頃から、「Prevented Ocean Plastic」による再生素材を使った100ml サイズのボトル容器を順次導入予定。250ml、500mlサイズは2024年12月末までに切り替え予定だという。
プラスチック汚染、国際条約制定の動きも
世界でプラスチックによる海洋汚染が深刻化している。2023年6月5日の世界環境デーに、アントニオ・グテーレス国連事務総長は「プラスチック汚染をやめよう」と訴えた。
国連によると、「毎日2000台を超えるごみ収集車に満載した量のプラスチックが、海洋、河川、湖沼へと投棄されている」という。このままいけば、2050年には海洋プラスチックごみは魚の量を上回るという試算もある。
プラスチック汚染の影響は大きい。流れ出たプラスチックは生態系を破壊する。紫外線や波によって細かくなった「マイクロプラスチック」は水や食料、空気などを通じて人間の体に入る。1週間でクレジットカード一枚分のプラスチックが体内に入っているというデータもある。
さらにプラスチックは化石燃料から作られている。新たなプラスチック生産が増え続ければ、プラスチックの生産過程で排出される二酸化炭素などの影響で、気候変動がより悪化することに繋がる。
待ったなしのプラスチック汚染問題に対して、国連では「プラスチック汚染をなくすための条約」の交渉が行われている。