5月に入ると、家の塀やベランダ、公園の階段などさまざまなコンクリート壁に、体長1mmほどの小さな赤い虫がチョロチョロ動き回っているのを見ることがあります。
この虫は昆虫ではなくダニだと知っていますか?1980年代以降よく見るようになりましたが、謎が多いのです。
5月になると「小さな赤い虫」の問い合わせが集中
「私たちがよく目にする小さな赤い虫はカベアナタカラダニです。タカラダニ類は日本で4属13種が報告されていますが、カベアナタカラダニは人家付近で一番多く見られ、北海道から沖縄まで分布しています。タカラダニはコンクリートや岩石、煉瓦など乾いた場所を好み、建物壁面などでよく見られ、花粉や昆虫を摂食する雑食性のダニです」と言うのは、虫ケア用品最大手のアース製薬です。
この時期、アース製薬へはタカラダニについて問い合わせが増えるそうです。
「毎年5月になると、小さな赤い虫について問い合わせが集中しますが、5月を過ぎると問い合わせがパタッと止まります」
タカラダニは真夏になると消える
タカラダニの問い合わせが5月に集中するのはなぜでしょうか。
「カベアナタカラダニは毎年春先に卵が孵化し、5月になると成ダニが出現します。成ダニは産卵後に死亡し、7月以降はほとんど見られなくなります」
産卵場所は、屋上や地上敷地の壁面の隙間・割れ目です。このような狭い空間は温度や湿度の変化が少なく、アリやクモなどの外敵から身を守れます。卵のまま夏・秋・冬を越して翌年の春先に孵化するそうです。
タカラダニが分布を広げている理由
最近になってタカラダニをよく見かけるようになったような気がします。
「カベアナタカラダニは外来種説があって、そのため最近よく見るようになったのかもしれません。それに加えて、都市化が進みコンクリートやアスファルトで他の虫が住みにくくなる一方で、そういったところが平気なタカラダニが分布を広げるようになったのではないかと推測されます」
人を刺したり噛んだりすることは?
タカラダニは人を刺したり噛んだりすることはありませんが、潰すと赤い体液が皮膚につき、場合によっては皮疹を生じることがあるそうです。大阪府池田保健所衛生課によると、コンクリートの建物の外壁やベランダ、屋上などで大量発生した場合は、水で洗い流すとよいそうです。
また、小さいため、窓や扉が閉まっていてもほんのわずかな隙間があれば室内に侵入することもあるようです。
「タカラダニはベランダなどから家の中に入ってくることがあります。さまざまな害虫を駆除する総合駆除タイプの『不快害虫用エアゾール』を使用するのがオススメです。待ち伏せ効果が1ヵ月持続するタイプなら直接噴霧しなくても家に侵入することを防げます」
ちなみにタカラダニという名前は、子どもたちがセミを捕っていたとき、セミの体に赤い小さな虫がたくさんついていると金持ちになれるといって喜んだのが由来と言われています。