スポーツ用品大手のナイキが、パリ五輪に出場する陸上アメリカ代表の女性選手向けにデザインしたユニフォームが、過度に露出度が高く性差別的だとして、アスリートやファンから批判を浴びている。
「性差別的」と批判されたユニフォームとは
陸上競技専門サイト「CITIUS MAG」は4月11日、公式SNSに、「パリオリンピックで米国の陸上競技チームが着用する新たなナイキのキットを初公開します」とのコメントとともに、新デザインのユニフォームの写真を投稿した。
男性向けのユニフォームは、タンクトップと太もも丈のショートタイツ。一方、女性向けのものは、脚の付け根の部分が深くカットされたハイレグ仕様のレオタードだった。
SNSでは「男性の視線でデザインされたものだ」「デザイナーチームに女性は一人もいなかったのだろうか?」「これで運動するのが快適だとは思えない」「男性アスリートはパフォーマンスに集中できるのに、女性アスリートは擦れや観客の視線を気にしなければならない」など、批判の声が上がっている。
「男性支配から生まれたもの」元選手も批判
このナイキのユニフォームに対して、元選手や現役アスリートもさまざまな声を上げている。
長距離女子、元米国代表のローレン・フレッシュマン氏は「選手はデリケートな部位が露わにならないか心配することなく競技に集中できるようになるべきだ。このユニフォームが実際に機能的に優れているなら、男性選手たちも着ていると思う」とした上で、「男性支配から生まれたもの」だと批判した。
東京パラリンピックの米国代表、フェミタ・アヤンベク氏は「どう見てもジョーク」とコメントしている。
ナイキの最高イノベーション責任者のジョン・ホーク氏は今回批判を浴びている女性用ボディスーツと男性用ショートパンツ・トップスについて「(選手たちが)選べるオプションの2つに過ぎない」とニューヨークタイムズの取材に語っている。
同社が12日に発表したプレスリリースでは「各キットを作成するにあたり、デザインチームはアスリートの声を拾うとこから始め、あらゆる細部にこだわった」とし、「男女あわせて約50種類のユニークなアイテムと、特定の種目向けに微調整された12種類の競技スタイルが用意されている。アスリートは試合中に快適さを損なうことなく、自分のスタイルや個人の好みに合った服装を選ぶことができる」と説明されている。
ナイキが11日にフランス・パリで行ったユニフォームの発表イベントでは、ブダペスト世界選手権女子100m金メダリストのシャカリ・リチャードソン選手がショートタイツ仕様、東京五輪800m金メダリストのアシング・ムー選手がパンツ仕様のユニフォームをそれぞれ着用して登場した。
棒高跳びの金メダリストであるケイティ・ムーン選手は、「マネキンで示されたものは憂慮すべきもの」であり、それに対する反応は「正当なものである」とする一方で、自分たちには少なくとも約20種類の選択肢があることも強調した。
また「あなたがバンズ(パンツタイプのユニフォーム)やクロップトップを『性差別的だ』などと攻撃するとき(それが私たちの唯一の選択肢であればそうするでしょう)、たとえそれが善意からのものであったとしても、最終的にはそれを着たいとい女性としての私たちの決定を攻撃していることになります」と指摘。
「個人的にはバンズが好き。なぜならとても暑くて汗をかいたとき、生地が体にまとわりつくのを最小限に抑えたいから」とつづり、「重要なのは、私たちには何を着るかの選択権があることだ」と訴えた。
女性アスリートのユニフォームをめぐっては、2021年にノルウェーのビーチハンドボール女子代表チームがビキニボトム着用を義務付ける規則に反発し、ショートパンツで欧州選手権に出場。東京五輪では、ドイツの体操女子チームが「女性アスリートが性的対象として扱われることへの抗議」として、足首までの脚全体を覆う「ユニタード」を着用し、話題となった。