世界初、鼻の骨格から肌の将来を予測!CES2024で資生堂が見せたビューティーテックによるウェルビーイングとは

今、美容業界で急速なDX「ビューティーテック」が進んでいる。化粧品メーカーの資生堂は、研究データとテクノロジーを組み合わせた新たなビューティーテックを発表した。150年を超える歴史と技術の融合による資生堂独自のアプローチが目指す未来を取材した。
CES2024で資生堂が展示した、鼻の骨格から肌の将来を予測するアプリ
CES2024で資生堂が展示した、鼻の骨格から肌の将来を予測するアプリ
Jun Kitada / ABCドリームベンチャーズ

世界で広がるビューティーテック

化粧品メーカーがデジタルを活用するという流れは、世界で広がっている。2024年1月、米国で開催されたテクノロジーの見本市「CES」で、「ビューティーテック」という言葉が話題となった。象徴的だったのは世界最大の化粧品メーカーのロレアルが、美容企業として初めてキーノート(基調講演)に登壇したことだ。

CES2024キーノートに登壇したロレアルのニコラ・イエロニムスCEO
CES2024キーノートに登壇したロレアルのニコラ・イエロニムスCEO
CES2024キーノートビデオ

ロレアルは、ユーザがLLM(大規模言語モデル)をベースとした生成AIとの会話を通じて、自分の体の状態に最適な化粧品を知ることができるビューティーソリューション「Beauty Genius」を発表するなど、テクノロジーにより、ひとりひとりに合ったビューティーソリューションを提供するというメッセージを打ち出した。これまで店頭で行ってきた顧客とのコミュニケーションをデジタル化することで、よりパーソナライズされたソリューションへ進化させる。美容業界におけるDX、いわゆるビューティーテックは、新型コロナウィルス感染症収束後、外出機会が増えていく中で広がっていくことが予測されている。

「体内、心、未来」を見える化する。資生堂が世界へ打ち出した新たな取り組み

株式会社資生堂ブランド価値開発研究所の中西裕子さん
株式会社資生堂ブランド価値開発研究所の中西裕子さん
Jun Kitada / ABCドリームベンチャーズ

「リアルでもデジタルでも、それぞれのお客様に合わせたソリューションをリコメンデーションすることで、長期的に関係を築き、より良い人生を目指すビューティーウェルネスの実現が可能になってくると考えています」

そう語るのは資生堂ブランド価値開発研究所の中西裕子さん。

CESに初出展した資生堂は、表面的な肌のケアだけでなく、「体内、心、未来」という通常目に見えない要素「インナービューティー」に着目したソリューションを2つ発表した。目指しているのは、同社が培ってきた研究とデジタル技術を駆使して、顧客ひとりひとりに合わせた美の追求をサポートするサービスだ。

専用アプリでスマホから簡単に鼻骨格の測定ができる
専用アプリでスマホから簡単に鼻骨格の測定ができる
Jun Kitada / ABCドリームベンチャーズ

一つ目は、鼻骨格を測定・分析することで将来的に表れやすいしわやたるみなどの肌悩みと肌内部の状態を予測できるツール

このツールは、資生堂の研究者たちが、顔面構造に興味を抱いたことから始まった。

胎児の鼻が心臓よりも先に形成されることに着目。研究を進めると、肌と関係性の強い毛細血管密度と、鼻の形が関係していることが判明したのだという。

それに、資生堂が100年以上蓄積してきた研究知見を融合させ、鼻の骨格から肌の将来を予測することができるツールを開発した。

しわ、たるみなどの肌の特徴が5段階で評価される
しわ、たるみなどの肌の特徴が5段階で評価される
Jun Kitada / ABCドリームベンチャーズ

このツールによって、ひとりひとりに最適なマッサージ法や身体の内側からのケアなどが可能となる。今後は、店頭などで導入し、個々の身体特性や生活習慣を考慮しながら、肌悩みが現れる前に対処する「予防」型のケアの実現を目指す。

AR技術とAI分析を駆使したスキンケアの新時代

正しいスキンケア方法を習得できる「Beauty AR Navigation」
正しいスキンケア方法を習得できる「Beauty AR Navigation」
Jun Kitada / ABCドリームベンチャーズ

資生堂がCES会場で披露したもう1つの研究が、AR技術とAI分析を組み合わせた新しいスキンケア方法だ。

専用アプリ「Beauty AR Navigation」は、長年培ってきた美容法や感性科学領域の知見と、AIを用いた微細な手の動きを検出する動作認識技術を活用、店頭に行かなくても自宅で簡単に正しいスキンケア方法を習得することができる。

リアルタイムで直感的に理解できるようになっており、ユーザーは画面に表示された専門技術者の「お手本」の手の動きと音声に合わせて自身の手を動かすだけだ。

ナビゲーション終了後は、ユーザーの手の方向や動きを評価する機能がある。これによって長期的な美容法取得のモチベーションを上げることが期待できるという。また、ARを用いて自分の顔で体験できるので、自分ごとになって理解が深まり、満足度も高くなるという。

テクノロジーの根底にある理念「人を美しくする」

1934年に美容法を伝授する「ミス・シセイドウ」が誕生
1934年に美容法を伝授する「ミス・シセイドウ」が誕生
株式会社資生堂

資生堂がこうしたデジタルソリューションへ取り組んだのには訳がある。

元々、資生堂は、1872年の創業以来、美容部員(パーソナルビューティーパートナー)による顧客にあった美容法の伝授に力を入れてきた。

店頭で顧客に向き合い、商品の購買に至るまでの情報収集やカウンセリング、化粧品の使用法の習得などを提供することで、個々の魅力を最大限に生かすためのサポートを提供してきた。

資生堂のパーソナルビューティーパートナー
資生堂のパーソナルビューティーパートナー
Jun Kitada / ABCドリームベンチャーズ

しかし、コロナ禍を経て、非接触のコミュニケーションが必要とされるようになった。オンライン上でも、これまでと変わらないカスタマイズされた美容提案をすることで、リアルとデジタルの境界をなくす狙いがあったのだ。

「Beauty AR Navigation」はバーチャルでも正しい美容法を学ぶことができる
「Beauty AR Navigation」はバーチャルでも正しい美容法を学ぶことができる
Jun Kitada / ABCドリームベンチャーズ

ブランド価値開発研究所の中西裕子さんは、「リアルでもバーチャルでも、お客様ひとりひとりが持つ美しさを発見し実現するために、今後もお客様それぞれの美しさに寄り添っていきたいなと思っています」と、資生堂の理念を将来へも引き継いでいくと話す。

今回、展示された「鼻骨格測定」は、インナービューティーブランド「SHISEIDO BEAUTY WELLNESS」の一環として、サイトや各店舗で2月1日より体験できる。また、「AR美容ナビゲーション」は、年内に海外でローンチ予定となっている。

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