「徳島新聞」を発行する一般社団法人「徳島新聞社」(徳島市)の労働組合「全徳島新聞労働組合」(全徳島労組)は3月14日、全面ストライキを実施した。
全徳島労組(組合員総数約120人)の全面ストライキは、1995年3月の春闘以来29年ぶり。
経営側に、分社化・人件費削減に関する計画を全面撤回するよう求めていたが、十分な回答が得られなかったという。
経緯を振り返る
全徳島労組によると、経営側は2023年11月の事前協議の場で、24年4月に編集部門を分社化することや、今後は現在の社団での新規採用を行わないこと、25年春以降に採用する職員の給与水準を現在の65%程度にすることなどを提案。
総務部門についても別会社化する構想があり、全徳島労組はストライキ権を立ててこれまで3回の団体交渉に臨んだが、経営側は「給与水準を65%から75%にする」と言うにとどめ、計画の撤回には応じなかった。
この計画について、経営側は「地域報道の持続可能性のため」「徳島をニュース砂漠にしないため」と理由を説明。「このままいけば15年ほどで新聞発行ができなくなる」とも主張していた。
しかし、「15年ほどで新聞発行ができなくなる」という点については、団体交渉の中で「収益・費用面でなんの努力もしなければ」という前提があることが判明した。
日本新聞労働組合連合(新聞労連)の調査でも、徳島新聞社の内部留保は潤沢で、自己資本比率は新聞業界の平均より高く、「日本の新聞社の中では優秀」(新聞労連関係者)だったことがわかったという。
3月13日に会見した全徳島労組の阿部司委員長は、経営側の計画について、「逆に若手の離職や採用難につながる」と指摘。「若手が会社の未来を考えて声を上げている現状を重く受け止めてほしい」と述べていた。
「地域報道の灯火を守ろう」
新聞労連によると、3月14日は午後2時から2時間の間、全組合員が業務から離脱。徳島市内のホテルで集会を行った後、組合員約70人が徳島新聞社までデモ行進を行った。
「地域報道の灯火(ともしび)を守ろう」や「次世代搾取許さない」といったカードを掲げ、経営側の計画の撤回を求めたという。
新聞労連と全徳島労組は、3月17日午後2時から徳島市の「あわぎんホール」で「地域報道を考える集会」を開き、これまでの経緯を説明するなどとしている。