第96回アカデミー賞の授賞式が、日本時間3月11日(月)に行われる。日本で見る方法や、ノミネート作品、受賞予想などをまとめた。
【記事の主な内容】
・日本で見る方法は?
・作品賞にノミネートされているのは?
・作品賞の本命は「オッペンハイマー」?
・サプライズが起きるかどうか…鍵は「非アメリカ映画」
・「バービー」の冷遇の裏で起きていること
・日本からは「君たちはどう生きるか」など3作品がノミネート
▼日本で見る方法は?
日本では、WOWOWがアカデミー賞授賞式の模様を独占生中継。
3月11日(月)午前7時から同時通訳付きで、WOWOWプライムおよびWOWOWオンデマンドで放送される。
アメリカ・ロサンゼルスのドルビー・シアターより生中継され、司会はコメディアンのジミー・キンメルが務める。
▼最高峰「作品賞」の受賞候補は全10作品
最注目の作品賞、ノミネートされたのは、以下の10作品。
「アメリカン・フィクション」
「落下の解剖学」
「バービー」
「ザ・ホールドオーヴァーズ」
「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」
「マエストロ:その音楽と愛と」
「オッペンハイマー」
「パスト ライブス/再会」
「哀れなるものたち」
「関心領域」
▼作品賞は「オッペンハイマー」が最有力視
ハリウッドで「最高の栄誉」とされる作品賞は、クリストファー・ノーラン監督の「オッペンハイマー」(日本公開は3月29日)が最有力視されている。SAG賞(全米映画俳優組合賞)などの前哨戦を制して勢いづいており、作品賞や監督賞など全部で何部門を受賞するかにも注目が集まっている。
本作は、第二次世界大戦で、原子爆弾を開発した物理学者J・ロバート・オッペンハイマーの伝記映画。ヒット作でメディアや批評家の評価も高く、これまで「アカデミー賞で冷遇されている」とも言われてきたノーラン監督を推す声も多い。
一方で、大量破壊兵器である原爆を作った科学者に迫ったストーリーで、原爆が投下された広島と長崎の被害などについては直接的に描かれていない点は、見逃してはいけないだろう。ハフポストでは、シカゴのデュポール大学で「原爆論説」「核の時代」の講義を担当する宮本ゆき教授にインタビューを行い、本作がどうアメリカで受け止められているのか、そしてなぜ原爆や核兵器が肯定的に語られ続けてきたのか、考えた。
▼サプライズが起きるなら「落下の解剖学」か「関心領域」?
作品賞で、「オッペンハイマー」の受賞予想を覆し、サプライズを起こす可能性のある作品として、「落下の解剖学」と「関心領域」の2作品があがることも多い。カンヌ国際映画祭の最高賞「パルムドール」を受賞したのが前者で、その次の「グランプリ」を受賞したのが後者。両作ともアメリカの作品ではない「非アメリカ映画」だ。
「落下の解剖学」はフランス映画で、視覚障がいのある少年以外は誰も居合わせていなかった雪山の山荘で起きた転落事故をめぐる裁判を描き、ミステリーとして高く評価されている。メガホンをとったジュスティーヌ・トリエは監督賞の候補であり、脚本賞にもノミネートされている。
一方の「関心領域」は、製作国はイギリスで、劇中の言語はドイツ語。第2次世界大戦中、ナチス・ドイツがユダヤ人を虐殺したアウシュビッツ収容所強制収容所と壁一枚を隔てた屋敷に住む、収容所の所長とその家族の暮らしを描く。
ちなみに、この2作品に出演しているのがザンドラ・ヒュラーで、「落下の解剖学」から主演女優賞にノミネートされている。
▼バービーの冷遇の裏で起きていること。主演女優賞には先住民族にルーツのある俳優が初ノミネート
今回のアカデミー賞は、これら外国映画を含めたバラエティに富んだラインナップが揃った。
一方で、「バービー」が作品賞でノミネートされるも、主演のマーゴット・ロビーと監督のグレタ・ガーウィグがそれぞれ主演女優賞と監督賞の候補入りを逃したことは大きなニュースになった。これを受け、助演男優賞にノミネートされているライアン・ゴズリングは声明を出した。
「バービー」以外でも、候補入りはしなかったが高く評価されている監督・俳優として、米韓合作の「パスト ライブス/再会」のセリーヌ・ソン監督や、主演のグレタ・リーもいる。
主演女優賞で有力視されているのは、「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」のリリー・グラッドストーンと、「哀れなるものたち」のエマ・ストーンの2人。
グラッドストーンは、初めて名前を聞くという人も多いかもしれない。モンタナ州ブラックフット族の出身で、これまで「ライフ・ゴーズ・オン」など、主にインディーズ映画に出演してきた。アメリカの先住民族にルーツのある俳優が主演女優賞にノミネートされるのは今回が初めてだ。
候補入りについてグラッドストーンは、DEADLINEのインタビューで、「とても名誉に思う」とした上で、「なぜアメリカの先住民族が初めて選ばれるのにこんなにも時間がかかったのか」「こういった部門にノミネートされる作品のほとんどは先住民の土地で撮影されたものなのに」と疑問を呈した。「キラーズ〜」では、作品に深みをもたらす上で欠かせない役を演じており、今後注目の俳優になるだろう。
なお、演技部門でも「オッペンハイマー」の存在感は強い。助演男優賞では同作出演のロバート・ダウニー・Jr.が3度目のノミネートにして初受賞になるか、期待を集めている。
▼日本からは「君たちはどう生きるか」など3作品がノミネート
近年、日本映画もアカデミー賞にノミネートされることが増えており、2022年には、濱口竜介監督の「ドライブ・マイ・カー」が作品賞にノミネートされ日本作品で初の快挙となった。
今年は、宮﨑駿監督の「君たちはどう生きるか」が長編アニメーション賞、山崎貴監督の「ゴジラ-1.0」が視覚効果賞、ドイツのヴィム・ヴェンダースが監督を務め、役所広司が主演の「PERFECT DAYS」は日本代表作品として国際長編映画賞に、それぞれノミネートされている。
特にジブリ映画は 「千と千尋の神隠し」が長編アニメーション賞を受賞するなどアメリカでも人気が高い。過去には「ハウルの動く城」と「風立ちぬ」もノミネートされた実績があるため、今回の「君たちはどう生きるか」も受賞の行方が注視されている。