30年後に食べられるお寿司は…ブリだけかも?
国際環境NGOのグリーンピースは、気候変動の影響をアートで表現した「HELP展」を11月17日から26日まで、東京・青山で開催している。
本展は、気候変動に大きな影響を受けて30年後には消えてしまうかもしれないものの中から、「動物」、「寿司」、「昆布」、諏訪湖で約600年続く伝統文化「御渡り」、そして「東京」と、5つのテーマをアートや映像作品で表現。
グリーンピース プロジェクトマネージャーの高田久代さんは、「気候変動がどのような形で日本にやってくるのか、五感を通して感じられる展示です」と説明した。
どんな作品が見られる?
HELP展の会場に入ってまず目に入るのは、30年後にいなくなってしまうかもしれない「動物」を表現した、人気ぬいぐるみ作家の片岡メリヤスさんの作品だ。
絶滅の危機に瀕するコアラやラッコ、イエローサンダーバードなどのぬいぐるみが並んでいる。作品の後ろには、それぞれの生き物が気候変動からどんな影響を受けているのかなどが解説されている。
横に目を向けると、不思議な寿司のオブジェが見える。イワシやマグロと書かれた寿司は透明に。ウナギ、アワビと書いてある寿司はシャリだけで、私たちがよく知る姿の寿司はハマチだけだった。
これは30年後食べられなくなる可能性に応じて、樹脂で作られた寿司ネタの透明度を変化させることで、気候変動などの影響を表現した作品。
海洋生物は特に調査が難しく、全ていなくなると言い切るのは難しいものの、海水温の上昇や海洋酸性化が海の生き物たちに与えている影響は大きいという。
HELP展のクリエイティブディレクターを務めた宮園夕加さんは、「日本は恵まれているので、正直心のどこかで『困るのはシロクマだけだろう』と楽観的な自分がいました。でも、もっと自分の生活に密着した、日本人である自分がすごく打撃を受けるのはなんだろうと考えて、寿司に辿り着きました」と説明した。
昆布のテーマでインタビュー動画に登場したのは、料理研究家の土井善晴さんだ。
和食に欠かせない昆布は、他の海の生き物の生育場にもなっているが、温暖化の影響で著しく減少するという調査結果もある。
地球温暖化の影響で昆布がなくなってしまうと、和食の文化や日本人の精神性にまで影響があるのでは?そう問いかけられた土井さんは「(台所と)環境問題がつながっているというより、地球と繋がっている」と語り始める。
他にも、長野県諏訪湖に張った氷が南北に裂け、氷の山脈ができることを「神が通った道」とする伝統文化「御渡り(みわたり)」への温暖化の影響を八劔神社の宮坂宮司が語る映像作品や、多くの人が住む東京への影響を、20歳のアーティスト・相澤澄惠さんがサンドアートで表現した作品などが展示されている。サンドアートは時間の経過で崩れていき、訪れるごとに変化するそうだ。
参加型の仕掛けも盛りだくさん
HELP展には来場者が参加できるいくつかの仕掛けがある。一つは展示を見て助けたいと思ったものに投票できる「擬似募金」体験だ。
入り口でコインに自分の名前を登録し、最後に5つのテーマの中から選んで箱にコインを入れる。すると、その場で「手書きロボット」がかいた「お礼の手紙」を受け取ることができる。
「寿司」にコインを入れた筆者は、マグロからユーモアたっぷりのお礼の手紙をもらった。
マヤさん
まいど!これを機会に地球のために動き続けるってのはどうでしょう。
トロトロしていたらお先マッグロですからね。
ささ、地球に向けたこの思いをたくさんツナげていきましょうぜ!
マグロより
メッセージは何種類かあるとのこと。友人や家族との会話の種になりそうだ。
高田さんは、「私自身は10年以上環境保護活動を行っていますが、家族や友人たちに話をする難しさを感じています」と話す。
「気候変動に対して何かしたいという思いがあっても、身近な人とは話しづらくて孤立しやすい。同じような関心を持つ人と出会って、行動して変化を起こしていくのは本当に難しいことです。気候変動と日常が切り離されないよう、どうにか繋ぎ止めたいと思っています」
また、展示されたぬいぐるみを抽選で購入できるほか、展示で使われた台などの什器などはリユースしてもらえるよう、会期後に来場者が持って帰ることもできる。HELP展の詳細はこちら。入場は無料。