ガザで安全な行き場を失った人々が身を寄せるラファで、状況が刻一刻と悪化し、人々が生存の危機に瀕している。
国連児童基金(ユニセフ)のジェームズ・エルダー広報官は5月7日、ジュネーブで行われた国連の定例記者会見で、ガザ地区ラファの子どもたちの置かれている窮状と停戦の必要性について強く訴えた。
ユニセフによると、かつて約25万人が暮らしていたラファには現在、約120万人が避難していると推定されている。その約半数は子どもで、食料や医療、安全な避難先へのアクセスができない状況となっている。
エルダー広報官が会見で語ったガザ地区の状況について、全文で伝える。
「ガザの人々が抱く悪夢が、現実となっている」
(以下、エルダー広報官の会見全文)
あらゆる警鐘。怪我を負った、命を奪われた子どもについてのあらゆる話。傷心と流血を捉えたあらゆる画像や映像。子どもと母親の死者数や破壊された家と病院の数などの、気の遠くなるようなあらゆるデータ。すべてが無視されました。
私たちが最も恐れていたこと、つまりガザの人々が抱く悪夢が、現実となっているようです。権力を握っている人々には、それを阻止する力がある、現実です。
ユニセフをはじめ、すべての人道支援機関が停戦を求め、ラファでの攻撃が行われないよう訴えているのはこのためです。
ラファは子どもたちの街です。ガザの全ての女の子と男の子の半数以上が、ラファで生活しています。
「安全」とは、国際人道法が求める通り、砲撃から免れられること、安全な水や十分な食料が手に入り、避難所や医薬品の提供を受けられることと定義するならば、ガザ地区に安全な行き場はありません。
ラファでは、トイレはほぼ850人に1つしかありません。シャワーについてはその4倍も悪い状況、つまり3500人に1つの割合です。家族が移動を指示されている退避先の区域では、状況はさらに驚くほど劣悪です。
ラファには、現在ガザに残る最大の病院、ヨーロッパ病院があります。その建設費用を負担した欧州連合にちなんでこの名前が付けられました。ガザの保健医療体制が体系的に壊滅的な打撃を受ける中、ラファのヨーロッパ病院は、市民にとって最後の命綱の一つです。
ガザ地区南部は、ガザへの支援物資の大半の搬入口でもあります。軍事攻撃が行われた場合、少なくとも支援物資の輸送が著しく混乱します。もしラファの検問所が長期間閉鎖されれば、ガザの飢饉を回避することは難しくなります。
家族が現状に対処できる力は打ち砕かれています。身体的にも精神的にも、やっとの思いで踏ん張っている状態なのです。
ラファで、愛する人や家を失ったことのない人に会った記憶はありません。ほとんどの人はその両方を奪われています。人々は疲れ切っています。食べるものも不足しています。子どもたちは病気にかかっています。
実際、ラファにいる何十万人もの子どもは、障がいや疾病、脆弱性を抱えており、それが彼らをさらに危険な状態へと追いやっています。そのため、たとえ行き先があったとしても、移動することは一層難しくなっているのです。
ラファでは、切断手術を受けた子どもたちが、病院が満杯のためテントで生活しているのを見ました。これらの子どもたち、そしてさらに多くの子どもたちが、マワシ地区のような場所に行くよう指示されています。マワシのいわゆる「安全地帯」にまつわる、ユニセフの次のような報告があります。家族の夕食のためにパセリを取りに行ったムスタファくんは、マワシで頭を撃たれ、亡くなりました。今、子どもと家族がラファから退避する先となっているマワシの「安全地帯」の中で、です。
先週末にガザで起きたこと、つまり、子どもたちが命を落とし続けていること、戦争当事者からのさらなる攻撃、そして今回の避難通告は、この紛争の当事者が、子どもや民間人の命と保護を完全に無視し続けていることをあらためて露呈させました。
それは変わらなければなりません。今が変わる最後のチャンスです。
支援は途絶えてはなりません。人質は解放されなければなりません。ラファへの侵攻はあってはなりません。そして、子どもたちはもう殺されてはなりません。
私たちは幾度となく主張し、訴えてきましたが、再度ここで述べます。ラファの子どもたちのために。今すぐ停戦が必要なのです。