農林水産省などが、「麹」(こうじ)と「紅麹(べにこうじ)」の違いを説明するQ&Aをサイトに掲載した。
味噌やしょうゆに使われる麹(こうじ)は、日本食にはなくてはならない原料だが、小林製薬の紅麹原料を使用したサプリの健康被害が広がっていることを受けて、ネット上には両者を混同した誤情報や、偽情報も出てきているためだ。
Q&Aは農水省と厚生労働省、消費者庁の3省庁が連携して作成した。健康被害の発生を受けて回収が進められているのは小林製薬のサプリメントの3製品で、ほかの会社が製造した「ベニコウジ色素」や「麹」とは「異なるものです」と明言。どのように異なるのかを具体的に説明している。
Q&Aによると、ベニコウジ色素は、小林製薬の紅麹原料とは「製法及び使用目的が違う」。小林製薬の紅麹原料は「米に紅麹菌を加えて培養、加熱、粉砕等をして製品としたもの」だが、他社が製造するベニコウジ色素は「紅麹菌の培養液から抽出して得られた色素を主成分としたもの」だという。
さらに、ベニコウジ色素は「食品添加物として食品衛生法に基づく規格基準が定められている」とし、基準に適合したものが販売されているとしている。
厚労省によると、製造には営業許可が必要で、規格基準を満たしているかは各地の保健所が監視・指導しているという。
麹については、「紅麹とは名前が似ていますが、異なる種類の生物(カビ)を利用して作られたものであり、違うもの」と説明する。
具体的には、麹はアスペルギルス属の菌、紅麹はモナスクス属の菌を穀類に増殖させたものだという。
農水省の担当者は「紅麹は主に中国などで使われてきた歴史がある。日本で古来から味噌やしょうゆ、酒などに使われてきた麹とは別物です」と補足する。
今回、Q&Aを作成した理由については「麹を使う企業に対しても消費者からの問い合わせが相次いでいると報道されていて、業界団体の中にはホームページで違いを説明しているところもある。誤解に基づく影響が広がらないように、対策をとる必要があると考えた」と話した。
NHKの報道によると、ネット上では紅麹に関する誤った情報や、偽の動画も広がっているという。
業界団体の日本醤油技術センターは3月29日、ウェブサイトに「しょうゆ製造に用いる麹菌について」というお知らせを出した。「紅麹に使用される菌と、日本のしょうゆ製造に用いられる菌はまったく異なる種の微生物です」と説明。「麹は、日本酒やしょうゆ、みそ、みりん、甘酒などに使われている菌で、これまで健康被害が報告された例はない」という専門家のコメントも紹介している。
日本食品添加物協会も、ベニコウジ色素は食品添加物公定書で定義された着色料で、紅麹原料とは「大きく異なる」ものであることや、「これまでに健康危害が発生したことはない」ことを説明する文書をサイトに掲載した。