「仮放免者の5人に1人が路上生活を経験」と調査結果。逼迫する支援の現場

国連の人権に関する委員会も2022年、仮放免者に必要な支援をすることや、収入を得るための活動をする機会をつくるよう検討することを日本政府に求めている。
記者会見を開く支援団体。ビッグイシュー基金の共同代表の稲葉剛さん(左)は、仮放免者は「究極の社会的排除の状況に置かれている人たち」だと訴えた
記者会見を開く支援団体。ビッグイシュー基金の共同代表の稲葉剛さん(左)は、仮放免者は「究極の社会的排除の状況に置かれている人たち」だと訴えた
Machi Kunizaki

在留資格がなく入管施設に収容された後、病気などの様々な事情で一時的に収容を解かれている「仮放免者」たちの暮らしが困窮している。

民間団体の調査で、回答した仮放免者のうち5人に1人が路上生活を経験したことがあり、半数近くが家賃を滞納していることが分かった

仮放免者は就労を禁止され、住民登録ができないため健康保険の加入も認められないなど、生活する上で様々な制限を受けている。

国連の自由権規約委員会は2022年11月の勧告で、仮放免者が置かれた不安定な生活状況への懸念を表明。日本政府に対し、仮放免者に必要な支援をすることや、収入を得るための活動をする機会をつくることを検討するよう求めている。

「支援現場はもう限界」。3つの支援団体が12月19日、仮放免者など非正規滞在の外国人の居住支援を求めて、要望書を国と東京都に提出した。

「尊厳を持って生きられない」

調査は8〜12月、仮放免中の当事者を対象に実施。支援団体などを通じて配布し、146件の回答を得た。回答者のうち85%が難民認定の申請者で、3割が未成年の子どものいる世帯だった。

家賃滞納の有無を尋ねる質問に「あり」と答えたのは46%。家賃の支払い方法は「親戚親族・友人からもらう」「借金」「支援者・支援団体からもらう」の順で多かった。

住居の確保が「とても大変」または「大変」と答えたのは7割を占めた。路上生活の経験があると答えた人は22%に上った。

生活困窮者の相談・支援に取り組む「つくろい東京ファンド」の大澤優真さんによると、現在路上生活をしている人は回答者に含まれないため、さらに高い割合の仮放免者が路上生活を強いられている可能性があると指摘する。

アンケートには、

「公園やコンビニでトイレを利用し、顔を洗っていた。冬は寒いからコンビニで本を見たり歩き回ったりしていた」(40代男性)

「家賃や生活費を払えない時は、友人に支援してもらい、払っています。そして、教会で寝ています。友人の支援なしで生きていけないのが本当に恥ずかしいです」(30代男性)

といった訴えも寄せられた。

この日、「北関東医療相談会」「ビッグイシュー基金」「つくろい東京ファンド」の3団体が連名で、岸田文雄首相などに要望書を提出した。

具体的には、仮放免者らの住まい確保に関して以下の点を要望した。

▽在留資格の有無や条件に関わらず、外国人が確実に「住宅確保要配慮者居住支援法人につながれるよう、都道府県への周知を徹底すること

▽仮放免者や在留資格の期間が短い外国人が、公営住宅に入居できるようにすること

▽非正規滞在者を含む外国人に対し、ウクライナ避難民並みの居住支援をすること

要望書の提出後に開いた記者会見で、大澤さんは「仮放免の人々は働くことを認められず、人としての尊厳を持って生きていける状態ではありません。住まいを失いそうだという相談が日々寄せられ、支援現場は限界を迎えています」と、逼迫する状況を訴えた。

「反貧困ネットワーク」の事務局長の瀬戸大作さんは、公園での生活を余儀なくされている妊娠中の仮放免者のケースを挙げ、「国に帰れなくて日本に逃れてきた人々が野宿を強いられている状況を、行政が放置し続けていることに憤りを覚える」と述べた。

兵庫県尼崎市は、支援団体と連携し、外国人や家庭内暴力の被害者、生活困窮者といった自力で住宅を借りることが難しい人を対象に、市営住宅の空室を低額で提供する取り組みを始めている

今回の要望では、尼崎市の事例をモデルケースとして、全国の公営住宅でも同様の活用を認めるよう求めた。

調査結果の報告書全文は、「つくろい東京ファンド」のホームページに掲載されている

(取材・執筆=國﨑万智@machiruda0702

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