冬の訪れとともに、旬を迎えたさまざまな品種のりんごが、店頭に目立つ時季になりました。
おいしいりんごですが、買いすぎたり、もらったりしてすぐには食べきれず、貯蔵・保存しておかなければならなくなったという人も少なくないようです。
りんごを家庭で保存する際の方法などについて、青森県りんご対策協議会の里村桃子さんに伺いました。
品種によって貯蔵性が違う!?
比較的なじみの深い「ふじ」「サンふじ」「王林」などに加えて、近年は「シナノゴールド」や「星の金貨」など、さまざまな品種のりんごが販売されています。
りんごは品種によって、日持ちが可能な期間に違いがあるのでしょうか。
「りんごは果物の中では日持ちするものだといえますが、品種によって『日持ちしないもの』と『比較的日持ちしやすいもの』に分けられます。全般的に『収穫時期が早い品種はあまり日持ちがしない』、『収穫時期が遅い品種は比較的日持ちするものが多い』といえるでしょう」(里村さん)
具体的に品種による収穫時期の違いを教えて頂けますか。
「最も収穫が早い品種は極早生(ごくわせ)種といって8月に収穫されます。『恋空』などがこれにあたります。
続いて早生(わせ)種の『つがる』、中生(ちゅうせい)種の『早生ふじ』、晩生(ばんせい)種の『ふじ』『サンふじ』の順で収穫されます。イメージとしては極早生→早生→中生→晩生の順で貯蔵性は高まっていくと考えていただいていいと思います。
極早生や早生のりんごはこの時季もう出回っていませんが、貯蔵性が低いので、来年以降は購入したらなるべく早めに食べきってしまうことをおすすめします。
中生種の『早生ふじ』よりも晩生種の『サンふじ』のほうが貯蔵性は高く、同じ晩生種でもさらに貯蔵性が高いのが『ふじ』に袋をかけて栽培した『有袋(ゆうたい)ふじ』です。有袋ふじは、店頭では『ふじ』の名称で販売されていることが多いようです。
青森県での収穫時期は、有袋ふじが10月末から、サンふじが11月上旬からです。有袋ふじの中で翌年春以降の出荷を予定しているものは、秋の収穫後に鮮度を保持できる専用の冷蔵庫に保管され、翌年8月まで出荷がなされています」(里村さん)
より長持ちさせるための、家庭での保存法
産地では専用の冷蔵庫で長期保存を行っているとのことですが、家庭でもすぐに食べないりんごは冷蔵庫で保存したほうがいいのでしょうか。
「りんごは暑さが苦手な果物ですから、寒い季節でも暖房が入った室内に置くよりも、冷蔵庫の野菜室などに入れておいたほうがいいでしょう。
冷蔵庫に入れるときにはポリ袋に入れてしっかりと口を閉じるか、ラップで包んで密封してから保存してください」(里村さん)
密封するのは、どういう理由からですか。
「一つは、りんごの水分が蒸発するのを防ぐためです。もう一つは、りんごが発散するエチレンガスの影響が一緒に冷蔵庫に収められているほかの野菜や果物に及ぶのを防ぐためです。
エチレンガスは植物にとっての成長ホルモンのような性質をもっていますので、ほかの野菜や果物の成熟を必要以上に早めてしまうのです。
逆に、未熟な硬いキウイなどに対しては、りんごを一緒に入れておくと追熟が進むという効果があります」(里村さん)
箱買いをしたり貰ったりして、どうしても長い間りんごを保存しなければならない場合があります。
「通常より長めに保存しておく必要が生じたら、りんごを1個ずつ新聞紙やキッチンペーパーなどに包んだうえでポリ袋などに入れると、より日持ちするようになります。
面倒な場合は、せめてラップで包んでから冷蔵庫で保管しましょう。
また、りんごは暑さに加えて温度変化に弱い果物ですので、購入したりんごを一度冷蔵庫に入れたら、食べるタイミングまでは冷蔵庫から出し入れしないことをおすすめします。
冷蔵庫から取り出し、一日暖かい室内に置いたままにして、再び冷蔵庫に戻すなどすると、せっかくの品質が劣化してしまいます」(里村さん)
冷やすと甘くなる?
りんごは冷やして食べると、おいしさが増すような印象があります。
「りんごに含まれる糖では、『フルクトース』とも呼ばれる『果糖』の割合が最も多くなっています。フルクトースの結晶の型は、低温で甘みが増すという性質を持っていますので、りんごを冷やして食べると甘みが強く感じられるのです」(里村さん)
先に里村さんのお話にもあったように、りんごは品種によって日持ちのしないものもあります。冷蔵庫やポリ袋に入れて密封したものでも、なるべく早めに食べるように心がけましょう。
さまざまな色や大きさのりんごが店頭に並ぶこの時季、好みの品種を選んで旬のおいしさを味わってみてください。
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