スタンドアップコメディアンとしてアーティストビザを取得してNYに渡る前、私は日本である団体の理事を長年のセクハラで告発した。
ここではその理事を「リ爺(ジイ)」としよう。リ爺は勝手に私を「ヨメ・嫁」と呼び、さも私を「所有」しているかのごとくオカズとし、暴走した。こちとら所有どころかリースすらした覚えはないのだが。
被害と向き合う中で、私は日本社会の空気に根深く溶け込んだ、「構造」にようやく、よぉぉぉぉぉうやく気づいた。
そう、その構造とは、「家父長制」と「イエ制度」だった。
と、同時に、今まで「私」と思っていたものも、この構造にとって“良いヨメ”とされるためのヴェールでくるんだり(いつも笑顔で、とか)、それを通して自分自身をジャッジしたり(女らしさ、とか)していることに気づいた。
時には常識とされていることにも“NO”(嫌だ)を明確にしたら、ヴェールと本体の境界がハッキリし、私という人間が輪郭を持ち始めた。
ヴェールを脱ぐとストリーキングよろしく心は丸裸。「私の」自由と人生を謳歌している。
所有されるヨメ前提で生かされるなんてごめんじゃない?本来、一人一人が唯一無二の気高いヒメ(姫)である。
可能性あふれる日本のMyシスターたちに贈る、NYマインド・自分を尊ぶ生き方のすすめ。
(セクハラは男女共に被害者となることは十分承知した上で、圧倒的に被害を受けやすい女性を対象とした書き方とした)
「応援するよ詐欺」に注意!
「応援するよ詐欺」とは(※私の定義):「応援します」という言葉を免罪符に、相手の人格、夢、能力を軽視し、ただの性対象とすること。
企業はセクハラに厳しくなっている。一方で企業に守られず孤軍奮闘するアーティスト、芸能関係や起業家、個人事業主などがよりターゲットになりやすい印象がある。
こうした職種にはプロフェッショナリズムのひときわ強い女性も多く、ビジネステイストを匂わせ「応援」の提案をするケースが目立つ。
が、「応援するよ詐欺」師の思考回路は、焼き肉を奢ればホテルへ行ける、と考える残念男子と同じである。女性にとってのビジネスを、焼肉と同価値に考えているのだろう。
以下、見極めのポイント。
・自分との時間を必要以上に要求する
・応援しているはずの内容より、外見に触れる会話が多い
・マンスプレイニング(男性が見下した態度で女性に説明したり、偉そうに助言したりすること)
これらのサインが出たら、「応援するよ詐欺」の可能性が高い。
本当に応援するなら、あなたが仕事、芸術、夢、その「物事」に没頭できる環境を整えたり、活躍の機会を増やしたり手伝いをしてくれたりするはずなのだ。男性側も、応援していると言った相手が、違う性別であった場合に同じように接するのか考えてほしい。
この応援するよ詐欺に頭を悩ます時間と労力も、ガラスの天井のひとつだと私は思う。
さぁMYシスターズ、イエ制度から抜け出そう。イエ出しよう。
あくまで私が出会った人の話になるが、私のセクハラ被害を友人に話したところ、欧米人男性は8人中7人が「訴えよう!」「失職させよう!」と、鬨の声をあげた。これに対し、日本人男性は5人中4人が口を揃えて言った。
「冗談のつもりだったんじゃないですか」
そもそもプロのコメディアンに「それは冗談ですよ」って教示する感覚もよく分からないのだが、日本の女友達の中にも、「そのおじさん、今までモテなかったんだろうね」「ある意味かわいそう」「アメリカにもセクハラはある」など、加害者を擁護したり、被害そのものから話をそらす傾向の人がいた。
ン10年以上生きてきてモテない現状を変えるのは、NOTマイビジネス。本人の問題であり私が尻拭いをする必要はない。慈善で爆弾処理よろしく〜♡と言われた気分だった。
たとえば自動車に轢かれた、と言ったら、「冗談のつもりだったんじゃない?」「初めて公道に出たんじゃない?」「アメリカにも交通事故はあるよ」と返す人は何割いるだろう??
加害者擁護をしてしまう人の心理学的なことは分からない。ただ私はこうした日本の知人たちに特徴的な反応に、有無を言わせず年長男性(=家長)に従わせる、重厚な「空気」を感じたのだ。国民皆イエ制度?入った覚えないわ!
