ルーツも中身も違う。でも「そのままが良い」。『プリキュア』オールスターズ作品が教えてくれること【20周年映画・インタビュー】

20周年記念『映画プリキュアオールスターズF』が訴えかけるのは、「プリキュアって何だろう」という問い。プロデューサーの村瀬亜季さんが得たヒントとは──。
5年ぶりのオールスターズ映画には、歴代78人の全プリキュアが登場する。
5年ぶりのオールスターズ映画には、歴代78人の全プリキュアが登場する。
(C)2023 映画プリキュアオールスターズF製作委員会/(C)ABC-A・東映アニメーション

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『プリキュア』シリーズ20周年記念作品『映画プリキュアオールスターズF』が9月15日、公開されます。歴代のプリキュアが集合する「オールスターズ」作品は5年ぶり。

プロデューサーの村瀬亜季さん(東映アニメーション)は「節目の作品として、『プリキュアってなんだろう』という問いが立ちはだかりました」と振り返ります。製作陣が出した答えとは──。


◆シリーズ長期化の嬉しさと難しさ。その答えが「オールスターズ」

──プリキュアシリーズは、設定や登場人物が代替わりする仕組みを作り、20年続いてきました。現在放送中の『ひろがるスカイ!プリキュア』(ひろプリ)の魅力は何だと思いますか。

すごく応援したくなる子たちだと思っています。例えばシリーズ初の「異世界出身で水色の主人公」ソラ・ハレワタール(キュアスカイ)。「ヒーロー」がテーマでファンタジー要素が強めな一方、つい感情移入してしまう人間味があります。

ソラの決め台詞「ヒーローの出番です!」は、圧倒的な自信があるから言っているセリフではないと感じていて。かっこいい存在でありつつも、怖くて手が震えてしまうとか、困難を前に逃げてしまいそうになるとか、私たちに近しい感情も持っている。そんなギャップがグッときます。

プロデューサーを務めた東映アニメーションの村瀬亜季さん
プロデューサーを務めた東映アニメーションの村瀬亜季さん
Takeru Sato / HuffPost Japan

──子どもたちがいずれ直面する社会問題に踏み込んだり、プリキュアになる者の属性が広くなったりと、変化を続けてきたプリキュアシリーズ。その20周年映画が新しい形ではなく、「オールスターズ」という原点に立ち返った背景を教えてください。

最初からバシッと決まっていたわけではなくて。ただ、20周年ですし「今までプリキュアを好きになったことがある人みんなが楽しめるものにしたい」「歴代のプリキュアを全員登場させたい」という思いが根底にありました。

──今作のキービジュアルには『Go!プリンセスプリキュア』(2015年)以降の9作品のプリキュアが選ばれています。その理由は。

田中裕太監督の代弁になる部分もあるのですが、直近のシリーズのプリキュアたちは、(2008〜2016年まで毎年やっていた)オールスターズに登場できていなかったり、登場の機会が少なかったりする子たちが多いなあと。だからこそ、最近の作品をメインにしたオールスターズ映画を作りたいと思いました。もちろん、どのシリーズにも「らしさ」を感じさせる見せ場があります。

◆プリキュアって何だろう。その答えのヒントが、「繋ぐ」

映画では、プリキュアが4つのチームに分かれて旅をする。
映画では、プリキュアが4つのチームに分かれて旅をする。
(C)2023 映画プリキュアオールスターズF製作委員会/(C)ABC-A・東映アニメーション

──20周年記念作品を作る上で大切にしたことはなんですか。

プリキュアにふれてきた人みんなに楽しんでもらいたい。そう考えた時に、「プリキュアってなんだろう」という問いが立ちはだかりました。これを言語化するのって、すごく難しいんですよ。

というのも、プリキュアシリーズは原作がなく、毎年違うスタッフ陣が一から生み出していて。否が応でも個性や考えが違いとして出ますし、いろんな意味合いが出てきます。この「毎年変わっていく感じ」も、シリーズが長く愛される背景の1つだと感じています。

