Hakuhodo DY Matrixのシンクタンク「100年生活者研究所」は9月15日、人生100年時代に関する意識調査の結果を公表した。
この調査は、アメリカ・中国・フィンランド・タイの4カ国の合計2400人と、日本の2400人の回答結果を比較したもの。
調査で「100歳まで生きたいか?」と聞くと、「とてもそう思う」「そう思う」と回答した人が最も多かったのは中国で79.4%、次いでアメリカ(62.3%)、フィンランド(54.5%)、タイ(53.2%)と続き、日本は26.6%で最下位だった。
また、幸福度も対象国5カ国中で日本が最も低い結果に。最も高かったのは中国の8.4点で、タイ(7.3点)、アメリカとフィンランド(どちらも6.9点)と続いた。
長生きして迷惑をかけたくない
日本で「100歳まで生きることは不安が増えることですか、チャンスが増えることですか」と聞くと、71.8%が「不安が増える」と回答した。「長生きはリスク」と考える人が多いようだ。
本調査の研究員・田中卓さんは、「高齢者が多い日本では、年金2000万円問題や老々介護といった『長生きに伴う問題』についての情報が、広く流通しています。それにより、他国と比べて『長生きの負の側面』が浮き彫りとなり、100歳まで生きたいと思う人が少なくなるという結果につながっているのかもしれません」と分析した。
また、アンケートでは9割弱の人が「100年人生で、みんなに迷惑をかけたくないという気持ちを感じる」と回答したという。
田中さんは「一般的に日本人は集団主義の傾向が強く、社会や他者との関係性を重視する気質があると言われています。『100歳まで生きたいとは思わない』人が多いことの背景に、『長生きして迷惑をかけたくない』という日本人の意識がありそうです」とコメントした。
長生きしたいと思える社会とは?
一方で、8割強の人が「みんなの役に立ちたいという気持ちを感じる」と回答。田中さんは「集団主義的傾向の裏返し」と分析し、長生きしたいと思える社会について以下のようにコメントしている。
「もし高齢者の世話を『人と社会に役立つこと』として当たり前に認識できる社会になれば、『長生きは迷惑』と感じることなく『100歳まで生きたい』と考える人が増えるのかもしれません」
また、「100歳の人が幸せそうに見える」人ほど「100歳まで生きたい」と回答する人が多かったことから、「『幸せな100歳』『幸せな長生き』を体現している人にスポットライトを当てることで、100年人生を前向きに捉える人を増やしていくことができるのではないでしょうか」と提案した。
「周りの人に支えられながら、長生きのリスクをしなやかに乗り越えた、100歳の人の姿が社会で見えるようにすること。それにより『100歳まで生きたい』との希望を社会に生み出していく。それができれば、超高齢化社会の日本において、長生きは迷惑ではなく、むしろ『社会の役に立つこと』になっていくでしょう」(田中さん)