一般財団法人「沖縄美ら島財団」の研究チームは5月28日、ホホジロザメの赤ちゃんが生まれた直後に「一皮むける」という論文を国際的な学術誌で発表した。
ホホジロザメといえば、映画『ジョーズ』のモデルとして知られ、サメといえばホホジロザメを思い浮かべる人も多いのではないだろうか。
そんな有名なサメである一方、どこで生まれ育つのかはいまだに謎に包まれていることが多いという。この謎に一歩近づくのが今回の研究だ。
はじまりは2023年、アメリカ・カリフォルニア沖で、世界で初めてホホジロザメの生まれて間もない赤ちゃん(胎仔)が目撃されたことだ。その赤ちゃんは「謎の白い膜(まく)」に覆われていた。
この白い膜は一体何なのか。専門家の間では「羊水に含まれる栄養成分(子宮ミルク)が胎仔の皮膚にこびりついたもの」だと考えられていたが、沖縄美ら島財団の研究チームは2つの疑念を抱いていたという。
一つは、白い膜が本当に子宮ミルクなのかということ。同研究チームの過去の研究によると、ホホジロザメの子宮ミルクの分泌は妊娠中期に止まる。また、妊娠後期の羊水には、皮膚に付着するような成分は含まれていないというのだ。
もう一つは、「皮膚に付着した子宮ミルクが出産後に長時間残るとは考えにくい」ということだ。同研究チームの観察の結果、「妊娠初期のホホジロザメ胎仔の体表に付着した子宮ミルクは、水で容易に洗い流すことができた」という。
そこで、研究チームはホホジロザメの近縁種であるネズミザメの赤ちゃんを調査。すると、謎の白い膜は「サメの赤ちゃんの皮膚そのもの」だったことが分かったという。
「体表の鱗の外側にさらに一枚の白い表皮を持っており、その表皮は出産後ただちに剥離すると考えられます。つまり、ホホジロザメは、出産直後に『一皮剥ける』ということになります」
なぜ白い皮膚で覆われて生まれるのか。
同研究チームによると、サメのうろこは硬い鉱物でできており、そのままでは子宮の内壁や、子宮内に同居する兄弟を傷つけてしまう恐れがあるという。そのため、白い皮膚で身体を覆い、生まれた後にその皮膚を脱ぎ捨てる仕組みなのではないかと考えているようだ。
同研究チームは「このような現象は、過去に調査されたことがなく、謎多きホホジロザメの繁殖生態に新たな知見を与えるものです」とコメントしている。