アメリカ・テネシー州に住む14歳の子どもが、インフルエンザのような症状が悪化して両手足を切断することになった 。スポーツが得意で、ピアノを弾くことが好きで、MIT(マサチューセッツ工科大学)への進学を夢見る少年の周りでは、友人たちによる支援の輪が広がっている。
地元テレビ局WSMVやABCの朝の番組「グッド・モーニング・アメリカ」(GMA)などが、どんな異変が起き、家族がどう受け止めているかなどについて報じている。
少年の名前はマティアス・ウリバさん。クロスカントリーや陸上に打ち込む元気な子どもだったが、2023年6月下旬に異変が起きた。高熱が出て、インフルエンザのような症状に見舞われた。
ウリバさんの父がGMAの取材に容態が悪化した時の様子を語っている。高熱の影響で体が赤くなって発疹も出たため、医師に2度診てもらった。しかし、6月末に容態が急速に悪化したという。
地元の救急救命室に搬送されたウリバさんは、肺炎を起こし、低酸素状態になっていることがわかった。持病はなかったが、心停止に陥り、その状態が6分も続いたという。
何とか蘇生されたウリバさんは、州都ナッシュビルにある大規模な子ども病院に転院した。そこで、2週間にわたってECMO(体外式膜型人工肺)での治療が行われた。
主治医によると、ウリバさんの病名は、劇症型溶血性レンサ球菌感染症という感染症だった。厚生労働省の資料にはこの病気について「病状の進行が急激かつ劇的で、発症から数十時間以内にショック症状や多臓器不全、壊死性筋膜炎などを起こす致命率が高い」と書かれている。
ウリバさんの内臓は無事だったが、手足には十分な血流が届かなかった。7月20日、医師たちは手足を切断する必要があると家族に伝えた。
命を救うためとはいえ苦渋の判断になったが、ウリバさんの両腕は肘から下が切断され、脚はそれぞれ膝上と膝下を失うことになった。
ウリバさんのケースは非常にまれとされる。主治医はUSAトゥデイに、「インフルエンザが気道や肺を傷つけ、通常であれば免疫システムが働いて撃退できる細菌が増殖してしまうことがある」と説明している。
ウリバさんはクリスマスまでに退院することをめざし、集中治療室で闘病している。
家族全員が、見舞われた大きな困難を乗り越えようとするウリバさんの身体的、精神的な強さに驚かされているという。母親は「息子は本当に回復力があるんです。言葉で表せないほど強いんです」とGMAに語っている。
家族はウリバさんに生きてくれたことへの感謝を伝えているという。「君はここにいる。心も意識もここにある。どうやっていくかはこれからみんなで考える。まずはお父さんたちが君の手となり足となる。君をサポートする。そして、君は義肢を使ってみる。エンジニアになって、夢をかなえることもできるんだ」と話しかけているそうだ。
ウリバさんのクラスメートや友人らも支援に動き出した。
治療費のほかに、義肢を用意し、リハビリをするなどお金がかかってくる。一家の友人が寄付サイトで「マティアスに奇跡を」というページを開設し、すでに30万ドル(約4500万円)が集まっているという。