スタジオジブリ作品『千と千尋の神隠し』が1月5日、金曜ロードショー(日本テレビ系)で放送される。同作品を観たことがある人の中には、主人公・千尋の父親がブヨブヨとした謎の丸い物をがっついて食べるシーンを記憶している人も多いかもしれない。
筋のようなものが描かれたぷるんぷるんのこの不思議な食べ物は、一体何なのか?
作品の原画を担当した米林宏昌さんが自身のX(旧Twitter)で2020年、その「正体」のヒントとなりそうな情報を投稿をしたところ、大きな反響を呼んだ。
米林さんは投稿で、「お父さんが食べてるブヨブヨした食べ物はシーラカンスの胃袋と絵コンテに書いてありました」と明かしていた。
その後、米林さんは、「どうやら絵コンテには書いてないようです…」と情報を修正。「宮崎監督が描かれたレイアウトに書いてあったのかなあ?ちなみに原画よりは3倍くらいプルンプルンに修正された」と振り返った。
米林さんの投稿は、あのブヨブヨの正体を疑問に感じていた人たちの間で瞬く間に広がった。大きな話題になったことに対し、米林さんも驚いた様子。続く投稿ではこんなコメントを残した。
「こんなに話題になるとは… 確たる証拠もないしただの僕の記憶でしかないですよー 『シーラカンスの胃袋という説も…?!』 くらいに考えといてもらった方がロマンがあっていいでしょう? やはりあれは餅巾着ではなくて何かわからない変なものの方が良いですよね^ ^」
米林さんは、2022年に金曜ロードショーで『千と千尋の神隠し』が放送された際にも、「おととしにツイートして計らずも盛り上がってしまった『シーラカンスの胃袋づめ』僕の記憶だけにあって確認が取れてないので公式さんに確認とってほしいなぁ…こんな変なワード、勝手に妄想しないはずなんだけど。。」と投稿していた。
「まるでトロトロの小羊の胃袋のよう」
絵コンテには何と書かれているのか?
『スタジオジブリ絵コンテ全集13 千と千尋の神隠し』(宮崎駿著、徳間書店、2001年)には、千尋のお父さんが謎の食べ物を頬張るシーンの絵コンテで、「皿から肉汁のしたたる料理をとりあげ 大口におしこめ 少しもやすまず 猛然と喰う」と描写されている。ただ、ブヨブヨの正体に関する説明は見当たらない。
ジブリ作品のレイアウトを集めた『スタジオジブリ・レイアウト展 : 高畑・宮崎アニメの秘密がわかる。』(スタジオジブリ編、日本テレビ放送網発行、2008年)には、ブヨブヨの食べ物の横に、こんな説明書きが添えられている。
「中に汁気たっぷりの具がつまっている 外の皮はやわらかく まるでトロトロの小羊の胃袋のよう」
もしかすると、これは小羊の胃袋なのか...?
ジブリに聞いてみた
あのブヨブヨは、米林さんが記憶するように「シーラカンスの胃袋」なのか。それとも全く違う食材でできているのだろうか。
スタジオジブリに尋ねたところ、同社の広報担当者は、千尋のお父さんとお母さんが食べているのは「神さまの食べ物」だと説明した。その上で、三鷹の森ジブリ美術館で開催された企画展「食べるを描く。」では、このシーンに関して次のようなキャプションがついていると紹介した。
「(千尋のお父さんが)箸を使って汁気たっぷりのぶるんとした正体不明の食べ物をつまみ上げ、顔を近づけながら一口で口に入れてしまう芝居は、劇中でも印象的なものの一つになっています」
やはり公式の見解としては「正体不明」のままのようだ。
あなたには、あのブヨブヨが何に見えるだろうか。