東京都渋谷区のファッション専門学校「文化服装学院」の学生たちが手掛けた、社会課題をアップサイクルファッションで表現した作品が、3月11日までSHIBUYA109渋谷店で公開されている。
企画は、同校ファッション流通科1年生が社会課題の背景や、それらが原因で起こる問題を深堀りし、アップサイクルファッションを通じて、未来に向けてのメッセージを発信することが目的。学生320人が52チームに分かれ、各チームで考えた社会課題をテーマに、古着店「西海岸」を運営する日本ファイバーから提供された古着550点をアップサイクルして作品を製作したという。
1月下旬に同校で公開プレゼンテーションが行われ、テーマ発見・分析力、アップサイクル度、ヴィジュアルクリエーション力など5項目を基準に審査。選考で選ばれた上位3チームを含め14チームの作品を、学生たちのメッセージやコンセプトとともに紹介している。
1位に選ばれた作品は「若者の自殺」をテーマに、暗い色の古着を細かく刻んだ布片で生地を再構築し、積み重なる不安や悩みを表現したドレス。同様に明るい色の布を刻んで頭と腕をモチーフにした装飾を取り付け、“バックハグ”を表現し、「孤独に感じていても必ずそばに守ってくれる人がいる」とのメッセージが込められている。
2位の作品は「SNSでの誹謗中傷」がテーマ。正面は赤いバラとラインストーンで華やかな装飾を施した一方、ライターで焦がしたビスチェや、世界各国の言語で落書きしたスカートなど、背中側で密かに傷ついた心を表している。3位は「男女差別」をテーマに、男女両方を象徴するカラーやモチーフを各所に取り入れ、「性別に関係なく自分の好きなことが自由にできる未来を作りたい」との想いを込めた。
「ブラック校則」を取り上げた作品は、デニムを使ったコルセットや、ベロア生地で仕立てたセーラーカラーなどをコーディネート。女子高生のセーラー服をなぞりながら、独創的な装飾を取り入れ、「学校という場でもっと自分の個性を表現したい」という心の訴えを表現している。
また、「若者の戦争に対する関心度の低さ」をテーマにした作品は、真っ白なワンピースをライターで燃やして焦がすことで、美しい街並みが戦争によって悲惨な景観に変わる様子を表現した。平和を願う気持ちを込め、ウクライナの民族衣装である「花冠」をヘアアクセサリーとして使用している。
ほかに、ペットの殺処分、若年層の引きこもり、ドラッグ使用による影響などのテーマを取り上げた作品が展示されている。
同校のファッション流通専門過程専任講師・高橋優さんは「今回の取り組みを通じてZ世代も社会課題にしっかり向き合い、リサーチなどを通じて現状や背景などへの理解を深めることができた。アップサイクルしたからこそ、また違ったクリエーションができたと感じている」と話す。
学生による作品群は、2階の「COCO SPOT」(3月4日まで)と3〜5階のエレベーターホールに展示されている。