一度は絶滅したと思われていた希少な鳥が、再び大地を駆け抜けた。
ニュージーランドのワイマオリ渓谷で8月23日、18羽の「タカへ」が放された。
タカへは体長約50センチの飛べない鳥で、山地に生息する。文献の史料が存在しない先史時代からそのままの姿形を留めているとされ、世界で最も希少な鳥の一種だ。
その姿は個性的で、正面からはほぼ完全な球形に見える。羽毛は青緑色で、くちばしと足は赤い。
英紙ガーディアンによると、タカへは1898年に正式に絶滅が宣言された。当時すでに減少傾向にあった個体数は、ヨーロッパからの入植者に連れられたヤギやネコなどの動物によって壊滅的な被害を受けた。その後、1948年に再び発見され、現在約500羽まで回復して個体数は増加傾向にある。
自然保護の活動家たちは、タカヘの天敵であるオコジョやフェレット、ネズミなどの個体数を抑制しようと、罠を仕掛けるなどの手立てを長年打ってきた。
ニュージーランド自然保護局(DOC)でタカへの保護活動を担当するデイドラ・ヴァーコー氏は、「タカヘの数が500羽に迫り、年約8%のペースで増加しているため、新たな住処が必要です。タカヘの個体数を増やすために何十年にもわたって努力してきた後、現在はより多くの野生群を確立することにはやりがいがありますが、課題も残されています」と語っている。
「新たな野生在来種の個体群を確立するには時間がかかり、成功が保証されているわけではありません。タカへの繁殖を望むのであれば、私たちは新しい場所を探索し、現在そして将来にわたって鳥を保護するためにできる限りのことを学ぶ必要があります」(ヴァーコー氏)
タカへがおよそ100年ぶりにワイマオリ渓谷に戻ってきたことは、土地を所有するニュージーランドの先住民族マオリのナイタフ(Ngāi Tahu)族にとっても大きな意味がある。タカへは古くから部族にとって神聖なものとして大切に扱われた鳥で、その羽毛をマントなどに織り込んでいた。
ナイタフ族のトゥマイ・キャシディ氏(Tūmai Cassidy)は、「私たちの土地で放鳥できることは、私たちの権利と土地を取り戻すために闘争した7世代にわたる先祖のことを思い出し、考えるだけでも意義深い」と胸の内を明かした。
放されたタカへたちが新しい住処に慣れたことが確認されれば、10月にさらに7羽、2024年の初めには最大で10羽のタカへのひなが新たに放される予定だ。