──村瀬さんが担当された『トロピカル〜ジュ!プリキュア』(トロプリ)は、ギャグ描写に定評がある土田豊さんがシリーズディレクターを務め、とにかく明るい作品になりました。

1年間土田ワールドが止まらず…!絵コンテがあがってくるたびに、どうしよう…となるなど、すごく大変でした(笑)その分、気持ちがパッと上向く楽しいシリーズになったと思います。

プリキュアは最近だけでも「ヒーロー」や「シェアする喜び」、「今一番大事なことをやろう!」など、いろんなテーマが描かれています。でも「全てに共通しているものもあるんじゃないか」という視点で、歴代シリーズの担当者が迷いながら、答えを出していきました。

──「プリキュアってなんだろう」。ズバリ、皆さんが出した答え、今作のテーマとは。

タイトルの「F」として盛り込んでいるので、ぜひ映画を見て感じ取ってほしいです!(笑)PVに入れただけでも、Fight(たたかう)、Friend(友達)など、たくさんあるんですよね。

また、答えのヒントとして生まれたのが、「繋ぐ」というキャッチコピーでした。初代の『ふたりはプリキュア』 からシリーズを超えて、「大切なものを守りたい」や「自分らしさ」など、いろんな思いをバトンとして繋いできました。それは映画でも同じです。オリジナルキャラのキュアシュプリームとプーカの「繋ぐ」も、注目していただけますと!

「プリキュアって何だろう」。この問いに向き合い映画に落とし込んだ。
「プリキュアって何だろう」。この問いに向き合い映画に落とし込んだ。
Takeru Sato / HuffPost Japan

──村瀬さんはプリキュアをどのような存在だと考えていますか。

それもとても難しくて。「プリキュア」という総称はありますが、78人みんな違うんですよ。宇宙人やアンドロイドなど、いろんなルーツを持つ子もいます。中身も、ヒーローを夢見て努力し続けてきた子、周りがよく見える優しい子、私が担当したトロプリのローラのように、一般的な「良い子」とは違うかもしれないけれど、自分を信じて突き進んでいく姿が魅力的な子など、多種多様です。

あえて一言でまとめるなら「個性の塊」でしょうか。そしていろんな個性があるというのは、子どもたちにも共通するものだと思っていて。「そのままが良いよ」というメッセージになったり、共感や憧れを抱いてもらえるきっかけになったりするのかなと感じます。そして、個性豊かな子たちが「プリキュア」という名のもとに繋がっているのは、なんとも不思議な魅力だと思います。

──映画ではそんなプリキュアたちが、4チームに分かれて冒険します。

キュアスカイを筆頭とするキュアスカイチームは、直近3シリーズのセンターのプリキュアが集まり、これまで培ってきた思いを繋ぐ、オールスターズの醍醐味みたいなものを味わってもらえるかなと。別々の作品の子が集まった時、息があったり、まとまったりというだけじゃなく、キュアバタフライチームのようにぶつかることもある、チームごとに描いていることが違うのが見どころです。

でも、元のキャラクターがしっかりあるからこそ、羽衣ララ(キュアミルキー)と琴爪ゆかり(キュアマカロン)のやりとりは、一番悩まずに描けたところかもしれません(笑)。それぞれが、プリキュアのテーマの一つでもある「らしさ」みたいなものを感じさせてくれます。

──「女の子だって暴れたい」というキャッチコピーから始まったプリキュアシリーズですが、最近は劇場に訪れる男の子も増えるなど、性別を問わず多くの子どもたちが作品を楽しんでいると感じます。

すごく嬉しいです。男の子はもちろん、プリキュア映画に誰と一緒に行くかというバリエーションが増えていると感じていて。例えば、「女の子とお母さん」という形が多かったのが、男の子とお父さん、女の子とおじいちゃん、昔同じプリキュアを見ていた友達同士など多様化していて。プリキュアが人と人を繋いでくれていることにジーンときますし、これからもそんな存在でありたい。そのためにも、新しいチャレンジを続けるのが楽しみです!

<取材・文=佐藤雄(@takeruc10)/ハフポスト日本版>

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