アメリカ・ジョージア州の検視局は2月6日、分娩中に頭部が切断されて赤ちゃんが亡くなったのは殺人にあたると発表した。赤ちゃんの両親は、病院や医師による隠蔽があったと訴えていた。
亡くなった赤ちゃんの両親、ジェシカ・ロスさんとトレヴィオン・イザイア・テイラーさんは2023年7月、同州リバーデールにある医療機関で出産に臨んだ。産婦人科医のトレイシー・セント・ジュリアン氏が適切な分娩の手順を踏まなかったことが赤ちゃんの死につながったと非難していた。
同州クレイトン郡検視局は、セント・ジュリアン医師が意図的に赤ちゃんの命を奪ったものではないとしながらも、殺人と認定した。
同局の発表によると、赤ちゃんの頭は産道から出たものの、肩が引っかかってしまう肩甲難産の状態だった。ほかにも妊娠によって発症した糖尿病や早期破水も赤ちゃんの死につながったとしている。
同局は、今回の調査結果はあくまでも死亡したことについてのみ調べたもので、警察による捜査は続いているとしている。刑事告発はなされていない。
セント・ジュリアン医師の代理人弁護士は7日、ハフポストの取材に「赤ちゃんは頭が切断されるより前に亡くなっていた」と主張。「州職員による解剖では死因は特定されず、出産時にはすでに命がなかった」としている。
医師側の弁護士は「セント・ジュリアン医師は母子ともに命の危険にさらされる『産科救急』に直面していた。肩甲難産のために赤ちゃんの命が助からないとわかった時点で、母体の命を救うことを優先することにし、救命できた」とも主張している。
赤ちゃんを亡くした両親による訴状には、ロスさんが破水し、医療機関に入院した日の様子が細かく記載されている。
ロスさんは赤ちゃんを押し出そうと3時間にわたっていきみ続けたが、うまくいかなかったという。赤ちゃんが産道に引っかかった時に、セント・ジュリアン医師が位置を変えるべく適切な処置を行わなかったことや、分娩時に過度な力を加えたことも非難している。このほかにも、過度な力によって赤ちゃんの頭部が切断されたとも指摘。その状態にいたるまでセント・ジュリアン医師が帝王切開に踏み切らなかったと主張している。
頭部は経膣分娩されたが、胴体から下の部分は帝王切開によって母体から出された。
ロスさん家族の代理人弁護士は病院スタッフが亡くなった赤ちゃんを両親に触らせることも抱かせることもせず、頭部が切断されていることを隠そうとしたと、分娩の翌月に広報担当を通して発表した。
代理人のロデリック・エドモンド弁護士は記者会見で、病院スタッフが赤ちゃんを毛布できつくくるみ、毛布の上に頭部を乗せて体とつながっているように見せたと述べた。
訴状によると、ロスさんたちが赤ちゃんの頭部が切断されていたことに気づいたのは退院後だった。さらに、医療提供側から赤ちゃんを解剖するのではなく、火葬するように勧められたとしている。
訴状に対し、セント・ジュリアン医師の弁護士は「産科救急の事態を解決するにあたって求められる基準は常に満たしていた」と反論している。医師は赤ちゃんの頭部を産道に戻そうといろんな方法を試してみたが、どの方法でも赤ちゃんの肩が引っかかって動かなかったとも述べている。
セント・ジュリアン医師が強く引っ張ったために頭部が胴体部分から切り離されてしまったという指摘について、医師の弁護士は「とんでもない言いがかりだ」と反論している。
赤ちゃんの体と頭部の外傷については「母体の命を救うためにセント・ジュリアン医師が帝王切開で胎児を取り出そうとした時のもので、死後にできたものだ」とし、「このことに反するいかなる示唆も虚偽であり、今回の悲劇をセンセーショナルにすることが目的だ。実際に起きたことについて世間や審員になるかもしれない人たちを誤解させるものだ」と主張している。
続けて、医師が頭部切断についてロスさんらから隠そうとしたり、隠蔽しようとしたりしたことはないと強調している。セント・ジュリアン医師は分娩後すぐにロスさんの家族に会おうとしたが、家族によってロスさんとの面会を拒まれたとしている。
ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。