とはいえ実際、国内外問わず女性を取り巻く状況はチャレンジばかりだ。そこで海外では、#womensupportingwomen(女性を支援する女性)というハッシュタグが市民権を得ている。
女性を中心とした自己啓発グループも沢山存在し、業界のメンター、新人問わずアドバイスや意見、学びを交換し合っている。TV・Film、コメディ業界でも女性の組織があり、私も加入している。
リードする女性が増えること、そしてシスター同士が本当に「応援」し合えること。それがハッシュタグ・ウィメンサポーティングウィメンだ。
日本にいるときに告発した最大の理由も、私の知る限りでも他に被害者がいたからだ。
組織の中にいると、すぐにアクションを取れないこともあると思うが、自分の中のモヤッを見逃さないでほしい。
モヤっとしたらNOを伝える。それを繰り返していると、境界がはっきりしてくる。
「あなた」という姫の意思を優先してほしい。
また、周りも加害者ではなく被害者に寄り添ってほしい。
さぁMYシスターズ、イエ制度から抜け出そう。イエ出しよう。
ちなみにブラザー達も、「セクハラくらい」「俺のは違う」と言う前に今一度、きょうだいや子どもがその言動を受けたときを想像してほしい。おかずにされて冗談と思えますか?
わたしたちのための「さしすせそ」
合コンでのさしすせそ、というのがある。
多少バージョンチェンジはされているようだが、さすが!知らなかった!など、女性が男性を喜ばせることを前提として作られたキラーワード群だ。が、社交辞令を勘違いし暴走する男性達も実社会にはまだ沢山いる。
世間では「男を立てる」女性というヴェールが未だ私たちを覆っている。気遣いは大事だけどさ、男のプライドのため犠牲にしていい、人間の尊厳なんてある?
お互いにとって不幸が起こらないように、「わたしたちのための」さしすせそを考えた。合コンだけでなくビジネス、日常生活にも応用してもらいたい。
男性の「俺のヨメ」的思考(自分より格下、無知、好きにしていい)を感知したら、即刻この「さしすせそ」で自分の尊厳を守ろう!
私たちのための「さしすせそ」2023年版
さ 触らないでください
し 知ってます
す すごい上から目線〜
せ セクハラですよ
そ 素数p,qを用いて𝑝𝑞+𝑞𝑝で表される素数を全てもとめなさい。(京大2006理系前期)
また、逆にこの言葉が出たらセクハラフラグ!という「さしすせそ」も紹介したい。リアル、オンライン共に体験したセクハラから、ある一定のパターンを見出した。
さ 触っていいのかな〜?(はっきり断れない相手に、一応お伺いをたてるフリ。あとで言い訳できる、と思っている)
し 心配しています(近年ネット上で味方おじさん、と呼ばれるのとほぼ同類。勝手に保護者目線が気持ち悪い)
す 好きです(相手を好き、と言うとセクハラとされる可能性があるからか、振られることへのリスクヘッジからか、特に○○しているところが好き、など濁す。結果、俺はこんなに君を’凝視’しているんだぞ、と恐怖のアピールになる)
せ 整体させて(マッサージさせて、も同意。自分は習っていたなど正当性をくっつけるが、触りたいだけ)
そ そういうのじゃないから(言ってる時点で間違いなく、そういうのです)
NYでは、リ爺と同年代の富裕層白人男性(最も特権のあるクラス)も女性の社会進出に関心が高いようだ。自分以上に稼ぐ妻(化粧品会社のVice President)を尊敬を込めて自慢された時には、鳥肌が立った。
日本に関して、女性の人権はどうなんだと尋ねられたり、めちゃくちゃMen’s Worldだよね と言われたりすることがあり、反応の変化を感じている。
既に日本の恋しいものがたくさんある。温泉、刺身、自然…数えきれない。マンハッタンの地面から湧き上がるスチームを見て、温泉が噴き出す妄想をする日々だ。
しかし、人権の犠牲の上に成り立つイエ制度的構造には、はっきりNO、である。女性、性的マイノリティだけでなく、男性も苦しんでいる気がしてならない。
マッチングアプリなら、そば、右スワイプ、日本酒、右スワイプ、観光、右スワイプ、ジェンダー、秒で左へ一撃、“昇竜拳”だ。
日本の技術や商品は、もっと世界に出てほしい。でも私は伝統だけでなく、「未来」も世界に魅せたい。ポジティブな変化は、更に世界を熱狂させると思うのだ。