500年以上も前に、アンデス山脈で天災を治めるために生贄とされた少女がいた。
ナショナル・ジオグラフィックの探検家だったヨハン・ラインハード氏が、ペルーにあるアンパト山の山頂(標高約6200メートル)で1995年に少女の遺体を発見した。ラインハード氏は最初、織物の束を見つけたと思ったが、それは理解しがたいインカ帝国の儀式の若い犠牲者だった。
ミイラ化していた少女は「フアニータ」と名付けられ、大切に保管されてきた。約30年を経た2023年10月24日、顔の復元の専門とする彫刻家と科学者でつくるチームによって復元されたフアニータの顔がお披露目された。
AP通信によると、フアニータは13〜15歳だった1440〜50年ごろに生贄にされたとみられる。身長140センチで、体重は35キロ。栄養状態はよかった。
CTスキャンを行ったジョンズ・ホプキンス大学の研究者は死因について、右後頭葉を激しく殴打されたことによるものとしている。
復元にあたっては、専門家らがフアニータの亡骸をスキャンし、頭蓋骨を測定し、DNAについても研究した。さらに民族学的な特徴も復元に役立てたとBBCが報じている。顔の型をつくるまでに400時間かかったという。
復元されたフアニータについて、ラインハード氏はフィリピンのABS-CBNニュースの取材に「フアニータを見つけたのは標高6000メートル以上のところで、覆っていた布が破けてしまっていたので彼女の顔は乾いてしまっていました。顔以外の部分はとてもきれいな状態だったので、顔がさらされてしまって復元が難しいことが残念に思えたことを覚えています。しかし、28年後、とてもすばらしく復元されました」と述べた。
ナショナル・ジオグラフィックによると、捧げる神によって習慣がちがうためか、生贄の手段は様々だという。生きたまま埋められた子どももいれば、首を絞められた者もいた。心臓を取り出された子どももいた。
ワルシャワ大学アンデス研究センターの考古学者が生贄になってミイラ化した子どもたちの遺体を調べたところ、興味深い発見があった。
生贄となる数カ月前にはとてもよく面倒を見られていて、命を落とすまでの数週間はコカインの原料となるコカの葉、幻覚作用のあるアヤワスカのつる、アルコールを与えられていたことがわかっているという。