労働問題に詳しい全国の弁護士、約1700人が所属する日本労働弁護団(東京)は7月下旬、芸能界での性暴力などを防ぐための法整備を求める声明を公表した。ジャニーズ事務所の創業者、ジャニー喜多川氏(故人)による元所属タレントへの性加害が取り沙汰されていることを受け、緊急で発表した。
7月下旬、声明について都内で記者会見を開いた同弁護団の幹事長、佐々木亮弁護士は「(芸能界には)権力を持った者がそうでない者に対してハラスメントを行うという、伝統的にひどい実態がある」と指摘。
その上で、「(芸能界の問題を)労働政策として捉えて、法的な規制や、行政的な支援を与えるべきだ」と述べた。
声明は「芸能界における性被害やハラスメントをなくし、人権が尊重される業界に変えるには、加害構造の是正に役立つ法的根拠を与える改革が必要」と強調。
芸能事務所だけでなく、業界全体に対しても「被害を訴えた告発者が『干される』のではなく、加害者が取引から排除されなければならない」と警告し、「性被害を見逃さない法的根拠を整備する必要がある」と釘を刺した。
具体的な対応として、▽芸能事務所とタレントの間で交わす契約の内容を抜本的に改革する▽芸能事務所を取り巻く取引先の企業などにも性被害の防止を義務付ける▽派遣労働者を保護する労働者派遣法を芸能事務所に対して適用するか、新たな法規制をつくる――といった対策を求めた。
同弁護団によると、韓国では法律に基づき、性被害やハラスメントがあった場合にタレントを保護する条項を盛り込んだ「標準契約書」を国が作成。2021年に制定された法律には、タレントをセクハラや性被害から救済する機関を国が設置することが盛り込まれたという。
声明では、こうした韓国の対応を参考とした法整備を求めた。
同弁護団は7月28日夜まで、芸能界でのハラスメントなどの相談を無料通話アプリのLINEで受け付けている。
〈取材・文=金春喜 @chu_ni_kim / ハフポスト日本版〉