「黒を身につけてパレスチナへの連帯を示そう」
そんな有志による呼びかけに応え、レインボーカラーが溢れる東京レインボープライド(TRP)で4月20日、黒色の服やパレスチナに連帯を示すバッチなどを身につけた人たちがいた。
イスラエルによるパレスチナ・ガザ地区への攻撃が止まらず、犠牲者が増え続ける中、服装で抗議と連帯の意思を表明した。
TRPには以前、イスラエル大使館が出展したり、イスラエルを支持していることからボイコット運動の対象となっている企業が今年も協賛したりしたため、TRP運営事務局宛には公開質問状が送られていた。
黒色を身につけて意思表示をした人たちに、会場で話を聞いた。
![TRP2024の会場で、黒い服を着て意思表示をした人たち。](https://img.huffingtonpost.com/asset/6623c4942300001a0088eb4e.jpg?cache=OPlyWpmpeT&ops=scalefit_720_noupscale)
TRPの会場で黒色を身につけた人たちは、一般参加者からブースの出展者まで、立場や抱く思いは様々だった。
共通してあったのは、パレスチナへの連帯の思いだ。
「1年で1度、仲間と集まれる場所」だから今年も。でも…
今年は、イスラエル支持の協賛企業の出展などを理由に、TRPへの参加自体を「ボイコット」する人たちもいた。抗議の意味も込め、SNSなどで不参加を表明する人も相次いだ。
それでも、会場は多くの人で溢れ返った。
複雑な気持ちを抱きながら、今年も会場に足を運んだシゲさんは、「Stop Genocide In Gaza(ガザでのジェノサイドを止めろ)」と書かれた缶バッチと、スイカ柄の指輪を身につけた。
赤、白、緑色のスイカはパレスチナの旗と同じ色であることから、パレスチナへの連帯のシンボルとされている。
シゲさんにとってTRPは、「1年に1度、仲間と会える場所」。
遠方から駆けつける人たちもいるため、TRP自体をボイコットするのではなく、会場に足を運び、缶バッチと指輪で意思を示した。
![シゲさんが着用したスイカ柄の指輪と、かばんにつけた「Stop Genocide In Gaza(ガザでのジェノサイドを止めろ)」と書かれた缶バッチ](https://img.huffingtonpost.com/asset/66239989230000392c88eb47.jpg?ops=scalefit_720_noupscale)
黒いワンピースを着て、かばんにスイカや「Free Palestine(パレスチナを解放せよ)」と書かれたバッチを着けて来場したくまきゅーさんは、「SNSでパレスチナの映像を見ていると心が痛む。バッチなど見た目で連帯できれば」と話した。
LGBTQ+の人々が集うTRPは、くまきゅーさんにとって「勇気付けられる場所」だ。だからこそ、今年はレインボーカラーではなく黒色を身にまとった。
![くまきゅーさんが連帯を示すために着用した黒いワンピースと、かばんに付けたパレスチナ連帯を示すバッチ](https://img.huffingtonpost.com/asset/6623c4f62300003700bc428e.jpg?ops=scalefit_720_noupscale)
TRPのイスラエル大使館や協賛企業をめぐる姿勢をめぐっては、NPO法人「東京レインボープライド」宛に公開質問状が送られていた。
それに対しTRPは2024年3月15日に声明を公開。声明では「現在お問い合わせを頂いている特定の企業や大使館からの協賛はございません」としていた。
その回答に対し、SNSで「事実に反する」「アパルトヘイト・ジェノサイドに加担する」などの批判があがり、さらに3月30日にウェブサイト上で見解を発表。
見解では、それらの指摘は「事実に反しており、遺憾にたえません」とし、「TRPは団体としても、日々LGBTQ+の人権課題に取り組んでいるスタッフ一人ひとりもみな心を痛めており、即時停戦を願っています」と綴っていた。
今年のTRPでは、公開質問状が指摘したイスラエル大使館や企業2社は協賛していない。
しかし、世界的に活動家たちがボイコットを呼びかけるBDS(ボイコット、投資撤収、制裁)運動の対象となっている企業のうち複数社は、今年のTRP協賛企業に名を連ねている。
積み上げてきた歴史がありTRPを否定はできない。だからこそ
![LGBTQ+に関する書籍が売られたブースには、パレスチナの旗が掲げられた](https://img.huffingtonpost.com/asset/6623c57b2300008f2388eb50.jpg?ops=scalefit_720_noupscale)
書店などが共同で出展したブース「QPP(Queer Publishers’ Product)」で、クィア・マガジン「OVER」を販売していた、OVER編集長の宇田川しいさんも、黒いTシャツにパレスチナの伝統的な頭巾カフィーヤを巻いた。
TRPの声明についても言及し、ハフポストの取材にこう語った。
「声明は煮え切らず十分なものとはいえませんでしたが、だからといってTRPを否定はできない。僕たちセクシュアルマイノリティが苦労して積み上げてきたものがあり、TRPをボイコットするという考えはありませんでした。
だからこそ、ここで訴えないといけないと思い、今日はレインボーカラーではなく黒色とカフィーヤを身につけました」
ブースでは、パレスチナの旗が掲げられ、パレスチナに連帯を示すステッカーや、虐殺を批判するTシャツも販売された。
「即時停戦」「解放を」手作りのバッチを無料で配る人たちも
![パレスチナへの連帯や即時停戦を求める手作りの缶バッチを配った](https://img.huffingtonpost.com/asset/6623c6dd2300001a0088eb54.jpg?cache=q9icccYwSW&ops=scalefit_720_noupscale)
仲間たちと作ったバッチなど配布するグループもいた。
バッチは全て手弁当でつくっており、より多くの人に興味を持ち手に取ってほしいと、有料での販売ではなく、無料で配布した。
![手作りのバッチ](https://img.huffingtonpost.com/asset/6623c7df230000282d0d35a0.jpg?ops=scalefit_720_noupscale)
黒だけではなく、「ピンクウォッシュ」について抗議するためにピンク色の服を着てきた人たちもいた。
![ピンク色の服を着てピンクウォッシュに抗議した。ピンク色の桶にはピンク色のぬいぐるみが入れられ、この後、水でおもちゃを洗うパフォーマンスをするつもりだと語った。](https://img.huffingtonpost.com/asset/6623c93a2300001a00bc4290.jpg?ops=scalefit_720_noupscale)
ピンクウォッシング(ピンクウォッシュ)とは、「覆い隠す」という意味の動詞「whitewash(ホワイトウォッシュ)」と、同性愛者のシンボルカラーとされる「ピンク」を掛け合わせた造語。人権侵害など不都合な事柄を隠す意図で、同性愛者フレンドリーをアピールすることを指す。
イスラエル政府は海外でも自国の「LGBTフレンドリー」を積極的に広報してきたが、国内でのLGBTQ+の人々への支援は僅かで、ピンクウォッシュにあたると批判を浴びてきた。
ガザ侵攻後の2023年11月にはイスラエル政府が、イスラエル国防軍の兵士が戦車を背景にレインボーフラッグを掲げた写真を、「ガザに掲げられた最初のレインボーフラッグ」というコメントと共にSNSに投稿。批判を浴びていた。
【UPDATE 2024/4/21 20:00】協賛企業についての説明を追記しました。