これまで何度もテレビで放送されてきましたが、度々話題になるのが、宅急便の仕事を始めた主人公のキキが、女の子にニシンのパイを届けるシーンです。
宮崎駿監督は何を考えてこのシーンを作ったのか、本人の言葉を紹介します。
どんなシーン?「あたしこのパイきらいなのよね」の一言
キキに仕事の依頼をした老婦人は、孫娘のパーティーのためにニシンのパイを作ろうとしますが、オーブンの調子が悪くて上手くいきません。
そこでキキは慣れた手つきで薪を使って焼くのを手伝い、焼きたてのニシンのパイを孫娘の元に届けます。
大雨にさらされ、濡れないように気遣いながら運ぶキキ。しかし玄関先で、孫娘は「おばあちゃんからまたニシンのパイが届いたの」と家の中に声をかけ、受取証にサインしながら「あたしこのパイきらいなのよね」とつっけんどんに一言。キキは傷ついたような表情を見せます。
その後キキは自分の「仕事」について悩み、さらには、風邪を引いて寝込み、ほうきで飛べなくなるというスランプにも陥ります。
宮崎駿さんの考えは?「世間にはよくある事」
孫娘の「あたしこのパイきらいなのよね」という一言に、衝撃を受けたという人もいるかもしれません。
宮崎さんは、このシーンにどんな意図を込めたのでしょうか。
金曜ロードショーの公式SNSは、2022年4月の同作放送時に、作品に関わる豆知識を発信しました。このニシンのパイのシーンについても、「ショックをうけた方も多いのではないでしょうか」と言及し、孫娘の喋り方を「気に入っている」という宮崎さんの言葉を紹介しました。
「僕はあのパーティーの女の子が出てきた時のしゃべり方が気に入ってますけどね。あれは嘘をついていない、正直な言い方ですよ。本当にいやなんですよ、要らないっていうのに、またおばあちゃんが料理を送ってきて、みたいな。ああいう事は世間にはよくある事でしょ。
それはあの場合、キキにとってはショッキングで、すごくダメージになることかもしれないけど、そうやって呑み下していかなければいけないことも、この世の中にはいっぱいあるわけですから 」
「子供の頃は嫌な人と認識してたけど…」
この宮崎さんの言葉には多くの反響があり、2022年当時、ニシンパイのシーンをめぐってSNSに投稿されたコメントの中には、以下のような考えもありました。
「子供の頃は単純に嫌な人と認識してたけど、大人になるとなんとなく事情を察してしまう」
「孫が感じてるありがた迷惑に近い気持ちもすごく分かる」
「文句言いながらも受け取ってるし、キキのことも特に悪く言ってないし、いい子」
「孫娘も大人になったら考え方が変わるかもしれない。ニシンのパイを懐かしく思い出す日がくるかも」
(この記事は2022年4月30日に配信した記事を再編集しています)