イギリスのスナク首相は9月15日、自身の公式Xで大型犬の「アメリカンブリーXL」について、「私たちの社会への脅威となっていることは明確だ」として、2023年末までに飼育禁止する方針を発表した。1991年に危険犬の規制を導入して以降、禁止になるのは初めて。
イギリス国内でアメリカンブリーXLが人を襲う事件が相次いでいることを受けた対応だ。危険犬に指定されると、その犬種の繁殖、販売、贈与ができなくなる。
新たな犠牲者が出たばかりだ。テレグラフによると、9月14日にイギリスのウェスト・ミッドランズに住むイアン・プライスさんがアメリカンブリーXLとみられる2頭の犬から高齢の母親を守ろうとして重傷を負った。プライスさんは救急ヘリで病院に搬送されたが、その後、死亡が確認された。
プライスさんは犬が母親の庭に侵入するのを目撃し、助けるために駆けつけて襲われた。警察が近所に住む飼い主を危険な状態で犬を放し飼いした疑いで逮捕。その後、過失致死の容疑で再逮捕している。
イギリスでは犬に襲われて亡くなった人は今年だけで7人にのぼると、ガーディアンが報じている。
怪我人も相次いでいる。直近では、9日には11歳の子どもがアメリカンブリーXLと別の犬種との交雑種に襲われ、腕と肩に重傷を負った。助けに入った2人も怪我をした。
アメリカンブリー・ケネルクラブやBBCによると、アメリカンブリーXLはアメリカンブリーの一種。1980年代にアメリカンピットブルテリアとアメリカンスタフォードシャーテリアを掛け合わせて、アメリカで誕生したとされている。
アメリカでは「スタンダード」「ポケット」「XL」「クラシック」の4種類の犬種に分けられている。成犬のオスの場合、地面から肩甲骨あたりまでの高さが51~57センチ、メスは48~54センチであればXLに分類されるという。スタンダードと体の造りは同じで、体の高さのほか、より筋肉質なこと、より大きいこととがっしりした体格が特徴だ。大きいものでは体重が60キロにもなり、人間の大人を打ち負かすほどの力を持っている。
アメリカでは犬種の一つと見なされているアメリカンブリーXLだが、イギリスでは犬種として定義されておらず、立場があいまいになっている。そのため、政府は今後、危険犬とするアメリカンブリーXLをどう定義するかについて専門家を交えた議論を深めるとしている。
BBCによると、禁止になった場合、すでに飼育中のアメリカンブリーXLについては飼育登録し、公の場では口輪をするなどの対応をすれば飼い続けることができるという。