8月12日に開かれる神宮外苑花火大会は、打ち上げ・観覧会場のある東京・明治神宮外苑の再開発計画による今後の影響が懸念されている。
神宮外苑花火大会事務局(主催者の日刊スポーツなど)は、再開発による影響は現時点で不透明という前提で「今後は開発地区の変化に伴って、安全に打ち上げできるかどうかなどを判断して実施を決めていく」とハフポスト日本版の取材に答えた。
花火大会は、神宮外苑軟式野球場が打ち上げ場所、神宮球場と秩父宮ラグビー場が観覧会場となっている。
神宮外苑の再開発計画では、軟式野球場が廃止となって広場に変わるほか、神宮球場と秩父宮ラグビー場の場所を入れ替えた上での建て替えなどが予定されている。秩父宮ラグビー場は全面屋根付きに変わるという。
この計画通りであれば、神宮外苑花火大会の開催や運営に大きな影響が出ることは避けられない。
花火大会事務局は、再開発の影響について次のような見解を示す。
「秩父宮ラグビー場の取り壊し(建て替え)という情報が出ているので、(屋根付きとなることで)有料観覧席がなくなり、会場がひとつなくなることになる。安全に実施できるのかというのが一つの懸案としてある」
廃止となる軟式野球場についても「(代わりの)打ち上げ場所があるのかを判断する」と話す。
事務局は毎年度、その時の状況に応じて大会の開催可否を判断・決定している。
担当者は「開発地区の変化に伴って、安全に打ち上げできるのか。規模を縮小する必要があるのか。それでも難しければ中止にするのか。2024年以降は、打ち上げや観覧エリアがどうなっているのかで対応を考えていく」と説明。
その上でこう続ける。
「もちろん我々も、42年つづk花火大会を継続していきたいという思いはあります。1年でも長く実施したいと考えています。花火は自然環境との兼ね合いなので、花火をするフィールドがあるのか、その時々に合わせた形を考えてやっていきたい」
神宮外苑の再開発、何が問題になってるの?
再開発への見直しの声が高まるきっかけになったのは2022年2月。約1000本の樹木の伐採される計画が判明したことだ。子どもや高校生ら若年層からも、未来の世代のためにも樹木を切らないで欲しいとの訴えが上がっている。
神宮外苑の樹木保全に関しては、さまざまな問題が指摘されており、その一つが神宮外苑のシンボルとも言える4列のいちょう並木。
事業者は、再開発で「いちょう並木は切らない」と説明しているが、専門家は、新しく作る野球場の壁がいちょう並木間近まで迫るため「根が傷つけられ、衰退する恐れがある」と警告している。
樹木に加えて争点になっているのが、歴史あるスポーツ施設の保存を巡る問題。
神宮球場は1926年、秩父宮ラグビー場は1947年に完成。取り壊せば「歴史的・建築的価値が失われる」として、野球愛好家らは同じ場所での改修を求めている。また秩父宮ラグビー場は、建て替えによって、ラグビーを行うときの観客の収容人数がいまのスタジアムより減ることが問題視されている。
再開発計画は、明治神宮と日本スポーツ振興センター(JSC)、そして三井不動産と伊藤忠商事が、事業者として主導。東京都の小池百合子都知事が、2023年2月に事業を認可した。工事は2023年3月に始まり、2036年に全体が完成する予定。総事業費は約3500億円。