スウェーデンと日本の「架け橋」に。人気番組でスターと対談、LiLiCoが母国で芸能活動を始める理由

好評連載 第44回 LiLiCoの「もっとホンネで話そう。私たちのこと」
LiLiCoさん
Yuko Kawashima
LiLiCoさん

世間を騒がすイシューからプライベートの話題まで、LiLiCoさんがホンネで語り尽くす本連載。今回は、出身地スウェーデンと日本の「架け橋」としての活動をテーマに話を聞きました。

2023年9月に、スウェーデンのヒット曲を日本語に訳詞した「これを愛と呼ぶのか?」を松崎しげるさんとのデュエットでリリースしたLiLiCoさん。スウェーデンのテレビ番組にも出演し、2024年はスウェーデンで芸能活動を始めたいと考えているそう。デュエット曲の発表に繋がった「奇跡の出会い」や、母国で芸能活動をする理由について、LiLiCoさんが語ります。

30年越しの夢。松崎しげるさんとスウェーデンのヒット曲をカバー

2023年9月6日に、松崎しげるさんとのデュエットソング「これを愛と呼ぶのか?」をリリースしました。この曲は、スウェーデンの国民的歌手であるラッセ・ホルムさんとモニカ・トーネルさんが1986年にデュエットした「E’ de’ det här du kallar kärlek」のカバー。16歳で初めて聴いて以来、ずっと私のパワーソングでした。

しげるさんと「これを愛と呼ぶのか?」をデュエットしたいと夢見たのは、今から30年以上前のこと。来日して下積みをしていた20歳頃、テレビでしげるさんが「愛のメモリー」を歌っている姿を観て、「この素晴らしい低音のヴォーカリストと『E’ de’ det här du kallar kärlek』を歌いたい!」と思ったのです。

「愛のメモリー」は、私の母がアイロンがけをするときにかけていたオムニバス版のレコードに入っていた曲で、私にとってはスウェーデン時代を思い出させる懐かしい曲でもありました。

それから30年以上が経ち、私はしげるさんと初対面を果たします。そして、たまたまラジオの収録で訪れていたJ-WAVEでしげるさんを見かけ、「あなたと歌いたいデュエット曲があります。がんばって実現するから待ってて!」と伝えることができたんです。

Yuko Kawashima

その後、2020年には(松崎しげるさんが主催する音楽フェス)「黒フェス」に純烈が呼ばれ、夫に先を越されるという悔しい思いもしました(笑)。ただ、そのときしげるさんは、小田井(夫である元純烈の小田井涼平さん)に「純烈もいいけど、君の奥さんと歌いたいんだ」と言ってくれたそう。

ようやく夢が叶ったのは、2022年5月に放送された「SOUL SONG SHOW~今届けたい魂の熱唱~」(フジテレビ系)という音楽特番でした。猛スピードで日本語詞を書きましたが、日本語で作詞をするのが初めてなので苦労しました。 

その後は音源も録ることになりましたが、元の曲と歌詞をのせる符割りが変わったので、レコーディングでは、歌唱のディレクションもさせてもらいました。しげるさんが「最高のディレクターだ。気持ちよく歌えた!」と言いながらスタジオから出てきたときは、とてもうれしかったですね。

奇跡の出会いで配信リリースも実現

特番でしげるさんとデュエットすることが決まると、この曲をリリースしたいという気持ちがいっそう高まりました。ただ、そのためには元の楽曲の権利を持っているラッセ・ホルムさんの許可が必要です。

そこで、家族につてがないか聞いたり、国民の情報を検索できるウェブページ(スウェーデンでは国民の個人情報が国に管理されており、民間にも有料で公開される)で電話番号を調べてもらったりしたのですが、なかなか連絡を取ることができませんでした。

転機になったのは、6月の「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」。私は映画祭のアンバサダーを務めているのですが、スウェーデンの老人介護施設のドキュメンタリー「さようならまでの時間/LIVE TILL I DIE」の監督の一人であるオーサ・エクマンさんと出会いました。

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彼女とは、初めて会った日の夜にたまたま食事に行ったら、考え方や生い立ちが似ていて意気投合。日本滞在中の3日間、毎日夕食をともにして語り合い、その中で私は「E’ de’ det här du kallar kärlek」をカバーしたいという話をしました。

すると、彼女が帰国してから1週間ほどして、私のもとに「ラッセ・ホルムと連絡が取れたから、曲の使用許諾申請書を送るね」というメールが届いたのです。確かに彼女は「私も連絡先は知らないけど、夫は人探しが得意だから話してみるね」と言っていたけれど、まさか本当に探してくれるなんて…! 

