冬場は住宅火災が多い季節ですが、火災で亡くなる人は年間1,452人もいます(消防庁調べ:2022年)。その中で、放火自殺者等を除く死者は1,195人です。この数は、過去10年間では千人をずっと超え続けています。
火災に巻き込まれると、とっさの判断が生死を分けます。しかし、パニックに陥るとなかなか正しい判断ができない人も少なくありません。そこで今回は、万一住宅などの建物火災に巻き込まれたときに、ついやってしまいがちなNGの対処法について、ご紹介しましょう。
NG対処1/調理中の油に引火したら水をかける
コンロで調理中にフライパンなどの油に引火したら、とても慌ててしまいます。このとき、決して水をかけてはいけません。火がついた油は水をかけると飛び散って、まるで爆発したように大きく広がるのです。
これはガソリン、灯油、軽油などの油でも同じで、消火器を使う必要があります。
その際、必ず油火災用の消火器を使ってください。消火器は2012年から新しいラベル表示に変わりました。白(普通火災用)、黄色(油火災用)、青(電気火災用)のマークが付いているので、油火災は黄色のマークが付いた消火器を使わなければなりません。
NG対処2/電源プラグやコンセントからの出火ですぐに水をかける
電化製品や電源プラグ、コンセント、電気コードなどから出火したとき、すぐに水をかけるのもNGです。電気を遮断しないまま水をかけると、感電する可能性があります。必ず青い丸の中にイナズマの絵がついた電気火災用の消火器を使ってください。
電気火災は、まず電気を遮断することが大切です。ブレーカーを落とし、コンセントからプラグを抜きますが、このとき火傷しないように気をつけてください。
万一消火器がない場合、電気を遮断した後なら水をかけても大丈夫です。消火した場合でも、安全のために119番(消防署)へ通報してください。
NG対処3/電子レンジ火災ですぐに扉を開ける
さつま芋や肉まん類は、長時間加熱すると爆発して燃え始めることがあります。また、アルミ蒸着包装された冷凍食品も、決められた時間を超えて加熱し続けると、爆発して火を噴くことがあります。
万一火災になっても、慌てて電子レンジの扉を開けて、燃えている物を取り出そうとしてはいけません。着ている服に着火して死亡した例があります。また、周囲の可燃物に火が燃え移る可能性もあります。
電子レンジの火災時は、まず電源を遮断することが必要です。次に扉を閉めたまま、慌てずに庫内の様子を見てください。火が消えなければ、扉を閉めたまま消火器の準備をします。消火した場合でも、安全のために119番(消防署)へ通報してください。
対処4/ビルやマンションの火災時にエレベーターで避難
エレベーターを備えているような上層階のある建物で火災が起こった場合、エレベーターで避難してはいけません。燃えている階で扉が開いたり、停電でエレベーターに閉じ込められたりする可能性があるのでエレベーターの使用は厳禁です。避難するときは、必ず階段を使いましょう。
そのため、階段にたくさん物を置いていてはいけません。避難の障害になるだけでなく、火が燃え広がる原因になります。また、消火活動の妨げになるので、「階段には物を置かない」を徹底しましょう。
NG対処5/天井まで燃えている状態で消火を試みる
火事が起こったら小さな火のうちに消さなければなりませんが、小さな火とは天井まで届いていない火のことです。
一般に、初期消火が可能なのは、天井に火が回るまでとされ、火が天井に届いたら、消火をやめて避難しなければなりません。あとは、現場に到着する消防隊にまかせましょう。
木造家屋での火事は、出火してから2分前後で壁板、ふすま、障子、カーテンなどの立ち上がり面に燃え移ります。天井に燃え移るまでの時間は、約2分30秒と言われます。初期消火は必要ですが、深追いは危険です。天井を明確な分岐点にしましょう。
火事で気をつけたい5つのNG。理解していただけたでしょうか。日頃から「火の用心」を心掛けることはもちろんですが、万一火事に巻き込まれても慌てずに、人命を優先に正しく行動できるようにしましょう。
参考資料
東京消防庁「火災に注意! 電子レンジを安全に使用しましょう!」、同「旧規格消火器の交換について」、同「火災を予防するために~令和2年中神田消防署管内の火災原因~」、同「自衛消防訓練の大切さ」、総務省消防庁「身近な危険物の火災、その消火方法」、同「たしかめくんとボウサイちゃんのこんろ火災防止大作戦」、同「電気器具の安全な取扱い」、同「火災からの避難」、同「初期消火」、木曽広域連合「電気火災を防ぎましょう!」、舞鶴市消防本部「初期消火について」、川越地区消防組合「初期消火」
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