「東京には色がない」制服がない国・スウェーデンで育ったLiLiCoがファッションデザイナーになった理由

好評連載 第41回 LiLiCoの「もっとホンネで話そう。私たちのこと」
タレントのLiLiCoさん
Yuko Kawashima
タレントのLiLiCoさん

世間を騒がすイシューからプライベートの話題まで、LiLiCoさんがホンネで語り尽くす本連載。今回のテーマは、「ファッションデザイナーデビュー!」です。

9月、LiLiCoさんはファッションブランド『Queen Li(クイーン リー)』をスタートさせました。13歳からミシンで服を縫い、歌手時代も限られた予算でアイデアを駆使して自分で衣装を作ってきたLiLiCoさん。デザイナーとしてデビューするまでの道のりについて話を聞きました。

表参道でピンクを着た人に目を奪われた

制服のない国、スウェーデンで育った私にとって、ファッションは幼稚園時代からの関心事。幼いころから、かっこいいファッションを着こなすことでスターになれると知っていたのです。

子どもの頃は、裁縫の得意な母がミシンで洋服を作ってくれました。13歳ぐらいになると、私もお小遣いで布を買い、ミシンで自分の服を作るようになりました。もちろん当時はポケットもないようなシンプルな服しか作れませんでしたが、この頃から私は、「いつか自分のデザインした服をみんなに着てほしい!」という夢を抱いていました。

ワンピースはQueen Liのもの。「袖と裾に透け感を持たせた軽やかさのあるデザイン」だとLiLiCoさんは話します
Yuko Kawashima
ワンピースはQueen Liのもの。「袖と裾に透け感を持たせた軽やかさのあるデザイン」だとLiLiCoさんは話します

18歳で日本に来てからは、祖母の足踏みミシンを使って、余り布で服を作ったり、手持ちの服をリメイクしたりしていました。売れない歌手時代は、衣装も自分で作りました。もらいもののドレスのサイズを直して100円ショップで買ったプラスチックのフルーツをつけたり、事務所の封筒で作った小さなハットを100円ショップの造花で飾ってヘッドドレスにしたりしたことも。

そんな私にとって、自分のファッションブランド『Queen Li』がスタートした9月3日は、長年の夢が叶った瞬間! ブランド名の「Queen」には「誰でも女王様気分になれるように」という思いを、「Li」はLive(生きる)、Life(日常、人生)、Liberty(自由)、Limitless(制限をかけない)、そしてLiLiCoの意味を込めています。

コンセプトは「HAPPY & POWERFUL」。先日、表参道を歩いていたら、向かいからピンクのシャツを着た方が歩いてきて、目を奪われました。周りは、ベージュや黒など落ち着いた色の服の人ばかりだったからでしょう。以前から、東京には色がないなと感じてきました。無難な服を好む日本の人たちの冒険心を刺激して、着ている人だけでなく、それを見た人もハッピーになれる服、明るくパワフルになれる服を作っていきたいです。

ファーストコレクションのこだわりは

ファーストコレクションのアイテムは5つ。それぞれ二色展開で、いろいろな人に着てもらえるように派手すぎないカラフルさを目指しました。私と同じ、または少し上の世代で、仕事をしている女性たちにたくさん着てほしいなと思い、こだわりをもって作りました。

シャツとスカートはセットアップにも。チェックの模様ひとつひとつからパターンを起こした自信作だそう
Yuko Kawashima
シャツとスカートはセットアップにも。チェックの模様ひとつひとつからパターンを起こした自信作だそう

パッチワークデザインのインド綿のシャツは、チェックの模様ひとつひとつからパターンを起こした自信作。チェックをどんなふうに組み合わせるか、全体のどの程度にパッチワークを見せるか、スタッフと一緒に試行錯誤しました。これだけユニセックスなので、男性にも着てほしいですね。

シャツとセットアップにもできるスカートは、どこを前にして履くかで印象を変えられます。パッチワークの縫い目が肌に当たらないように、ガーゼ素材の裏地も付けたので着心地が良いですよ。

パッチワークデザインの2アイテムは、カップルにもオススメ。男女カップルでもシャツをペアルックにできるし、片方がシャツ、もう片方がスカートというリンクコーデでも。

Yuko Kawashima

イタリアのジャガード生地を使ったワンピースは、袖と裾に透け感を持たせた軽やかさのあるデザイン。汗をかいてもいいよう裏地を付け、きれいめのコーディネートはもちろん、足さばきがよいので日常遣いにも。

