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7月21日の金曜ロードショー(日本テレビ系)で放送される、スタジオジブリの不朽の名作『もののけ姫』。
死の呪いをかけられた青年アシタカと犬神に育てられた少女サンが出会い、神々と人間の壮絶な戦いに巻き込まれていく物語だ。
アシタカとサンのほか、タタラ場を率いるエボシ御前、齢300歳のメスの犬神モロの君、生命の授与と奪取を行う神獣シシ神など、登場キャラクターたちも作品の大きな魅力の一つとなっている。
作品に出てくる森のコダマたちも、神秘的な雰囲気や愛らしい仕草が高い人気を誇るキャラクターだ。
実は、ジブリ作品『となりのトトロ』のトトロはもともとコダマだった、という説があることをご存知だろうか。
宮崎監督「耳が生えたっていうの、どうですかね」
そもそもコダマって何者?という人も多いかもしれない。
『もののけ姫』の公式パンフレットでは、コダマについて次のように紹介している。
「一種の精霊のようなもので豊かな森に住む。淡い緑色をした半透明の体を持つ。森の中で、迷ったアシタカ達を導くなど、特に人間に敵意を持っているわけでは無いようである」
一体ずつ表情も体つきも異なり、それぞれに個性がみられる。首を揺らす時に鳴るカタカタ、カタカタ...という音を記憶している人も多いだろう。
書籍『「もののけ姫」はこうして生まれた』(浦谷年良著、徳間書店、1998年)には、コダマの描写について宮崎駿監督とスタッフが話し合う様子が、次のように記録されている。森の木々にコダマの大群がいるカットについて相談していた時のことだ。
<宮崎さん(が)急に「俺、気に病んでることが一つあるんですよ。トトロは何千年も生きてるというのに、トトロが出てないじゃない、この森に。本当はトトロがいっぱいいるんじゃないかって(笑)。気に病んでるんです、実は」(と相談した。)>
監督のこの懸念に対し、色彩設計のスタッフは「コダマだコダマだと思ってたら、ワンカット、トトロが...。トトロの大群が歩いてるとか...」と返していたという。
さらに、絵コンテ制作が大詰めを迎えていた時、宮崎監督はスタッフにラストカットの“秘密”を明かした。
<「で、これはもう、(原画担当の)二木さんのたっての希望で、チビで一匹でいいから、コダマがノコノコ歩いてるやつ、最後にいれてくれって。それがトトロに変化したって(笑)。耳が生えたっていうの、どうですかね。そうすると首尾一貫するんだけど」>(同書より)
『もののけ姫』の森にトトロがいないことを「気に病んでいた」という宮崎監督。最後のシーンの森でポツンと佇むコダマが後々トトロへと変貌を遂げる、という構想で、胸に引っかかっていたモヤモヤを解消させたようだ。
金曜ロードショーは、コダマが出てくるラストシーンの画像とともに、この宮崎監督のエピソードを2021年のツイートで紹介した。
小さく儚いこのコダマが、巨大でふわふわしたあのトトロになるなんて...。衝撃の設定には、「カタカタカタ...(コダマが首を揺らす音)ががぁお〜っ!になるのか!」「驚愕の事実」など、驚く声が寄せられた。
ちなみに、スタジオジブリ代表取締役プロデューサーの鈴木敏夫さんが2016年に参加した鼎談では、トトロは「人間との戦いに敗れた“トトロ族”の末裔」だった、という構想も明かされている。