「2人の選手が金メダルを分け合いました。信じられません」
その異例の光景を、実況アナウンサーは興奮気味に伝えた。
ハンガリーのブダペストで開かれている第19回世界陸上競技選手権大会(世界陸上)5日目の女子棒高跳び決勝で、「2人」の選手が金メダルを獲得した。
世界陸上では史上初の出来事だった。一体どういうことなのか。
健闘を讃えあい、金メダルを2人で分け合う
現地時間の8月23日に行われた女子棒高跳び決勝。金メダル争いはオーストラリアのケネディ選手とアメリカのムーン選手に絞られていた。
2人の選手はそれぞれ3本目で今季の世界最高となる4メートル90センチを記録。続く4メートル95センチに挑んだが、両選手が共に3本のトライアルを失敗すると、2人は歩み寄った。
互いに言葉を交わし、健闘をたたえ合う姿があった。
両選手が話し合い、勝敗が決するまでジャンプを飛ぶいわゆるタイブレーク(ジャンプオフ)を行わなかったという。
これにより、大会史上初となる“2人の金メダリスト”が誕生した。
World Athleticsの公式YouTubeは、2人のジャンプと互いが讃え合う瞬間を公開。
実況アナウンサーは「They decided that they will split the gold medal.Incredible(2人は金メダルを分け合うと決めました。信じられません)」と目の前の光景を興奮気味に描写した。
世界陸上では初となった、走り高跳びでの2人の金メダリスト誕生の瞬間。
実は、2021年に開かれた東京オリンピックの男子走り高跳びでは、全く同じことがあった。
金メダリストになったのは、カタールのムタズエサ・バルシム選手とイタリアのジャンマルコ・タンベリ選手。同じ2メートル37センチの高さを飛んで1位で並んだ後、優勝決定戦をせずに金メダルを分け合うことを選択していた。
東京オリンピックでは競技を通じて多くの感動が生まれたが、その1つに数えられる「名場面」だった。
ちなみに、日本オリンピック委員会(JOC)によると、1936年ベルリンオリンピックでは日本人選手がメダルを“シェア”した例がある。
世界レベルの真剣勝負だからこそ、時に、勝敗を超えた感動に出会えるのかもしれない。