動きやすくカッコイイデニムは、ウエストのひもの結び目が横にあるのがポイント! 前にひもが出ていると、結び目が微妙な位置にできてトップスが膨らむのが悩みの種だったんです。

VネックのTシャツは、スーツのインナーにもできるスッキリしたシルエット。プリントは撮り下ろした私の写真ですが、「ファンTシャツ」にならないようにサングラスをかけて誰だか分からないように工夫しました。このTシャツは若い人にも着てほしいですね。

アイテムを組み合わせると数パターンのコーディネートが完成
Queen Li
アイテムを組み合わせると数パターンのコーディネートが完成

今回目指したのは、このコレクションのアイテムを組み合わせるだけで数パターンのコーディネートができて、秋をオシャレに過ごせること。赤のワンピースの下に、チェックのスカートを着ても意外とキマるんですよ。

秋はグレーやワインレッドを着たくなるけど、ぜひ今年はカラフルさを楽しんでみて! きっとハッピーな気分になれるはずです。

名ばかりのプロデューサーにならないために

Queen Liがスタートするまでには、紆余曲折がありました。もともとある会社が一緒にブランドを立ち上げたいと声をかけてくれたのですが、チームで企画を進めるうちにコロナ禍で倒産。企画は一度、ストップしてしまいました。

しかし2022年11月、元チームメイトで別の会社に入った人が、私と組む企画を立ち上げてくれて、再スタートを切ることに。デザインは0から作り直しましたが、チームの仲間たちと信頼関係が築けていたので、完成までスピーディーに進めることができました。

Queen Liチームはフィーリングの合う女性たちばかり。「LiLiCoさんは芸能人でお忙しいだろうから…」と一方的に遠慮されるのは嫌だと伝え、チームみんなで、それぞれの得意なところを活かして、一緒にいいものを作ることができました。

彼女たちは販売元であるショップチャンネルについて熟知していて、学ぶこともたくさんありました。ショップチャンネルではMサイズはもちろんですが、LLや3Lまである商品も揃えています。体型は人それぞれなので、サイズ展開を広くすることで多くのお客様に届くのは素敵なことですよね。自分にぴったり合った買い物ができる選択肢の中にQueen Liを入れてくれたら嬉しいです。

Yuko Kawashima

名ばかりのプロデューサーになるのは嫌だったので、私も本気で関わりました。デザインやパーツ選びはもちろん、試作品ができたら、ボタンが取れにくくないかなどをチェックし、何度も洗濯・アイロンを繰り返して使用感をテスト。商標登録の手続きにも、弁理士さんとの打ち合わせから関わりました。

日本の人をハッピーにするブランドに

お気に入りのアイテムがそろったファーストコレクション。私はいつも自分で衣装を選んでいるので、仕事でもプライベートでも早速愛用しています。小田井(パートナーでタレントの小田井涼平さん)はシャツを褒めてくれましたね。家に置いておいたら、後日「これ、やっぱりいいね」ってしみじみと言ってくれたのが嬉しかった。父のパートナーのブリットには、スカートを買ってプレゼントしたいな。

ファーストコレクションを経て、小さな布地のサンプルが洋服になったときにどう見えるかという肌感覚が身につくなど、自分がデザイナーとして成長しているのを感じます。今は主に言葉でデザインのイメージを伝えていますが、いずれはデザイン画を起こせるようになりたいです。

Yuko Kawashima

今後は、もっとサステナビリティにも配慮していきたいです。インド綿を使うことを提案されたとき、その工場で児童労働などが行われていないかの確認はしたものの、実際の現場を見ることはできませんでした。

しかし先日、服が完成したあとに、インドで製造を担当している企業の社長さんと日本で会うことができました。布ができ上がるまでは、本来たくさんの国境を越えるものですが、彼の工場では布まで作っているので、信頼ができるなと思いました。1カ所でやっているので、運送におけるCO2の排出などが削減できますし、環境にも優しいと確信しました。次のコレクション以降も、工場を見学したり、原材料や生産過程について知ったり、できることはしていきたいですね。

ショップチャンネルは買い物をしたいと思っている人が見てくださるので、そこでQueen Liを始められたのは良い出会いでした。感謝しています。

これからも、日本の人たちがハッピーに生きられるようなアイテムを作っていきたい。そして、ポップアップストアを開催したり、固定客になってくださる方に直接会ったりできたらいいなと思っています。

Yuko Kawashima

(取材・文=有馬ゆえ、写真=川しまゆうこ、編集=若田悠希)