花の咲いたサボテンの奥からもくもくと湯気が出ている。
そして嗅ぎ覚えのある匂いが漂う...硫黄か。
日本から1万2000キロ以上離れた中米の国、エルサルバドル。
実はこの国にも、温泉がある。
エルサルバドルの国土は九州の半分ほどと狭く、天然資源も少ない。また、国民性もまじめで勤勉だと言われ、「中米の日本」とも呼ばれている。
日本に似て火山も多いため、考えてみれば温泉があるのは不思議なことではない。
実際に温泉はヨーロッパ諸国や南北アメリカ、ニュージーランドやコスタリカなど、世界中に存在する。
とはいえ、エルサルバドルまで来て温泉に入れるとは思わなかった。
国内に存在するいくつかの温泉の中でも、最大級のサンタテレサ温泉(Termales Santa Teresa)を訪れた。
エルサルバドル最西部のアワチャパン県中心部郊外にあるこの温泉施設は、なんと30もの天然温泉があり、泥パックやサウナ、さらにはレストランやホテルなども併設しており1日中ゆっくりと過ごせる。入場料は10ドル(約1500円)だ。
日本で温泉は広く愛されているが、エルサルバドルではどうなのか。実際これまでに滞在したホテルにはバスタブはもちろん、温水シャワーがないところもあり、現地の人々に話を聞くと、「普段温水シャワーは浴びない」という人がほとんどだった。
インフラ整備がされておらず温水が家に届いていない人だけでなく、都市部で温水設備があっても「気候が暖かいから冷水で十分」というのだ。
しかし実際に温泉に来てみると、金曜日の夕方だがそれなりの人で賑わっていた。もちろん、30も温泉があるので温泉によっては余裕で貸し切り風呂を味わえたが。
同行してくれた通訳のアントニアさんや駐日エルサルバドル大使館スタッフも、以前友人と来たことがあると言っていたので、国内でも人気のスポットのようだ。
施設は自然の中にあり、点在する30の温泉を回るには砂利道のトレイルを歩いていく。温泉の横には気持ちよさそうに昼寝する犬の姿も見られた。
温泉は全て屋外で混浴。水着を着用して楽しむスタイルとなっている。
水温はかなり緩いものから40度くらいのものまで様々。一番熱いお風呂でも、一般の日本の温泉の熱さに比べると少し物足りない気もするが、一緒に入浴したアントニアさんは「熱い」と言っていた。
特に温泉の種類や効能などの記載は見当たらず、訪れている人たちは家族やグループでワイワイ楽しんでいた。
お風呂の大きさは、プールのように広々として足が着かないほど深いものから、5人入れば満席になるほどの小さめの温泉もある。
いずれもとにかく開放感に溢れ、プールと温泉を足して割ったような雰囲気だ。
日本で温泉は「癒し」を求め、温泉の特徴や効能などについて書かれているのをよく見るが、エルサルバドルのこの温泉に来る人たちは「グループで遊びに行く」という感覚だとアントニアさんは教えてくれた。
施設内にあるレストランやバーは温泉のすぐ横にあり、水着のまま利用できる。宿泊しなくとも、ここで好きなだけ温泉や食事(昼寝も)を一日中繰り返しのんびりできる。
またここは、国内でも有数の観光スポット、サンタアナ火山から車で約1時間半ほど。登山した後に立ち寄って疲れた体を癒すにはもってこいのスポットだ。
ちなみにこの辺りは海岸線に比べ標高が高く涼しいため、特にサンタアナ火山付近では羽織るものが必要なほど。涼しく緑鮮やかで温泉もあるなど、日本の箱根を彷彿させた。
エルサルバドル✖️温泉ーー。
意外な組み合わせだが、もし日本からエルサルバドルを訪れるのならば、絶対におすすめしたいスポットの1つとなった。
今政府が力を入れているサーフビーチからは少し離れるが、個人的にはそれでも足を伸ばす価値があると思う。
サーフィン、ハイキング、遺跡巡り...エルサルバドルの魅力はたくさんある。そんな充実した旅を最終日に温泉で締めくくるなんて、最高ではないだろうか。
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ハフポスト日本版は、駐日エルサルバドル大使館より招待を受け、現地の取材ツアーに参加しました。執筆・編集は独自に行っています。