申請書を提出してから1週間ほどで無事に使用許諾が下り、それをしげるさんの事務所に報告したら、「実はうまくいくんじゃないかなと思って、アレンジャーに発注して音源も作っていた」と返事が! 奇跡が奇跡を呼び、あっという間に楽曲配信が実現しました。

スウェーデンでも反響。朝のワイドショーで共演叶う

「これを愛と呼ぶのか?」は、スウェーデンでも反響がありました。配信後にスウェーデンの大手新聞社のウェブサイトにリリース情報が掲載されたほか、スウェーデンの朝の人気ワイドショーから出演オファーがあり、リモートでラッセ・ホルムさんと共演することになったのです。

放送では私たちの曲だけでなく、2023年の黒フェスでのライブ映像も流してもらえました。対談したラッセ・ホルムさんは楽曲をめちゃくちゃ褒めてくれて、「スウェーデンに来たら会おうね」と約束もしました。

本番中は生放送でWi-Fiが切れてしまったり、スウェーデン語がうまくしゃべれなかったりしたらどうしよう…と緊張もしていましたが、終了後には番組スタッフから「スタジオで拍手が起こったほど素晴らしかった! 次にスウェーデンに来たら生で出演してほしい」との連絡が!

Yuko Kawashima

長年「王様のブランチ」(TBS系)やラジオ「ALL GOOD FRIDAY」(J-WAVE)で生放送を経験してきたおかげだなと感じました。

ほかの番組のスタッフからも出演してほしいとオファーをもらえたので、2024年はスウェーデンでテレビ番組に出て、リアクションを確認してみようと考えています。 

放送後、驚いたのは、7歳の時までいた団地の前の家に住んでいた友達が、連絡先を探し出してメッセージをくれたこと。46年ぶりに彼女とつながりが持ててうれしかったですね。

日本とスウェーデンの架け橋に

Yuko Kawashima

以前は、スウェーデンで芸能活動をしようと考えたことはありませんでした。スウェーデンを「芸能人LiLiCo」ではなく、「普通の人間」でいられる場所にしておきたいと思っていたからです。 

その気持ちが変わったのは、コロナ禍でした。スウェーデンの家族と会いづらくなり、初めて父親に「LiLiCo」として活躍する姿を見せたいという気持ちになったのです。スウェーデンでは、街中でプライベートな時間を過ごしている芸能人に声をかけるような風潮はなく、プライバシーを尊重する文化が根付いていることも、背中を押しました。

実はコロナ禍にもスウェーデンのテレビシリーズに出演する予定はありましたが、日本でコロナの流行がまだ収まっておらず中止に。ただ、共演するはずだったスウェーデンのシェフとはご縁ができ、いつか同じ企画を実現しようと話しています。

彼の紹介で、この1月にもテレビに出たんですよ。スウェーデンに、日本で言う桑田佳祐さんのような70年代からのヒットメーカーがいるのですが、彼が娘さんと世界を回る旅番組で、日本での案内役として出演したんです。父は彼の大ファンなので、先日、彼と私のツーショット写真を送ったらすごく興奮したみたい!

Yuko Kawashima

芸能活動をするだけでなく、これからは日本とスウェーデンの架け橋になりたいですね。

私が子どもの頃は日本にもルーツがあることで馬鹿にされることが多かったけれど、今はスウェーデンで日本語を話していると羨望のまなざしを向けられるほどになりました。

そんな今、日本の文化をスウェーデンに、スウェーデンの文化を日本にもっともっと広めたい。日本で作られる便利な物は、スウェーデンでもバズると思います。日本の歌手でも英語でうまく歌える人、話せる人がいたら、ヒットするかもしれない。すごく楽しみです。

スウェーデンから日本に持って行きたいのは、気持ちの持ち方かな。特に女性に、自分の気持ちや意見を強く持つことを広めたい。

2023年にラッセ・ホルムさんのヒット曲がミュージカルになったので、その日本語版が上演されることになったときには私も出演できたらいいな。来年2025年の1月には「スウェーデンでスターになりました!」という報告ができるようにがんばります! 

Yuko Kawashima

(取材・文=有馬ゆえ、写真=川しまゆうこ、編集=若田悠希)