トランスジェンダー男性などにとって、生理は「性別違和(出生児に割り当てられた身体の性別と自認する性別が一致していないという持続する強い感覚)」を悪化させる可能性がある。
調査によると、トランス男性の93%が生理に関する性別違和を感じたことがあるという。また、性別違和を極度に強く感じる場合、メンタルヘルスに悪影響を及ぼし、不安やうつ病を引き起こす可能性があるとNHS(英国民保健サービス)は述べている。
しかし、トランスジェンダーのヘルスケアに対するこの方法に違和感を持っている人たちがいる。
なぜ男性用のタンポンを作ったのか?
Vuokkosetはこの取り組みについて、性差がある生理ケアやヘルスケア界の包括性の話題にしてもらうことが目的だと述べている。
同ブランドに協力しているDEI(多様性・公平性・包括性)コンサルタントでLGBTQ+専門家、そして自身もトランスジェンダーであるダコタ・ロビン氏は、「若い頃、生理に違和感があっただけではなく、どこか間違ってると感じていました。現在の社会は、生理のある人々の多様性を認識していないんです」と語る。
この製品への人々の反応は?
生理用品にあからさまな性別表記を付けるよりも、ジェンダー・ニュートラルの方が適切だという意見もある。
トランスジェンダーの身体についての本の著者であるケルヴィン・スパークス氏は、子宮の摘出手術を受けた経験がある。出血に対処するため生理ナプキンを買った時のことを振り返り、「レジの人は、ガールフレンドのために買ったんだろうと思っただけ」と話した。
「男性向けの生理ナプキンを買ったら、レジの人に自分がトランス男性だとカミングアウトするようなもの。私にとってはその方がずっと問題だし、自分の安らぎや安全が脅かされます。Vuokkosetの商品が気づいていない、もしくは完全に無視しているのはこのことなんです」と話した。
Vuokkosetは、ジェンダー・ニュートラルなタンポン商品も検討中だという。
トランスマスキュリン(生まれた時に割り当てられた性別が女性だが、性自認はジェンダーニュートラルから男性の人)でノンバイナリーであり、そうしたコミュニティの包括性の専門家で多様化への取り組みにも注力するJude Guaitamacchi氏は「男性用タンポン」について、こう述べた。
「ポジティブな意図があることは分かります。でも、性別で分けられていないタンポンの方が、トランスジェンダーなどの人にとってより安全なものになると私は思います」
「購入する全ての人が自分も含まれているんだと感じられると思うからです。個人的には、製品のブランド戦略に男女別の要素を入れることが解決策にはならないと思います。公共の場でトランスジェンダーなどの『アウティング』につながり、当事者を危険に晒す可能性があるからです。」
スパークス氏は、この商品はトランスの人々よりも、むしろ「アライ」であると感じたいシスジェンダー向けのように感じると述べ、生理のある男性の実用的なニーズを考えていないと指摘した。
しかし、否定的な意見ばかりではない。
ロビン氏はこの製品に対するトランスフォビア(トランスジェンダーを嫌悪する)的な反応を受け、「あなたが好きか嫌いかに関わらず、この製品を必要としている人がいる」と情熱のこもったコメントをInstagramに投稿した。
LGBTQ+関連に特化するPink Newsによると、このタンポンを「革命的」とし「存在を認めてもらった気持ちになった」と語る人もいたという。
トランス男性のロビン氏自身は、もう生理は来ないが、サポートを止めることはない。
「もう生理がないのになぜこの商品キャンペーンに参加するかって?これまでの人生で何度か生理用品が必要だったことがあって、自分の存在やニーズが認識されなかった辛さを覚えてるから」
「私たちトランスジェンダーとそのニーズは、社会から注目され、耳を傾けられるべきです。それは本来あるべき私たちの基本的人権なのです」
ハフポストUK版の記事を翻訳・編集しました。