第96回米アカデミー賞で助演男優賞を受賞した俳優のロバート・ダウニー・Jr.さんが、壇上の振る舞いで「オスカーの悪役」と非難されている。
3月10日(現地時間)にロサンゼルスで開かれたアカデミー賞授賞式では、演技部門で、過去の5人の受賞者がステージ上で今年の勝者を発表するという伝統が復活した。
助演男優賞のプレゼンターを務めたのは、2023年に「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」で同賞を受賞したキー・ホイ・クァンさんだ。
授賞式の映像では、クァンさんが興奮した様子でダウニーさんの名前を発表し、会場が盛り上がる様子が映っている。
しかしステージに上がったダウニーさんは、クァンさんとほとんど目を合わせずにオスカー像を受け取っている。
クァンさんは相手の注意を引くような態度を見せたものの、ダウニーさんはティム・ロビンスさんやサム・ロックウェルさんとだけ握手やグータッチを交わして、スピーチのためにステージ前方へと向かった。
このダウニーさんの態度は、ソーシャルメディアで多くの人に批判された。
「目も合わさず、片手で奪い取っている」「なぜあんなに、露骨に無視するのか」「賞を引き継ぐのは俳優にとって重要なことだが、(クァンさんは)5人の中で一番無視された」「(ダウニーさんは)今年のアカデミー賞の真の悪役だ」などの声が投稿されている。
中には「緊張していたのでは」「圧倒されたのだろう」などダウニーさんを擁護する声もあり、受賞後の記者会見では、ふたりがハグする写真も撮影された。
しかし、ダウニーさんの態度は、1年前クァンさんが助演男優賞を受賞した時の振る舞いとは対照的だった。
2023年に同賞を受賞した時、名前を呼ばれたクァンさんはステージに上がり、プレゼンターを務めたアリアナ・デボーズさんとトロイ・コッツァーさんを抱きしめて感謝を伝えた。
クァンさんは1980年代に『グーニーズ』や『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』に出演し、子役として活躍した。
しかし、アジア人の配役が少ないハリウッドで俳優として仕事を続けるのが難しく、スタントコーディネーターやアシスタントディレクターとして働いていた。
「ジーナ・デイビス・メディアにおけるジェンダー研究所」の2021年の調査では、ハリウッドで働くAPI(アジア太平洋諸島系)の80.9%がマイクロアグレッション、55.6%が露骨な人種差別、72.5%が名ばかりの差別撤廃を経験したと回答した。
クァンさんは2023年にアカデミー賞を受賞する1カ月前に、「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」のウェイモンド・ワン役を得る前に次から次へとオーディションを受けたものの、まったく採用してもらえなかったと語っている。
「私は一つも仕事を得ることができませんでした。一つも電話はかかってこなかった。誰にも望まれなかったんです」
クァンさんはこの時、「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」でアカデミー賞にノミネートされたことに「とても感謝している」とも述べている。
「みんなが私のことを忘れてしまったと思っていました。でも、映画が公開されてから、とても多くのポジティブで優しい反応がありました」
ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。