米プロアメリカンフットボールリーグNFLのカンザスシティ・チーフスのハリソン・バッカー選手が、「女性の天職は専業主婦」と発言して批判を招いている。
バッカー選手は5月11日、カンザス州のカトリック系私立リベラルアーツ校、ベネディクティン・カレッジの卒業式でスピーチをして、卒業生に向けて「最もひどい嘘をつかれてきたのは、女性の皆さんだと思います」と述べた。
「皆さんのなかには、社会で成功しキャリアを築く人もいるでしょう。しかしあえて言わせてもらえば、大半の人は、結婚し子どもを持つことを何より楽しみにしているのではないでしょうか」
「私の美しい妻イザベルは、妻そして母としての天職を得た時に、本当の意味で人生が始まったと言うでしょう」
「天職に身をゆだねている妻がいるからこそ、私はこのステージに立ち、今の私があるのです」
バッカー選手は「妻が主婦という最も重要な肩書きのひとつを受け入れてくれたからこそ、私の成功のすべてが可能になったといっても過言ではない」とも述べた。
「キャリアを築くというイザベルの夢は叶わなかったかもしれません、しかし、自分の決断を後悔しているかと尋ねられたら、彼女はためらうことなく、笑って『ない』と答えるでしょう」
女性の天職は子育てをする専業主婦だ、というバッカー選手の主張はソーシャルメディアで拡散。
バッカー選手のチームメートであるトラビス・ケルシー選手は歌手のテイラー・スウィフトさんと交際しているが、「テイラー・スウィフトに、妻、母、主婦でなければ価値がないと言ってみてほしい」などのコメントが投稿された。
また、ベネディクティン・カレッジの卒業生の一人は、「子育てに専念するのは良い選択肢の一つではあるものの、すべての人向けではない。母親をしながら働くという選択肢もある」とAP通信に述べた。
「Sexism & Sensibility(性差別と感性)」の著者であるジョー・アン・フィンケルスタイン博士は、「女性は、働く代わりに夫と子どもを支えることで真の満足を得られる(たとえ自分の夢をあきらめることになったとしても)という主張は、女性を家庭にとどめたい本当の理由を捻じ曲げて伝えている」とハフポストUS版の取材で述べた。
「彼らが重視しているのは、女性が必要なものではなく、男性がどうやって楽に生きるかどうかです」
「『自分の成功は妻のおかげだ、妻がいなければ今の自分にはなれなかった』と褒め称える裏には、本当の動機が隠されています 」
「それは、女性ではなく、男性にとって何が最善かです。女性にとって一番良いのは、選択肢があることです。しかし『ほとんどの女性が何を望んでいるか知っている』というような思い込みは、そのことを完全に無視しています」
保守的なカトリック教徒であるバッカー選手は、約20分のスピーチで、プライド月間や中絶の権利を擁護するバイデン大統領も批判した。
バッカー選手は、LGBTQ+の権利を啓発するプライド月間について「大罪のようなプライドではなく、聖霊とともに神を賛美することを中心とした真のプライドを持つことだ」と発言。
これを受け、カンザスシティのLGBTQ団体の元代表であるジャスティス・ホーン氏は、「ハリソン・バッカーはカンザスシティを代表しているわけではない。カンザスシティはいつでも、LGBTQ+コミュニティのメンバーを歓迎し、肯定し、受け入れる場所です」とXに投稿している。
ハフポストUS版の記事を翻訳・加筆・編集しました。