全てのライブパフォーマンスやMCに手話通訳を取り入れる音楽イベント「Candlelight」が、11月21日に東京・渋谷のライブハウス「WWW X」で開催されることが発表された。
同イベントは「音楽を介して社会的・政治的な活動を生活のなかに見出す」ことを目的にしているといい、その一環としてライブ手話通訳を導入。出演者はこのコンセプトに賛同した、京都発のバンド・Homecomings、シンガーソングライターのさらささん(バンドセットでの出演)、DJ kaoliniteの3組だ。
手話パフォーマーは、手話バンド・こころおとのデフボーカルとして活躍するKuniyさんと、アイドルとして活動し、ドラマ「silent」などの手話監修・指導も手がける中嶋元美さんが担当する。障害者の観劇等の環境向上を推進するNPO法人「シアター・アクセシビリティ・ネットワーク(TA-net)」が協力した。
イベントを企画した廣松直人さんとアリサさんは、ハフポスト日本版の取材に対し、「すでに共に社会に暮らしているにもかかわらず、想定の範囲からこぼれやすい立場に置かれてしまっている人たちの存在を忘れない場所・イベントをつくりたいという思いから企画しました。その一つの方法として今回、音楽手話通訳を入れることを決定しました」とコメントを寄せた。
日本でも「#コンサートに手話通訳士を」の声広がる
アメリカでは「障害のあるアメリカ人法(ADA)」に基づき、民間の事業者が聴覚障害のある人のために手話通訳を手配することが義務付けられている。
ライブイベントや音楽フェスなどで手話通訳が手配されることも多く、2月のNFL・スーパーボウルのハーフタイムショーでは、リアーナのライブで手話パフォーマンスをした、ろう者のジャスティナ・マイルズさんが大きな注目を集めた。
日本では手話通訳を導入したライブは非常に少ない。ハーフタイムショーでのマイルズさんのパフォーマンスは日本でも話題を呼び、SNSでは「#コンサートに手話通訳士を」などのハッシュタグで、ろうや難聴の当事者や支援者を中心に、手話通訳の起用を求め、事業者に変化を訴える声が広がっている。
一方で、日本財団が主催する、障害のあるアーティストたちとつくる音楽イベント「True Colors Festival THE CONCERT 2022」や、ソウルバンド・思い出野郎Aチームのライブなどで手話通訳が導入されるなどの動きもある。ディズニーの音楽にあわせてフィギュアスケーターが演技する「ディズニー・オン・アイス」でも、2023年に初めて手話通訳付きの客席エリアが設置され、ショーの進行に合わせて、セリフや音情報等が手話で届けられた。
障害を理由にした差別を禁じ、障害のある人への「合理的配慮」の提供を行政や企業に求める「障害者差別解消法」は2021年に改正された。これまで民間の事業者については、「合理的配慮」の提供は努力義務だったが、2024年4月からは法的義務になる。