高くそびえる南極の氷の崖っぷちに立ち尽くすペンギンのひなの大群。まだ少しもふもふ感が残るひなたちは意を決したように、はるか下の海に次々と飛び込んでいくーー。
世界的なドキュメンタリーチャンネル「ナショナル・ジオグラフィック」が、前例にないほどの高さからペンギンのひなたちが大ジャンプを決める姿を捉えることに成功した。
ナショナル・ジオグラフィックは2025年のアースデイ(4月22日)にあわせて「Secrets of the Penguins」(ペンギンの知られざる秘密)と題したドキュメンタリーを制作しており、その撮影中だった2024年1月に南極のアトカ湾で今回の光景に出くわしたという。
約4分半に編集された動画が同チャンネルの公式YouTubeに投稿された。ドローンを使って撮影されたもので、巨大な棚氷が映し出されるところから始まる。棚氷の上にはよちよちと歩くコウテイペンギンのヒナたち。もふもふした羽毛が残っていて、幼さが伝わってくる。
数百羽はいそうだ。目的地は決まっていますとでもいうかのように、隊列を組んで棚氷の崖沿いを進んでいく。
ある崖っぷちのところで止まると、ヒナたちは恐る恐るという感じで崖下をのぞき込む。撮影者のバーティー・グレゴリーさんによると、ペンギンたちがいるところから海面までは15メートルほどある。建物にすると5階に相当する高さだ。
グレゴリーさんは「コウテイペンギンが海氷から海に飛び込むところは見かけるが、それは高くても1メートルほど」と話し、目の前に広がる光景が信じられない様子だ。
崖下をのぞき込んでいた勇気ある1羽が、崖を駆け下りた。背中を反らせ、空中で小さな翼を羽ばたかせるようにしながら、海に向かってぐんぐん落ちていった。大きな水しぶきをあげて大ジャンプを成功させた。
元気に海中を泳ぎ回る様子を見て安心したのか、仲間のヒナたちも次々に飛び込んでいく。
コウテイペンギンは通常、最終的にとけてなくなる海氷の上で巣作りをする。ところが近年では、棚氷で営巣するペンギンの群れが見受けられるという。ナショナル・ジオグラフィックは、気候変動の影響で海氷がとける時期が早まってしまっているためという仮説が科学者たちから出ているとしている。
「数羽の気まぐれな親ペンギンにヒナたちがついて行ってしまい、道を間違えた可能性がある」とするアトカ湾でコウテイペンギンの観察を行っているイギリスの専門家の見立ても伝えている。