福岡県議会は、スポーツ施設や公共交通機関において、性的な意図を持って撮影する行為について「性暴力」であると定義する県性暴力根絶条例の改正案を公表した。アスリートや客室乗務員、児童・生徒などへの盗撮を想定している。同様の内容を定めた条例は全国的にも珍しいとみられる。
2023年7月施行の「性的姿態撮影等処罰法」では、盗撮を規制する「撮影罪」が新設され、身体の性的な部位や身に着けた下着、わいせつな行為を正当な理由なく、ひそかに撮影することを禁じた。
一方、ユニフォーム姿の女性アスリートの性的部位を狙って撮影する、いわゆる「アスリート盗撮」については、「ユニフォームの上からの撮影は性的な意図の線引きが困難」として、規制に盛り込まれなかった。
県性暴力根絶条例は2019年、議員提案で成立。今回の改正案では、スポーツ施設や公共交通機関など不特定多数が利用する場所において、性的な意図を持って同意なく撮影する行為は「着衣の有無及び撮影者の認識に関わらず性暴力である」と明記している。
その上で、「撮影画像の拡散、二次利用などの新たな性暴力によって被撮影者の精神的被害がさらに甚大なものとなる」と指摘。こうした撮影行為を未然に防ぐため、県や、撮影が行われるおそれのある施設関係者に対し、広報や啓発などの措置を求めている。
スポーツの現場では近年、女性アスリートの性的部位を強調して撮影する盗撮行為が問題視されている。改正案では処罰規定は設けられていないものの、性的な意図を持ってユニフォームや制服姿を撮ることを含めて「性暴力」と規定することで、こうした行為の抑止力になることが期待される。
また、改正案では、性暴力の定義について“被害者の同意がなく行われる性的な行為”であると明確にした。わいせつ目的を隠して子どもに近寄り、手なずける「性的グルーミング」も性犯罪であると定義した。
県議会は改正案について、1月24日までパブリックコメントを実施。その後、早ければ2月定例会に改正案を提出する方針という。