実際に、今季これまでで最も強いレベルの寒気が南下するため大雪に警戒が必要なのは間違いなく、局地的には数十年に一度クラスの記録的な積雪や吹雪になる可能性も否定は出来ません。
ただし、テレビなどでこのように表現される頻度は「10年に一度」とは限りません。センセーショナルな見出しだけに流されず、気象情報を正しく読み取れるよう解説します。
何を根拠に「10年に一度」とされているか
テレビなどで報じられている「10年に一度」という予想は、気象庁の「早期天候情報」が元になっていることが多いようです。この情報は、6日先以降の5日間降雪量(または気温)の予測について、ある基準に達したときに発表されます。
その基準は「その地域・時期としては10年に1度程度しか起きないような顕著に多い降雪量(顕著な高温/低温)となる可能性が30%以上と予想された場合」となっています。ややこしいですが、少しかみ砕いてみます。
「10年に1度程度」は、あらかじめ計算された“平年値”に用いられている過去30年間の統計をもとに、その期間の3位以内(上位10%=10年に1度程度)に相当するような予測であるということを示しています。「可能性が30%以上」は確率予報と呼ばれるもので、その基準に達する可能性がやや高まっていると読み取ることができます。
そしてポイントとなるのは「その地域・時期としては」という部分です。つまり、真冬であればよくあることでもこの時期としては珍しい、という場合にも発表される親切設計というわけです。
総合するとこの情報の本来の意味は、「(12月下旬の○○地域としては)10年に一度の降雪量(になる可能性がやや高まっている)」という限定付きの予測になりますので、限定部分を省略してしまうとそれは誤った情報伝達になっていると言わざるをえません。
なお、夏場には「50年に一度の大雨になっている」などの情報を耳にしたことがあるかと思いますが、こちらも何度も聞く理由は「その地域にとって」50年に一度の記録的なものだったからということになります。ただしこちらは通年の記録ですので、時期を限定している早期天候情報よりもいっそう珍しいものと考えて差し支えありません。
この時期としては強い寒気 地域によっては記録的な可能性も
「テレビでは何度も“10年に一度”と聞くな…」と思っていらっしゃった皆さんも、何故だかご理解は頂けたでしょうか。このように表現される頻度は10年に一度だけではないのです。
一方で、対象になっている地域では、この時期としては珍しい寒気に襲われる可能性が高まっていることに違いはありません。その気象情報が誰に対して、どういう意図で出されているのかをしっかりと理解した上で、適切な行動をとることが大切です。
また、先述のようにこの情報が出るのは数日前までですので、直前になるとテレビなどで見かける頻度も減ってきたかと思います。かわりに「(今季これまでで)最強寒波」などの表現を使っているところもあれば、表現を弱くしているところまで様々です。センセーショナルな見出しだけにとらわれず、冷静に気象情報を読み解くことも、防災・減災の助けとなります。
【関連記事】
・富良野では−24.4℃で今季全国最低気温 全国的に寒い一日に
・神戸や奈良で初雪を観測 鹿児島・桜島では初冠雪
・23日にかけ真冬並みの寒気が南下し大雪に 西日本も積雪のおそれ
・週間天気予報 週末にかけ寒波の影響続く 年末は平年並
・今日12月21日(木)の天気予報 日本海側中心に大雪警戒 西日本も積雪