NHKの稲葉延雄会長は1月17日の定例記者会見で、2023年放送の性に関する特番でお笑いコンビ・ダウンタウンの松本人志さんを起用したことについて、「こういう事態になることが当時予想できなかったのは事実」などと釈明した。松本さんの出演を巡っては、過去の発言から「性」をテーマとする番組への起用に放送前から批判や不安の声が上がっていた。
松本さんは、女性に対する性加害の疑惑が週刊誌で報じられたことを受け、活動休止を発表している。
経緯は?
松本さんが出演したのは、2023年10月17日放送の特別番組『松本人志と世界LOVEジャーナル』。愛とセックスにまつわる世界の最新トレンドを紹介するほか、セルフプレジャーに関するコーナーもあった。番組のサイトでは、「性にまつわる世界のさまざまな話題や悩みについて、松本人志さんと多様な立場の出演者たちが、楽しくまじめに語り合います」と説明している。
松本さんのほか、ラッパーの呂布カルマさん、アダルトビデオへの出演経験がある作家の鈴木涼美さん、お笑いコンビ・ラランドのサーヤさんも出演した。
番組情報が発表された後、松本さんを含む一部の出演者の人選に対して疑問や批判の声がネット上で広がった。
松本さんは2017年、自身がコメンテーターを務めていた番組『ワイドナショー』(フジテレビ系)で、男性俳優が未成年の女性と飲酒や不適切な関係を持った問題を巡り「もうそろそろ、未成年の女性の方も取り締まれるような罰則をつくるべきだ」との持論を述べていた。
さらに、2019年には同じ番組内で、NGT48のメンバーへの暴行事件について取り上げた際、タレントの指原莉乃さんに対し「お得意のからだを使って何とかすれば」と発言。「常軌を逸したセクハラ」などと批判を浴びた。
起用が疑問視されたのは、松本さんだけではない。呂布カルマさんは2023年6月、修学旅行中に男子高校生が女子生徒に対し盗撮や覗き行為をしたとして処分を受けたとの報道に言及し、「のぞきに参加しなかった生徒の方がマトモじゃない」などとXで投稿。性加害を容認・助長する内容だとして物議を醸していた。
こうした松本さんや呂布さんの過去の発言や発信を踏まえ、性をテーマとした番組への起用の見直しを求める声が上がっていた。
NHK、起用の理由を説明せず「総合的に判断」
ハフポスト日本版は番組の放送前、NHKに対し、松本さんらの起用の理由と、番組出演に対して批判の声が上がっていることへの受け止めを尋ねた。
NHKは「出演者の選定については、自主的な編集判断のもと、その都度、総合的に判断しています」とだけ述べ、起用の理由を明確に説明しなかった。
稲葉会長は1月17日の記者会見で、同番組に対して中央放送番組審議会からも意見が寄せられていたことを明かした。
「(審議会からは)『注意深く番組を作ってほしい』というお話だったと理解しています。それに対して、われわれも注意深く番組を作っていきますと答え、現にそういう風にやってきた」などと説明。その上で「こういう事態になるとは当時、予想できなかったのは事実」と釈明した。