ユニクロは、これまで回収した衣料に手を加えて販売するポップアップストアを、10月11日から22日まで原宿店でオープンしている。
同社は循環型の社会を目指し、不要になった服を回収して再活用する取り組み「RE.UNIQLO」を進めており、その一環として新たにスタートしたのが「UNIQLO古着プロジェクト」だ。
今回のポップアップストアはそのトライアル企画第一弾となる。
「UNIQLO古着プロジェクト」の特設ウェブサイトには、「『服を買う』という選択肢に古着を取り入れることは、廃棄物の削減はもちろんのこと、貴重な資源の使用を抑えることにもつながります。一点ごとに表情の異なるユニークな商品の中から、あなたにピッタリの一着を見つけてください」と書かれている。
いったいどんな商品が置いてあるのか?ストアを訪ねた。
清潔かつ味わいもある
ポップアップが開催されている原宿店は、JR原宿駅前の大きな商業施設の中にある。古着ストアはストア地下一階のすぐ外にあり、面積的にはかなり小さい。
私は通年着れるようなワイドジーンズを求めてきたのだが、「ピッタリの一着」は見つかるだろうか。
ショップに並ぶのは、顧客から回収した古着を、検品・洗浄しただけの「リユース」品と、染めや洗い加工でヴィンテージ風にアレンジした「リメイク」品の2種類。
ストアでは常に顧客が商品を物色しており、注目の高さが窺える。
ユニクロ広報担当者は、「予想以上の反響で、今日は品薄状態です」とのこと。それでもTシャツやシャツ、ジーンズやパーカーなどが並んでいた。開催中には随時在庫が補充されるといい、日によって品揃えは異なるようだ。
商品を手にとってよく見てみると、どれも清潔で綺麗な状態が保たれている。特に、洗濯するとすぐケバケバになってしまいがちなセーターも、スムーズな手触りで毛玉ゼロだ。
染め加工されたパーカーなどはヴィンテージ風で、一点物感を醸し出している。
値段は、リユース品が1000円から、リメイク品が約1990円からと、どの商品も検品や洗濯、加工と、高い技術や手間暇がかかっているにも関わらずかなりお手頃価格だ。
他に興味深かったのは、基本的に売り場や商品がジェンダー別に分かれていないこと。
これについて担当者は、「多くが男女ともに着られるデザインなので、ジェンダーに関係なく気に入ったものを選んで欲しい」と背景を語ってくれた。
また、加工によってはタグに書かれているサイズよりも1〜2サイズ小さくなってしまうため、性別やサイズにとらわれず一度試着してほしいという理由もあるそうだ。
一方、顧客からは「どっちがメンズ?レディース?」といった質問も多いため、今後の売り場の作り方を検討していくという。
個人的には、メンズとレディースに分かれていないことで、普段なら目に入らないようなメンズの商品を手にして「これもいいかも」と感じるなど、新たな気づきをもらった。
買い物を済ませた2人組を見つけたので話を聞くと、女性は古着好き、男性は全身ユニクロというカップルで、SNSでポップアップを知って来店したという。2人合わせてリユース品を3点購入していた。
女性は、「古着は他の人と被らないし、色合いの違いなどが好き」と言い、今回の古着ストアについて、「古着好きからも、ユニクロ好きからも両方からのニーズがあると思います。他の店舗でもやって欲しい」と話す。サステナビリティの観点からではなく、ファッションとして魅力的だから古着を買うという。
実際、どれだけ環境に良くても、自分が気に入らなければ長く大事に着るに至らないだろう。意識せずとも、気に入ったものが環境や社会に優しいものであることが理想だ。
私は結局この日、古着ストアでお気に入りの一着を見つけることはできなかった。でもこのタイミングで隣の既製品店で新品を購入するにはちょっぴり気が引けたので、手ぶらで店を出た。
古着やリペアへの動きは業界全体に広がるか
国連貿易開発会議はファッション業界を「世界第二の環境汚染産業」とみなしている。こうしたこともあり、SDGsに注目が集まる近年、アパレル各社は経営戦略としてサステナビリティに関する施策を強化している。
約20年前から不要になった服を回収しているユニクロはこれまで、難民キャンプや被災地など服を必要している人たちに送ったり、新たな製品にリサイクルしたり、リユースできないものは断熱材などとして活用してきた。
また、傷ついた服の修理やリメイクを行うRE.UNIQLO STUDIOのサービスを提供する店舗も増えており、広報担当者は「作ったものは最後まで責任を持つ、ということを進めています」と話す。
人々のファッションに関するサステナビリティへの認知が高まり、ファストファッションは時代遅れになりつつあるとも言われている。
日本国内だけでなく世界でも人気を誇るユニクロのこうした取り組みが業界全体に一刻も早く広がり、大きなムーブメントとなることを願っている。