法律上同性パートナーとの結婚を認めるよう求め、性的マイノリティ当事者が国を訴えている裁判は、3月14日に東京2次訴訟の判決が言い渡されます。
「結婚の自由をすべての人に訴訟」と呼ばれるこの裁判は、全国5カ所、6つの地裁・高裁で行われており、東京2次は最後の地裁判決になります。
裁判で原告は「法律上同性カップルの結婚が認められないのは憲法違反だ」と訴えています。
判決を前に、東京2次訴訟の注目ポイントをまとめました。
1: 違憲判決が出るかどうか
一連の裁判の一番のポイントは「違憲判決が出るかどうか」です。
特に東京2次訴訟は最後の地裁判決になるため、先行裁判を踏まえてどのような判断が示されるかが注目されます。
これまでの5つの地裁判決のうち、4つで違憲が言い渡されており、その中で次のような判断も示されました。
「結婚して法的に家族となり国にその関係を公証(公に証明)されることは、法律上同性カップルにとっても重要な人格的利益」(名古屋地裁、2023年5月)
「同性カップルの生活実態は異性カップルと何も変わらず、法的保護を受けるに値する」(名古屋地裁、2023年5月)
「法律上の同性カップルが結婚制度を利用できるようになっても、社会に支障が生じるとは想定し難い」(名古屋地裁、2023年5月)
「同性カップルが法的な家族になることは、社会全体の安定につながる」(東京地裁、2022年11月)
また、この1年だけでも、社会の中で結婚の平等や性的マイノリティの権利擁護を後押しする動きが急速に進んでいます。
2023年6月にはLGBT理解増進法が成立し、パートナーシップ制度を導入した自治体も増え続けています。2023年8月に国立社会保障・人口問題研究所が発表した調査では、同性婚に賛成すると回答した人は75.6%で、2018年と比べて約6ポイント上昇しました。
こういった先行訴訟の判断や、社会の変化が、東京2次訴訟の判決にどのように反映されるのか注目されます。
2:憲法24条1項違反が言い渡されるか
これまで4つの違憲判決では、法律上同性カップルの結婚が認められないのは、憲法14条1項や憲法24条2項に違反していると判断されました。
裁判所が違憲としたのは「家族となるための制度が何もないこと」や「結婚制度がもたらす法的効果の一部すらも享受できないこと」です。
その一方で、法律上同性カップルが結婚制度を利用するための法律がないことが、婚姻の自由を保障する憲法24条1項違反だと判断した裁判所はありません。
もし東京2次訴訟で憲法24条1項に違反と判断されれば、裁判所が「憲法は、法律上同性カップルの結婚を保障している」と判断した初めての判決になります。
3:「性自認」での差別が認定されるか
先行する5つの裁判はいずれもトランスジェンダーの原告はいないため、裁判では「法律上の同性カップルの結婚が認められないのは、性的指向に基づく差別だ」という主張を展開してきました。
違憲判決の中でも、同性カップルが結婚制度を利用できないのは「性的指向」に基づく差別と認定されています。
しかし、東京2次訴訟の原告には異性カップルもいます。トランスジェンダー男性の一橋穂さんは法律上の性別が女性であるため、女性のパートナーである武田八重さんとの結婚が認められません。
東京2次訴訟では「性的指向」だけではなく「性自認」に基づく差別でもあると訴えており、この点を裁判所がどう判断するかもポイントです。
4:婚姻制度を同等に利用できるようにすべきと判断されるか
これまでに4つの違憲判決が言い渡されているものの、そのうち一部では「婚姻以外の方法で違憲状態を解消できる」という判断も示されました(国レベルのパートナーシップ制度を作るなど)。
しかし原告は「わざわざ別制度を作れば、異性カップルよりも劣った存在であるかのように扱うことになり、個人の尊厳に反する」と訴えています。
東京2次訴訟の判決で「法律上同性カップルも、異性カップルと同じように婚姻制度を利用できるようにすべき」という判断が示されるかどうかも重要な点です。
5:はっきり違憲と判断するか
4つの違憲判決のうち、東京1次と福岡では「違憲」ではなく「違憲状態」という言葉が使われました。
これは、法律上の同性カップルが家族になるための法律が何もない現状は違憲であるけれども、今ある民法や戸籍法が憲法に違反するわけではないという判断です。
その中で、今ある結婚制度とは別に、国レベルのパートナーシップ制度などでも代替できるのではないかという考えも示されています。
しかし前述したように、原告は別制度を作るのは、差別的だと訴えています。
裁判で原告は「結婚が認められないのは違憲」という司法判断を求めており、今回の判決では「違憲状態」ではなく、はっきりと「違憲」と断言されるかどうかも注目です。
6:損害賠償を認めるか
原告は、結婚が認められない違憲状態が長年放置されていたことで精神的被害を受けたとして、1人あたり100万円の損害賠償を求めています。
しかし、これまでの判決ではいずれも損害賠償までは認められていません。
もし東京2次訴訟で損害賠償が認められれば、一連の裁判で初めてとなります。
ただし、原告の裁判の目的は「違憲」という司法判断を勝ち取ることであり、賠償請求が認められなくても違憲判断が出れば、実質的な勝訴だとしています。