日本弁護士連合会(日弁連)は3月14日、明治神宮外苑再開発の工事停止を事業者に要請するよう、東京都に求める会長声明を発表した。
日弁連が小林元治会長名の声明で問題視しているのは、事業者が開発の事前調査や予測、評価などをまとめた「環境影響評価書」だ。
神宮外苑の再開発では、神宮球場と秩父宮ラグビー場の場所を入れ替えて建て替え、高層ビルが建設される。その過程で多くの樹木が伐採や移植され、神宮外苑は大きく変わる。
しかし、日弁連はこの環境影響評価書について「情報不足・調査手法の誤り及び科学的でない記載がある」と主張している。
日弁連がその根拠として挙げているのが、ユネスコの諮問機関である日本イコモス国内委員会が指摘した、複数の問題点だ。
例えば、事業者が環境影響評価書で活力度「A(健全)」としたいちょうの一部について、現地調査をしたイコモスは「枯れ始めている」と指摘してきた。
また、植生図に記載された植物の群落数が、実際とは異なるとも述べている。
しかし、これらの問題を検討する審議会にイコモスは出席できないまま、会は「評価書には調査の予測評価に重大な変更が生じるような、誤りは虚偽はなかった」と結論づけた。
イコモスの指摘以外でも、日弁連が問題だとしているのは、評価書に記載された樹木の伐採・移植数だ。
事業者が東京都に提出した環境影響評価書では、伐採は971本、移植70本とされているものの、この数字は高中木(3メートル以上の樹木)のみで、低木も含めた樹木の伐採・移植の数は書かれていない。
事業者が新宿区に提出した許可申請では、低木も含めた樹木の伐採・移植の数は3000本を超えており、日弁連は現在の数では「事業全体の環境影響評価が示されたとはいえない」としている。
日弁連はこういった点から「評価書は客観的・科学的であるとは認められない」と声明で主張。
東京都に、▽環境影響評価書を再提出するよう、事業者に要求すること▽高度な知見実績のある専門家による審議や調査の実施▽評価書が客観的かつ科学的であることがわかるまで、事業者に対して工事停止を指導・監督することを求めている。
声明について、小池知事は3月15日の定例会見で「都としては、環境アセスメントを条例、答申に従って、適切に推進、手続を進めてきた」と述べた。
日弁連は声明について「以前から神宮外苑再開発の問題について日弁連内の委員会等で検討を重ねた上で、3月14日の公表に至った」とハフポスト日本版の取材に述べた。
今後、東京都に声明文の申し入れなどを行うかどうかについては、検討中だという。
神宮外苑は100年前に、市民の献金や献木によって作られた歴史ある公園だ。日弁連は「適切な環境影響評価を経なければ、自然環境・歴史的文化的環境が大きく損なわれる可能性がある」と警鐘を鳴らしている。
神宮外苑再開発では、環境アセスメントの世界的な学会「国際影響評価学会(IAIA)」日本支部も2023年、環境アセスの進め方に問題があるとして、東京都の小池知事に工事の停止を命じることなどを勧告している。